Bad day(6)
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創作の怖い話 File.13 |
投稿者 ストレンジカメレオン 様 |
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今からオレは、依頼を受けた仕事をこなさなければならない… シンさんに刺され、月光会送りにされたオレはあれから殺人の再教育を受け、暗殺実行要員となった。 今から殺しに行く相手とは偽りの友情を演じ、オレはそいつを夜中の駐車場へと呼び出した… 待ち合わせの時間より、早めに来たオレは、息を潜め、そいつを待った。 そして待ち合わせの時間から五分を過ぎたくらいにそいつは来た。 オレはゆっくりとそいつの背後に近づき、用意していた刃物で思い切り、急所を一突き…… 完全に息をしなくなったのを確認し、辺りを見回した。 「ガタッ…」 車と車の間から物音がした。 そちらに目をやると、一人の男が車の間から飛び出し、悲鳴を上げながら駐車場の外へと逃げていった。 (しまった…見られたか…) オレは車の間にもう誰もいないかどうかを確認しに回ると、さっき男が飛び出した場所に、 一つ財布が残されているのを見つけた。 (さっきの男のものだな…) オレは財布に入れてあったカード類からさっきの男を特定した。 そして男の携帯番号までも特定することが出来た… 早速オレは男の携帯に電話をかけ、警察に出頭するよう男を脅迫した。 そしてオレは男に出頭する際に注意しておくべきことを言うために夜中に男を呼び出した。 もちろん男が出頭する際にオレを裏切った時のことを考えて、宮本のおじさんとは口裏を合わせている。 やはりと言っていいだろうか… 宮本さんから連絡が入った。 男が出頭せずにオレの情報を警察に届けた…と オレは裏切り行為を働いた男に制裁を加えるために、深夜、男の家に忍び込む… 男の家族はぐっすりと気持ち良さそうに寝ていた。 男と男の妻と子供が二人… オレはゆっくりと用意しておいたロープで一人一人暴れないように縛り付け一つの部屋に集めた。 男の家族はオレを涙目で見つめる… 恨みのこもった目で見つめる… 怒りに満ちた目で見つめる… その目を向けられたオレは何故、こんなことをしているのかと後悔の念に襲われる… 嫌だ…そんな目で見るな…… そんな目でオレを見るな…… 男がオレに向かって言う。 「浩一……」 (この男、なんでオレの名前を知っているんだ!?) 男の妻も言う… 「浩一……」 (一体なんなんだ!!この家族は!) そして男の娘も続いて… 「浩一兄さん…」 男の息子は怒りに満ちた表情でじっとオレを見つめている… 「浩一………浩一……浩一兄さん………兄さん………目を覚まして!!浩一兄さん!!」 「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「兄さん!!!!」 目を開けると恵理がオレの顔を覗きこんでいた。 「え…恵理…?」 「浩一!!やっと目を覚ましたのね!」 「こ、ここは……?」 目を覚ますと、何もない小さな部屋の隅でオレは倒れていた。 とても後味の悪い夢を見ていた… 夢といえど、暗殺を実行していた自分に吐き気がした… 「浩一………ここは、月光会の地下の教育所の一室よ……」 「げっ、月光会…!?……………はっ!」 オレは思い出した… シンさんに刺された日のことを。 あの時、たしかにオレは再教育を受けさせられるように言われた。 そして恵理も… オレが恵理の言ったことを無視した結果、こんなことになってしまったのだ… しかもオレは小さい頃、恵理を刺して、〔太陽の光〕に来て、 何も知らずに今まで平和な暮らしをしていたんだ… それなのにオレは恵理と別れたあの日、恵理の言ったことを信じようとしないで、 気に入らないことを恵理にぶつけてしまった… その時、恵理はそれに反論せず、オレが幸せになるような選択を促した… はっきり言って恵理に合わす顔などなかった… 恵理がどれだけ苦しい思いで、今まで生きてきたか… それに比べ、今さっきまで見ていた夢の内容で怖じ気づいているオレ… 兄貴として失格だ…………… オレは恵理の目を見ることが出来なかった。 「恵理………………すまない…全部……全部オレのせいで…」 オレの目から自然に涙がこぼれ落ちた… 恵理に一人辛い思いをさせてきた情けない自分が許せなかった… 「浩一………… 浩一は悪くないわ… 謝らなきゃいけないのは私のほう… 浩一と別れた日、言えなかったことがあるの… 何故、浩一は〔太陽の光〕にいて、私は月光会にいるのかってこと。」 「そ、それは、オレ達が脱走を試みた日…オレ達は捕まって…」 「そう…思い出したのね… あの日、殺し合いを強要された私達は生き残ったほうが、外に出られると言われたわ… ナイフを持たされ、何も出来ずに立ち尽くしていた私に兄さんは言った… 『オレを刺せ!お前は幸せになるんだ!!』って、 私はそれで兄さんを刺したわ… 結局、月光会の狙いは大事な人を刺すことの出来る残酷な人間を求めていたの… 私は残酷な人間として選ばれ月光会に残った… そして奇跡的に助かった浩一は記憶が全くなくなったことから、〔太陽の光〕で 暮らすことになった。 私は浩一を一度、殺しているの… 私は許されない女なのよ…」 「え…恵理………恵理は悪くない!! 悪いのは月光会の人間なんだ!そして〔太陽の光〕のシンさんも!! そして言いように騙されていた自分も…恵理!!またここから脱走しよう!!」 「浩一…ごめんね………ありがとう!」 何も知らずに過ごしてきた過去を悔やむより、これからオレ達が何をすべきかのほうが大事だ… 恵理の『ありがとう』という台詞はオレのそんな気持ちに拍車をかけた。 そして現実を見ようとせず、全てをあきらめて、自分自身を裏切ろうとしていた自分に勇気を与えてくれた。 「でもここから脱出するのはそう簡単にはいかないわ…この部屋から出ることだって…………」 恵理の言う通りだった。 以前、簡単にここから脱出出来たのは恵理がまだ月光会の一員でありながらオレを助けてくれたからだ。 今の状況は、脱走するにはとても困難な状況だ。 「とりあえず月光会側が私達に対して、何かしら動きを見せるのを待つしかないわ… まずはこの部屋から出してもらえないと…」 もうオレの目が覚めてからどれくらいの時間が経っただろうか… この状況をどうにかする機会など全く来ない…… と思っていたその時。 「コンコン コンコン」 部屋のドアをノックする音が聞こえた。 「二人とも、目は覚めたか? これからお前らの教育所への復帰を記念して早速お前らにはイベントの主役になってもらう予定だ。 ここの後輩たちに良い所を見せてやれ! ハハハハハ!!」 → Bad day(7) 悪魔が潜む部屋 ★→この怖い話を評価する |
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