Bad day(11) 最終話

創作の怖い話 File.18



投稿者 ストレンジカメレオン 様





宮本さんが殺された……

何故…?今、捜査はどういう状況なんだ…?

「恵理、どういうこと!?ってか今、どこにいるんだよ!?」

「浩一…ごめん…

私のことはもう忘れて…」

「えっ…何言ってんだよ!それじゃ全く状況が分かんないよ!!」

「浩一、久しぶりだな」

電話ごしに聞こえる声は恵理から男の声に変わった。

「シンさ…………阿久津!!!」

「浩一、お前ら兄妹のせいで、うちの信頼が崩れてしまったよ。

さらに宮本が裏切り行為を働き、一部の警察にマークされてしまった。

これはかなり腹立たしいことだよ。

うちを裏切った宮本の存在は危険すぎるため殺したが、この女は生かしてある。

本当はこの女もすぐにでも殺していいのだが、お前と交換条件をしようと生かしてある。

この女が提供した情報、全てお前が勝手に作り上げた情報にして、別の団体に罪

を被せようと考えているんだが協力してくれるかな?

本当はこの女にその役目をしてもらいたいところだったがあまりに強情なんでね。

そうすればこの女を生かしといてやる。

もし返事がイエスなら今日中に月光会の建物に来い。そして建物の一番、奥の部屋に来い。

今日中にお前が来なかったら、妹は地獄を見ながら死んでいくことになるだろう。」

オレの中の返事はイエスに決まっていた。

どんな憎しみの感情より、いやなによりも恵理の命が一番大事だった。

オレは月光会に行く準備を整えた。

そして激しい心臓の鼓動と共に月光会へと向かった。

全ては恵理を追いかけてたどり着いたこの建物からこのBad daysは始まった。

いやこれは生まれた瞬間から始まったオレたち兄妹の悪魔の運命だったのかもしれない。

自分の中で思い出せる全ての記憶が、重く自分にのしかかっていた。

そして月光会の建物にたどり着いたオレは、汗で滲んだ手でその扉を開けた…

以前、恵理を追ってこの月光会の部屋に来たのが、何年もずっとずっと前の過去であるように感じられた。

オレはそのまま部屋の奥へ進み、目の前の扉を開けた。

そこには悪魔の姿があった。

阿久津が待っていた。

隣には手足を完全に拘束され身動きのとれなくなっている恵理がいた。

そして…

恵理の足下には、宮本さんの死体が…

「よく来たな、浩一…

どうした?そんな怖い表情をして。

いつもシンさん、シンさんと言って、馬鹿みたいに笑ってた浩一はどこへ行ったのやら。」

「オレは覚悟を決めてやって来た!早く恵理を解放しろ!!」

「はは。そんなに焦るな。今、解放してやるよ。」

そう言うと阿久津は銃を恵理に向けて構えた。

次の瞬間、

「パァァァァーーーーーーーーーーン!!!!!!!!」

えっ…………

今、起きている現実が理解出来なかった。

オレが情報を作り上げたことにすることで恵理の命は無事だという約束じゃなかったのか……

銃弾は恵理の頭部を貫いていた…

体の震えが止まらない。なにがなんだか分からない。

自分の頭も体も正常に働かない。

「浩一、良い表情してるじゃないか。

最初からお前に頼ろうなんて思ってないさ。

お前みたいな役立たずにそんなことをオレがお前に任せると思うか。

ただ久しぶりにこういうことをしてみたくなっただけだよ。

こういろんなことが起こると昔の血が騒いでね」

こいつは一体、命を何だと思っているんだ……

恵理がどんな思いでここまで生きてきたか…

苦しい状況に耐えながらも情報を少しずつ集めて来たのに…

たった一人で…

これじゃ恵理にとって生まれてきた意味は何だったんだ…ただただ苦しい思いをしてきただけじゃないか…

こんな最後になるなんて…

オレは結局、恵理を守ることが出来なかった…

宮本さんだって、自分の正義を貫くため、自分の非を認め、やりきれない思いを抱えながら、動き出したのに…

それなのにこんな簡単に人間の命を…

オレは絶望感と共にその場に倒れ込んでしまった。

「浩一、最高だな!お前は!!ハハハ!!」

次の瞬間、

「バンッッ!!!」

勢い良く、後ろのドアが開いた。

「阿久津 雅樹!! 殺人の現行犯で逮捕する!!!お前にたくさん聞かせてもらうことがあるからな!!」

この声は………赤松さん……

少し遅いよ…来るのが…恵理はもう死んじゃったよ…

それから数日後…

〔太陽の光〕と月光会の悪事はメディアにより大々的に発表された。

この殺人業者による一連の事件…

異例なほどの多くの逮捕者が出るという歴史的な事件となった。

もちろん阿久津雅樹は死刑判決となる。

そして〔太陽の光〕や月光会にいた子供達は国による施設に預けられていった。

そしてオレは今日も、このオレの街並みが見渡せる小高い丘の上にやって来た。

「恵理、ここは景色がとても綺麗だろ?

なにも心配しないでゆっくり眠ってくれな。

大丈夫。オレはずっとここに来続けるよ。

恵理にとって初めてゆっくり出来る時間だろ。」

恵理の墓の前で、オレは恵理の笑顔を頭に思い浮かべながら、新たな人生の一歩を踏み出した。

いつかオレが死んだ時、たくさん恵理に楽しい話が出来るように(終)

オレは今、Bad dayという一つの物語を書き上げた。

この物語は事実を元に書いた話だ。

あの日、恵理が阿久津に殺された日は決して忘れることはないだろう。

オレにとって最悪の日、Bad dayである。

あの日、来てくれた赤松さんが月光会の息のかかった警察じゃなかったら、

オレはこの物語のように人生の新たな一歩を踏み出していたのだろう…

宮本さんや恵理を殺した犯人として、この刑務所にいることもなかっただろう…

いつかこの糞ったれたBad daysが本当の意味で完結することを信じて物語を書き上げた。

今日もオレは憎しみと悲しみの気持ちを抱えながら日々を過ごしている…



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