Bad day (2) 太陽と月

創作の怖い話 File.9



投稿者 ストレンジカメレオン 様





オレの名前は浩一

オレには両親がいない…

ある孤児施設で育てられてきた。

施設名〔太陽の光〕

オレは十歳くらいの時にここに来た。

何故かここに来る前の記憶は全くない。

何度も思い出してみようとしたことがあったが、ひとかけらの記憶も思い出せたことはなかった…

まあこの施設に来て幸せを感じている今ではそんなことはどうでもいいんだが。

〔太陽の光〕を全ての可哀想な孤児のためにと、つくった施設長のシンさんはと ても情に深く、

正義感の強い優しい方でオレはこの人のために生きていると言っ

ても言い過ぎではない。

なぜシンさんって呼ばれているのかと言うと、

シンさんは本当にみんなにとって自分たちを救ってくれた神様みたいな存在なので,

神をカミからシンと読み変えてそう呼んでいるのだ。

今では〔太陽の光〕の出身者や孤児に限らず精神的な面でお世話になっている人 はとても多く、

その人たちもシンさんを慕って多くの寄付金をこの施設に送っている。

この〔太陽の光〕が少しずつ有名になってきているのはオレにとってはとても嬉しいことだった。

まあ有名になっていることを妬み敵対してくる団体も少なくはない。

深夜に施設の入り口でシンさんと他の団体の奴らと言い合いになってことも何度かあった。

20歳になったオレはある派遣会社で雇われながらここでの手伝いをしている。

早く一人前になって、〔太陽の光〕にさらに貢献していきたいと考えている。

そんな気持ちから、深夜の言い合いに気づく度にシンさんになにか助けになることは出来ないかと相談した。

だがシンさんは

「他の団体のことについては心配するな…お前はまだ若いし自分の人生を考えてれば良い。

今は安心してオレに任せとけば良い!」

と言っていつも問題を自分一人で抱え込んだ。

しかしシンさんに一つだけ忠告されたことがあった…

「月光会という団体には決して近付くな!」

シンさんの話によると、月光会はそこまで規模が大きいというわけではないが、

裏では相当やばいことをやっているらしい…

暗殺、拉致、人身売買…

そんな団体が未だに表沙汰になっていないのも不思議である…

(早く一人前になって、もっと貢献しなくちゃな…)

と思う毎日である。

今日は久しぶりの彼女の恵理とのデートだ。

派遣会社で出会った彼女で彼女も会社の仕事以外にもいろいろ忙しいらしく、なかなかお互い会えない状況だ。

まだ付き合い始めたばかりで会う時間も少ないのでまだお互いのことを詳しく知らないが、

初めて恵理を見た瞬間、運命的なものを感じた。

向こうもオレを見た時に運命的なものを感じたと言っていた。

そんなことから衝動的に付き合い始めたわけだが、優しく可愛い自慢の彼女だ。

社内での人気も相当なものだ。そしてオレたちが付き合っていることはオレたちだけの秘密にしてある。

オレは周りに自慢したいなってのがあったから秘密にしなくても良かったんだが

彼女の方が社内では秘密にしたいと提案したのでそうしている。

こういうのは秘密のほうが仕事がしやすいとかで…

「よっ!恵理!」

「あっ、浩一!久しぶりになっちゃったし、少し喫茶店でも入ってゆっくり話そ♪」

オレたちはどこかへ行って遊ぶというよりも、こんな感じにお店に入ってお互いのことを話していた。

「そうか、そうか!お互い頑張らなきゃな!!ところで恵理、今日、うちの施設来てみないか?

シンさんの話はこないだしただろ、紹介するよ」

「ありがとう!でも遠慮しとくわ!シンさんには私の存在は秘密にしといて」

「どうして!?」

「シンさんって忙しい人でしょ!?少しでも迷惑かけないためよ!」

「恵理、そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ、シンさんはすっごい優しいし、

人が好きな人だから恵理が来たらきっと喜ぶよ!」

プルルルル プルルルル……

突然、恵理の携帯が鳴った。

「ごめん、浩一、電話来たからちょっと席はずすね、」

恵理はすこし慌てて席を立った。

以前からデートの最中に恵理の携帯にはひっきりなしに電話がかかってくる…

うちの施設には来たがらないし…

オレは他の男でもいるのではないかと少し不安を感じていた。

「ごめん、浩一、ちょっと仕事のことで呼び出されちゃった、残念だけどもう行かなきゃ、ごめんね」

恵理はそう言って、店を出て行った。

オレはというと、不安な気持ちから、隠れて恵理を追いかけた。

(本当に仕事なのか…………会社のほうには向かってないな…)

恵理のことをまだ良く知らないオレはスパイになった気分で不安を抱えながら、恵理を追った…

電車で、とある駅に降りた恵理は、裏路地をどんどん進んでいく…

その路地は静かで薄暗く、異様な雰囲気であった…

(なんなんだ……この路地は…こんな所で仕事って一体…)

そして恵理は一つの寂れた建物の中へと入っていった…

(なんなんだろ…あの建物は…)

オレは建物の入り口にある看板を見つけて、背筋が凍りついた………

〈…………………月光会………………〉

(月光会ってまさか………シンさんが言っていた…)

オレの頭は混乱し始める…

恵理は…




  → Bad day(3) 記憶の断片 



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