汚いものは流される

創作の怖い話 File.7



投稿者 ストレンジカメレオン 様





水に流す…

過去にあったいざこざを無かったことにする。忘れると言った意味である。

これまで人間が犯してきた多くの罪もまた、水に流されて来ました。

ではその流されていった罪達はどこへたどり着くと思いますか?

罪という悪しき概念はどうやら人間がよく口にする地獄という場所に流されていくらしいです。

汚いものは水に流されていくんです。

人間は汚いものを水に流すことによって、今、自分がいる場所を安全かつ清潔な場所にしとくものです。

トイレなんか、そんなイメージ強いですね。

まあその場合は地獄ではなく下水道へと流されて行きますが…

「あ〜〜 やっちまった……

もうこんな時間だ…完全に仕事、遅刻だ…今日は大事な取引先との約束があるのに!!!」

オレは大事な取引先との約束があったにも関わらず寝坊をしてしまった。

半分、涙目になりながら、出掛ける支度を急いで済まし、家を飛び出した。

「はぁ〜 なんでこんな日に限って、目覚ましの電池が切れてるんだよ!!」

しかも、こういう日に限って、不幸は続くもので、電車に乗っていると急に便意をもよおした。

時間が無いのにも関わらずオレは普段、降りない駅で降り、トイレへと駆け込んだ。

「ちくしょー!なんでこんなついてないんだよ!」

便座に座り、正面を見ると何やら落書きが書いてあった。

〈ここはただのトイレではありません。

このトイレはあなたが犯した罪を水に流すトイレです。

ここであなたの罪、水に流しましょ。

あなたのが犯した罪や失敗無かったことにしちゃいましょ。

なぁ〜に 簡単。

ただこのトイレの水を流すだけで良いんですよ。〉

「なにが簡単だよ!!こんなんでオレの失敗が許されるんなら苦労はしねぇよ!!あ〜 もう腹立つ!」

「ジャーーーー!!!!」

オレはトイレを済ますと、急いで電車へと駆け込んだ。

そして、取引先の会社へたどり着いた。

(あ〜 完全に遅刻だ…携帯も忘れてきてしまったから連絡も取れてないし…最悪だ。)

オレが取引先の会社に入ろうとすると、入り口の手前で一人の年配の男性がうつ伏せに倒れていた。

(なんだ…やばいな、これは!!)

オレはすぐにこのことを会社の受付員にこのことを知らせ、救急車を呼んでもらった。

救急車が来るとオレは一緒に救急車に乗り込み、病院へと向かった。

実はこの年配の男性。

なんと取引先の会社の社長だった。

オレは社長に気に入られ見事商談成立。

遅刻なんて無かったことになったのだ。

「運が良かったなぁ!!まさかあのオッサン、社長だったなんて!ははは!!」

家に帰ってきたオレはふと、あの駅のトイレの落書きを思い出した。

(罪を水に流すトイレか……まさかね……)

「ヴーヴーヴーヴーヴー」

急に携帯が鳴り出した。

「はい もしもし。」

「はい、もしもしじゃねえよ!!!

お前、いつになったらこないだ貸した二十万返してくれんだよ!!いい加減にしろよ!!」

「あ、ごめん!!!必ず、必ず来月には返すよ。」

オレは友人から多額の金を借りたままであった。

オレという男はどうしようもない奴である。

(罪を水に流すトイレ……………か……)

この次の日、仕事からの帰り道にて、気がつくとオレはあの駅にいた。

そう、罪を水に流すトイレという落書きがあるあの駅である。

「ジャーーーーー!!」

(なにやってんだろ……オレ…… こんなトイレの水流しただけで、

友人から借りた借金を水に流すことなんて出来やしないのに…)

「オレ、馬鹿みたいだな、さあ早く帰ろ。」

家に着くと、また友人から電話がかかってきた。

(来月返すって言ったのに…何だろ……)

「もしもし…」

「あっ もしもし、こないだ借金の件、無しにしてやるよ!!実はな、オレ宝くじ当たってさ!

その賞金がなんと200万円!

さすがにこんな賞金もらっといて、金返せなんて言ってたら、バチが当たりそう なんで。

ハハハ!ということで借金はチャラで良いよ!じゃあな!」

(す、すげぇ……あのトイレ本物だ…本物の罪を水に流すトイレだ!!)

オレはこの時から、なにか失敗をしでかすたびに、あのトイレの水を流しに行った。

そして、やはり、自分の犯した失敗は、見事水に流され、無かったことになっていった。

(ハハハハハ!!オレは何をやっても許される男なんだ!

もう何も怖くないぞ!オレの人生やりたい放題だ!!)

そしてオレの行動はエスカレートして行った。

自分の欲望を満たすため犯罪的な行動を起こすようになっていた。

それでもあのトイレは全てを水に流した。

オレは日常的に、犯罪行為を犯し、トイレに行って水を流した。

ある日、いつものように、トイレへと駆け込んだ。

今回は、ついに人を殺してしまった…

(あいつが悪いんだ!!あいつが!!あんなやつ死んで当たり前だ!!)

まあオレは人を殺しても許されるはず。

なぜならオレは特別だから。特別な人間だから。

トイレに入るとオレはふと、またトイレの落書きを読んだ。

〈ここはただのトイレではありません。

このトイレはあなたが犯した罪を水に流すトイレです。

そしてあなたを地獄へと導くトイレでもあります。

あなたの薄汚れた魂も、水に流しちゃいましょ。

なぁ〜に 簡単。

もう水が流れるよ。〉

トイレの落書きを読み終えると………

「ジャーーーーーーー!!!!」

急に水が流れ出した。

翌日、駅のトイレで一人の男性が心臓発作を起こし死んでいるのが発見された。

今ではその駅にはもう落書きはないらしいが、

〇〇線××駅のトイレには噂がある。

「おい、知ってるか?

××駅のトイレの水面に苦しみもがく男の表情が映ることがあるらしいぜ。」

「知ってる。知ってる。

結構、有名だよな。

しかも、そこのトイレ、男の呻き声が聞こえてくるらしいぞ。」




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