飛び降りる(4) |
創作の怖い話 File.245 |
投稿者 でび一星人 様 |
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話を聞かず、部屋を飛び出して行った。 晴美さんは絶望のどん底に立たされた。 すべてが真っ暗に覆われたんだよ。』 何だって・・・。 じゃあ・・ 晴美は・・・。 浮気なんかじゃなく・・・。 牧田に・・・ 無理矢理に・・・? [・・ち、違うの、違うのよ!] 晴美があの時、オレに近寄り必死に言っていた言葉を思い出した。 晴美・・・。 オレは何てバカな事をしてしまったんだろう・・・。 『どうだい? 君は飛び降りて、正しかったかい?』 声の主はやさしくオレにそう言った・ 「・・・。」 悲しかった。 辛かった。 晴美・・・。 晴美・・・。 おれは何て事をしてしまったんだろう。 晴美はオレを裏切ったりなんかしていなかった。 おれが自分で勝手に踊り、 そして晴美を突き離してしまったんだ・・・。 『・・・そこで、君に提案なんだが・・・ もし、飛び降りる直前に戻れるとしたら、 戻るかい?』 ・・・何だって・・・? 「・・そ、そんな事が出来るのか・・・?」 『質問に質問で返すのは良くない。 まず答えなさい。 戻りたいのかい?』 断る理由なんて無かった。 「戻りたい! 出来る事なら戻りたい!」 『・・・そうかい。 一つだけ、 方法があるんだが・・・。』 「何だ! どうやれば良い! 何でもする! 何でもするから教えてくれ!」 『何でも・・・か。 難しいかも知れないよ?』 「ああ。 どれだけ難しくてもいい! やってやるとも! 晴美の、晴美の元へ戻るんだオレは!」 『そうか・・。 それだけの覚悟があるんだね・・・。 その方法とはね・・・。』 おれはゴクリと唾を飲んだ。 『その方法は、牧田を許す事。』 「・・・牧田を許す?」 『そう。 牧田を許す事だ。 牧田は君を裏切った。 更に晴美さんに酷い事をした。 君たち2人から見れば、とんでもない悪魔だろう。 本当に許せるかい? 牧田を憎む、濁った心があったなら、 君の時間は前に進み、地面に・・・。』 牧田を許す・・・? 許す・・・? 許す・・・? 正直、自分の最愛の人を酷い目に合わせた相手を許す事なんて普通に考えたら出来ない。 ・・・だが、許さないとオレも晴美も不幸を突き進む事となる。 ・・・背に腹は変えられない。 「あぁ。 許そう。 牧田を許す! これで良いのか?」 『本当に、本当に許すんだね? それで良いんだね?』 「あぁ。 約束する。 おれは牧田を許す。 目先の感情で、晴美を不幸になんて出来ない!」 『後で、やっぱり許せないなんて言っても、もう遅いよ? 今許した事により、契約は成立しちゃうんだ。本当にそれで良いね?』 契約? 「あぁ。 それで良い。 約束しよう。」 契約という言葉が少し引っかかったが、もう時間が無い。 ゆっくりとだが、地面が目の前に近づいてくる。 『フフ・・・フフフフ・・・。』 突然声の主が笑い出した。 『フフ・・・フフハハハ・・フハハハハ・・はっはっはっはっは。 アーーーッハッハッハッハッハー。』 何だ? なぜ笑う? 『はっはっは・・いや、いや本当にありがとう。 許してくれて。』 ・・・この声は・・・そうだ。 なぜ今まで気付かなかったんだろう・・・。 この声は・・・。 『許してくれて、ありがとうな。』 そう言うと、声の主はゆっくりとオレの顔の前に現れた。 「牧田! 何でお前が・・・。」 『フフフフ。 話相手がオレで、ビックリしたかい? オレがここに居る理由かい? それは自分の部屋を見てみればわかるんじゃないかい?』 「・・・部屋・・・?」 オレは話に必死になって、途中からまったく見ていなかった部屋を見た。 今の高さは、丁度部屋全体が見える高さだった。 裸で、呆然と立ち尽くす晴美。 横たわる牧田。 真っ赤に染まった部屋。 晴美の手には・・・血だらけの包丁・・・。 「・・・こ、これは・・・。」 『そう。おれ、君が外に走って出て行った直後に殺されたんだ。 晴美ちゃんに。 それでね、あの世に行こうとしたんだけど、通れないんだわ。 あの世への入り口に。 そしたら天から声が聞こえてきてさ。 おれ、君を裏切ったよね? 晴美ちゃんをレイプして。 その裏切り行為は罪が重いらしく、天国に行けないと言われちゃってね。 ・・・だから、君に許してもらおうと思って、こんな小細工をしたってワケ。』 何だって・・・。 『レイプはさ〜。 罪って程のものじゃぁ無いんだって。 動物界では日常茶飯事に行われている、ゴク自然な行為なんだってさ。 問題は、それにより心に与える苦痛が罪になるらしいよ。 ・・・でもね、 不思議な事に、晴美ちゃんは自分がアアイウコトをされた事がどうこうでは無く、 君に対する罪悪感が強すぎて、それしか頭に無かったみたい。 おれ、本当にツイテるわ。 カワイソウに、晴美ちゃん、 レイプされて、自分で罪を背負っちゃった。 罪悪感という罪を。 ・・・そして、おれは君に与えた分を今精算した・・・。 ・・・君に許してもらえた。 こんな酷いヤツなのに、アリガトウね。ハハ ハハハハ。 ごめんごめん。笑いが止まらないや。』 怒りがこみ上げる。 →飛び降りる(5)へ ★→この怖い話を評価する |
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