でびノート(4)

創作の怖い話 File.50



投稿者 でび一星人 様





「…なんか、ケチな作り方だなこれ…」

見開きのノートを見る。

説明書に書いていたように、見開きの右上…つまり、奇数のページの上部に、名前を書くような欄があった。

そして見開きのノートは、大きく【田の字】のように、太い線で四つの欄に分けられていた。

「…なるほど…この四つに区切られてるのが、説明書に書いていた【四項目】か…」

四つに区切られているマスの上部に、それぞれ項目らしき文字が書いてあった。

 右ページ上:【時刻】

 右ページ下:【場所】

 左ページ上:【出来事】

 左ページ下:【結果】

「…何だこれ…。そういえば…こんなゲーム昔やった気がするな…

……っていうか…

あのおっさん!!!!!

何だよこのノート!!!!

こんなの書き込んでたら、もはや普通のノートとしてもつかえないじゃないかよ!!

うがーーー!!!」

オレはノートを壁に投げつけた。

そしてそのままベッドに横たわり、寝た。

ノートを投げつけてスッキリしていたのだろう。

即寝出来たようだ。

気が付くと朝だった。

ムクッ

「…朝か…」

オレは布団から抜け出た。

そして重大な事を思い出した。

時間割の準備をせずに寝てしまっていた事を…。

オレは鞄を抱えて机に向った。

「…あれ?」

そこで、オレはあるものを見つけた。

…それは机の上に、キレイに置かれた【でびノート】

「…あれ?…たしか、このノートは昨日カベに投げつけたような…」

オレは不思議に思いながらも、

きっと遅くに父さんが帰ってきて整理してくれたのだろうと答えを出し、

ささっと鞄に教科書やノートを詰めた。

「…このノートは…置いておこう…。

こんなの阿部に見られたら、またどんなイジメに遭うかわかったもんじゃないからな…」

オレはノートを机に直し、部屋を後にした。

…この日も、朝からオレは阿部の嫌がらせを受けた。

【持ち物チェック】とかいう理由で、阿部はオレのカバンの中身をあさりだした。

…でも、母さんに貰った破れたノートも入って無いし、

特に見られてまずいようなものは無かったから、

良い気はしなかったけどそこまで嫌がる態度はとらなかった。

…でも、

拒否するべきだった。

その理由は、

朝の時間割りの時には絶対カバンに入れていなかったはずの、

【宮沢りえのヘアヌード写真集】が入っていたのだ。

原因は、教科書とか直してる家の机の引き出しの一番奥に入れてるのを、

誤って一緒にカバンに入れてしまった事と思われる。

数ヶ月間頑張ってお金を貯めて買ったオレの宝物、宮沢りえ先生のおっぱい…。

そのおっぱいを、阿部に見られた。

阿部の汚い手垢をつけられた…。

きっと、恋人を寝取られた人はこんな気持ちなんだろう…。

そんな黄昏気分な中二のAM。

(其の参)

今日も、阿部に色んな嫌がらせをされた…。

…結局、宮沢りえの写真集は、阿部にビリビリに破られた。

そして阿部はクラスの男子にそれらを配っていた。

『好きなのを選べ!』とか言って…。

…ちくしょう…

なんで学校なんか行かなくちゃいけないんだ…。

もう、明日からはずっと家でゴロゴロしていたいよ…。

…いや、べつにゴロゴロしなくてもいい。

とりあえず学校にだけは行きたくない。

…そうだ。

もう出来る事なら働きたい。

働いて、母さんの治療費を少しでも稼いで、父さんを少しは休ませてあげたい…。

…とにかく…

…とにかく学校には行きたくない…。

そんな事を考えながら、とぼとぼと家に帰っていると、視界に昨日の骨董品屋が入ってきた。

なんとなく人寂しくなったオレは、骨董品屋の前に立って中を覗いてみた。

…中入っちゃうと10万払わされる危険があるからね…。

外から中を覗くと、相変わらず薄暗くて気味が悪い内装が目に入ってきた。

「おや?」

突然後ろから声がした。

「あっ、オジサン」

振り向くと、そこには骨董品屋のおじさんが買い物袋をさげて立っていた。

「おお。昨日のボウヤかい。暇なのかい?」

「…えっ、ま、まあ」

「そうかいそうかい。じゃあ、中で少しお茶でも飲んで行くかい?」

「えっ!?い、いや、遠慮しときます。…10万とか払えませんし…」

「10万?はっはっは。ボウヤ、あんなの信じてたのかい。あれは冷やかし防止の貼り紙だよ。

オジサンそこまであくどい商売はやってないよ。ほれ、そうと解ったら入って入って」

「えっ、あっ、は、はい。いただきます…」

  キュッ

    キュッ

      キュッ

 …ズズズズズ…

「…うまい…。オジサン、やっぱりこのお茶、なぜかすんごく美味しいです…」

「はっはっは。そう言ってくれるとオジサンも嬉しいよ」

「…いや、マジでお世辞とかじゃないですよ」

「はっはっは。わかってるよ」

(…自信あるんじゃねーか…)

「それよりボウヤ」

お茶を飲み終えたオレに、オジサンは微笑みながら語りかけてきた。

「…ボウヤ、昨日のノートはもう使ったのかい?」

…ノート…?

…そうだ。

僕は、昨日あのインチキノートをこのオジサンに売りつけられたんだった!

…しかも、長期に渡るローンまで組まされて!!!!

「お、オジサン!!酷いですよ!!あんなノート売りつけて!!!」

「えっ?売りつける?? オイオイボウヤ、そんな言い方やめてくれよぉ」

「こんな言い方したくもなりますよぉ!一体何なんですか?あのノートは?

せめてまっさらなノートなら、授業とかにも使えたのに!

あんなに色々線とか引きまくってたら学校で使えないじゃないですか!!!」

「えっ?学校で?

…ふふ…はは…はっはっは…はーっはっはっはっはっは。」

「な…なにがおかしいんですか!

中二だからって舐めないでください!

もうちゃんと剥けてるんですよ!」

「はっは…ォゥ…。ボウヤ、そこはオトナだったのかい…」

「オトナとかコドモは今は関係ないです!」

「…ふ、振って来たのはボウヤの方じゃないか…」

フルとかもどうでもいいです!!

今の状態はフルではないです!」

オレはそう言ってパンツを脱いだ。

「はうっ!!!」

オジサンは目をまん丸にしていた。

「…ボ…ボウヤ…、そ、それでフルじゃぁ無いのか?」

「全然です!!!フルになったらもうエラい事ですよ!」

「…そ…そうかい…いや、オジサン完敗だよ…」

「それはよかったですが、今はそんな話じゃありません!」

「…パンツ脱いだのそっちだろう…」

「あのノート!!!! 一体オレにどうしろって言うんですか!!!」



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