悪夢恐怖症

創作の怖い話 File.6



投稿者 ストレンジカメレオン 様





家に着くとパソコンを開き、恐怖サイトを開いた。

そう、私の趣味は恐怖話を読むこと。

有名な都市伝説から、あまり知られてない恐怖話までいくつも読んできた。

しかしそれが原因なのだろうか…

私はある時から恐ろしい夢ばかり見るようになってしまった。

実際に他にも多くの人たちが私と同じように

恐ろしい夢を見ると言った体験をしたことがあるのではないだろうか…

頭の中が恐怖話のあらゆる恐怖場面で埋め尽くされているのだろう。

私は実際に読んだ恐怖話の主人公と同じ恐ろしい状況の夢を見たり、

理由もなく 問される夢を見ることがあった。

パソコンを開いた私は、数秒間、画面と向き合った後、そのままパソコンの電源を切り、画面を閉じた。

(恐ろしい夢を見始めるようになってから、しっかり睡眠が取れていないしな…

少しの間は恐怖話は控えるか。いくら恐怖話が好きだからと言って睡眠不足になってはな……)

私はこの日からサイトで話を読むのは控えるようにした。

しかし、恐ろしい夢から解放されることは無かった。

そしてここ最近、続けて見るようになったのが、誰かに追いかけられる夢である。

その夢の内容はというと……

私が仕事から家に帰ろうと、暗い小道を歩いていると、後ろから足音が一定の距

離を維持しながら付いてくるのである。

何故かその後ろの気配に恐怖を感じる私は、歩くスピードを上げる。

しかし後ろからの足音もスピードを上げるので、私との距離は一定のままになる。

ここで私は後ろにいる奴がどんな奴かを確認するため、初めて後ろを向き相手の姿を見る。

黒いジャンパーに帽子を深く被っている、いかにもという男の姿がそこにはあるのだ…

男は私と目が合った瞬間、急に私のほうへ走って来ると言った内容である。

これだけなら、まだ良かったのだが、これは初期の段階で、

夢から目を覚ますタイミングがずれてきて、この夢の続きも見るようになった…

その夢の続きは…

私は、男に捕まらないように走って逃げるのである。

近くにある公園に逃げこみ、そこのトイレに私は隠れる。

トイレで息を潜め、男がいなくなるのを待つ。

それから二、三分立って、『もう大丈夫だろう』と一安心していると、


「ザッ…… ザッ………

ザッ……… ザッ………
ザッ…… ザッ…」


どこからかゆっくりと不規則なテンポで足音が私の方へ近付いてくるのだ……

私は身を震わせ、息を殺しトイレで男が通り過ぎていくのを待つ。

しかし足音は絶望的にも、トイレへと入ってくるのだ…

(殺される!……)

私がそう思った瞬間、今度はここで目が覚めるのだ。

本当に恐ろしいのはこの続きからである…

いつもの夢通り、トイレで身を震わせていると、男は鍵を掛けたドアを強引に開けようとする。

「ガチャガチャ……

ガン!!ガン!!

ガコン!! ガコン!!

ドンドンドンドンドンドン!!!!」

公園のトイレの脆いドアはミシミシと少しずつ壊れていく……

そして……

ドアがついに壊れる……

すると目の前に現れたナイフを持った男がニタッと気味の悪い笑顔を見せる…

そしてそのナイフで私の体中をめった刺しにし始めるのだ…

グチャ……グチャ……

夢のはずなのにリアルな音と共に生暖かい感覚と激痛が私を襲う……

私はそのままトイレの中で倒れてしまう…

薄れていく意識の中、男は狂ったように笑いながらまだ背中を刺し続ける……

そして激しい痛みに耐えながら、私は目を覚ますのだ。

私がもうこの悪夢を見るのは何回目だろうか…

恐怖話を控えれば悪夢から解放されると思っていたが、そんな甘いものではなかった……

私は早く悪夢から解放されたかった。

悪夢が怖くて、寝るのが遅くなる日々…

睡眠不足が続き、体も少しずつ弱り始めている。

それでも目を閉じると、恐怖と激痛が必ず待っている。

ある日の仕事からの帰り道……

いつものように足音が聞こえてきた。

(また、この夢だな……)

私は歩くテンポを上げる。

やはり、後ろの足音もテンポを上げてくる。

そして後ろを振り向くと、帽子を深く被り、黒いジャンパーを着た男が私に向かって走り出した…

(またこの流れか……

もうあんな激痛を味わうのはごめんだ…

今回で全てを終わらせてやる!!)

私は丁度良く近くに転がっていたブロックを見つけると、それを思い切り男の頭に叩きつけた…

鈍い音を立て…男は倒れた……

男の頭からは多量の血が…

「ハハハハ…

やった……やったぞ……

これでもう激痛を味わうことはないぞ……」

しかし夢から目が覚めない……

ある程度、時間が経つと、サイレンと共にパトカーがやってきた。

そして私は殺人犯として逮捕された。

(こんな夢のパターンは初めてだ……)

しかし夢から覚める気配はない。

そう、これは夢ではなく現実であった……

睡眠不足が続き、状況が重なったため私は夢と現実が区別出来なかったのだ。

私が殺した男はただランニングをしていただけの男だったのだ……

そして…

今、私は刑務所で罪のない人間を追って殺してしまう悪夢に悩まされている……

実際に事件を起こしてしまった私はこの悪夢からは当分、逃れることは出来なそうだ…

私はもはや完全に悪夢恐怖症だ。

そう…この悪夢の始まりは恐怖話から…




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