念文 |
創作の怖い話 File.29 |
投稿者 ストレンジカメレオン 様 |
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私は物心ついた時からある能力を持っている。 それは文章に念を込めること… 私が何か欲しくなったら、 文章に〜〜が欲しいという念を込めればその願いが実際に叶うのである。 しかし、その能力は万能ではなくそれなりの代償を伴う… 例えば、「富が欲しい」という念を込めた文章を作ったとする。 それだけでは願いは叶わない… 次に、「自分の片腕を捧げるので富が欲しい」と書く… そして自分の腕を実際に自分の腕を切り落とせば、それに見合った富が手に入るのである。 私はもう両足がありません… 臓器も足りていません… 顔もぐちゃぐちゃです… けれど文章を書くための両腕はあります。 そして私はこんな体になっても、この能力に依存しています。 あることを知ってしまったからです。 それは自分の願いを満たすための代償は自分じゃなくても良いということです。 そう誰かを代償に自分の望みは叶うのです。 このことを知ってから私は何人もの人間の腕や臓器を奪って来ました。 そして気づいたことは、代償が命に関わるほどその見返りは大きいということ… つまり人の命を捧げれば、その見返りは腕や足の時とは比べものになりません。 私はありとあらゆる望みを叶えてきました。それなりの代償はありましたが… そしてある時、私は自分自身が死んでしまうのが嫌なので、生きている間の時間が欲しいと思いました。 時間の代償はとても大きいことも分かりました。 人一人の命を捧げることで大体私は一週間の時間をもらうことが出来るようです。 この手で欲望を満たすための文章を書き、この手で欲望を満たすために犠牲をつくりあげて来ました。 ふと、自分自身の手で犠牲をつくり、他人の命を奪うことが嫌になりました。 何故、こんなことしてたのだろうと後悔しました… 急に何故、そう思うようになったのかだって? 別にただ面倒なこと、してたなと思っただけです。 誰かに見られたり、警察の厄介になったり、変なことに巻き込まれたくないですからね… そこで間接的に犠牲をつくりあげる方法を考えました。 それは本を書くこと… 「私が書いた本を読んで、それをきっかけに死んだ人間が私の望みを叶えるための犠牲になる。」 はじめにこんな文章を作りました。 そして呪いの本を作りました。 人間の欲望をくすぐる本を。 愚かな欲望に飢えた人間が私のために犠牲になってくれました。 私はそこで、人間はありとあらゆる欲望を持った生物だと改めて実感しました。 金欲、性欲、支配欲、食欲、睡眠欲……………なかには悪夢を見たいなどと言う人間もいました。 その中でも尋常ではない強い欲望を持った人間を地獄の生け贄にしてきました。 私みたいな異常者が溢れたら困りますからね… さて次の狙いはどうしましょうか… 汚れた政治家どもにしようか… そこらに狙いをつければ、また少し長生き出来そうですしね。 もう私は齢百二十を越えてますが……… ★→この怖い話を評価する |
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