カウントダウン(4)

創作の怖い話 File.117



投稿者 でび一星人 様





ウチは横になり、食後の昼寝をしようとした。

・・・しかし、寝つけへんかった・・・。

 さっきの手紙の文字

【アト 8 ダネ  ムカエニ  イクヨ】

が、頭から離れへんかったんや。

 しゃあないからうちは起き上がり、さっき拾った【17歳の春】を手にとる。

パラパラとページをめくる。

 なんて事はない学校が舞台の普通のマンガやった。

でも、ウチはすぐに本を閉じ、投げ捨てた。

マンガの主人公の着ている服に、大きな【7】の文字がプリントされとったから。


 する事もないし、眠気も無くなってしもうた。

ウチはゴロンと横になり、空を見上げた。

ちぎれ雲が【6つ】、空に浮かんでいた。

「くそっ!目も開けとれんのか!」

イライラする。

ウチは眠くもないのに目を閉じた。


 ・・・

・・・


・・・


・・・やっぱり寝むれん・・・。


「・・ん?」

ふと、人の気配を感じた。

目を開けた。

金属バットが、ウチの顔めがけて猛スピードで迫っていた。


「うわっ!」

ガキーーーーーン!




 金属バットとコンクリートのぶつかる音が辺りに成り響いた。

寸でのところで、ウチは避けたので助かった。


 「だ、誰や!お前ら!」


 見ると、5人のヤンキー風の男子生徒がウチを睨んでいた。


 「八木鍋衣ちゃ〜ん。 オレらの事、忘れたんかなぁ?」

真ん中のリーダーっぽいヤツがウチを睨みつけながら言う。

「あ!」

思い出した。

コイツら、三年のやつらや。

入学当初、1年に威張りちらしに来た時に、ウチが返り討ちにしたった5人や。


「何や、お前ら?復讐しに来たんか?」

「余裕かましてんとちゃうぞ?コラ。」


5人はじょじょに間合いを詰めてくる。

「いくぞ!かかれ!」


真ん中のやつの掛け声とともに、一斉に襲い掛かってきた。

まず最初に殴りかかってきたやつのバットをかわす。

そして腹を蹴り上げる。
「うぐっ。」

奪ったバットで残りの4人を威嚇しながら、足場の良い平らなところに移動する。

「ウラー!!」

鎖を振り回して2人が向かってくる。

ウチはその鎖をうまくバットで巻き取る。

そして【アメリカンクラッカー】状態になった2人の頭をガッチンコしてバタンQにした。


 「・・・あと2人やけど、どうする?お前らもこんな風になりたいか?」

残りの2人は首を高速で横に振った。

「じゃ、こいつら持って早う帰りや。」

残りの2人は首を高速で縦に振り、三つの残骸を引きずりながら去って行った。


「・・・ふぅ。」

ウチはまたコンクリートの段差のところに座る。

「あ〜あ・・・。 お気に入りの場所やのに、ココ、えぐれてしもうたやないか・・・。」

さっきのやつがバットで殴った部分のコンクリが、かわいそうに痛々しくくぼんでいた。

今のやつらが5人・・・。

カウントダウンは続いている・・・。

これが偶然やないという事は、なんとなく肌で感じる。

 さっきみたいなヤンキーは別に怖ないけど、

こういう得体のしれんもんはやっぱり嫌なもんや・・・。


・・・しかし、普段は落ち着くこの場所が、

今日は非常に居心地が悪い。


「しゃぁない・・・。戻るか。」

ウチはゆっくりと腰を上げ、教室に戻ろうと歩き出す。


 ここに来る途中、血のような液体で【13】と書かれていた石を見る。

今度は【4】と書かれていた。


 見間違いなんかじゃない。

最初は【13】と間違いなく書かれていた。

それが今では【4】と書かれているのだ。

 「きしょくわるい・・・。」

歩調を速める。

地面の土に、大きく【3】と書かれていた。


 暑くもないのに汗が出てくる。

あと3・・・

数が迫ってくると、恐怖心というか、そういう実感が強くなってくる。


職員室の窓の前。

いつも通りしゃがんで通る。

反対側には、裏門がある。

裏門のところに子供が立っていた。

ブイサインをして、ニタッと笑っている。


【2】を表しているのだろう・・・。


 あと2・・・。


ヤバイ。


ヤバイヤバイ・・・。


第六感がそう告げている。



「八木さーん!」

その時、頭の上の方から声が聞こえた。

見上げると、ウッディーが窓から身を乗り出し、笑顔でウチに手を振っていた。

「八木さん、そのまま。そのまま動かないで! 声も出さないで。 シー。」

そう言うと、ウッディーは人差し指を口にやった。


あぁ。 これは【1】なんやろう・・・。



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