真っ赤な唇(3)

幽霊の怖い話 File.49



 ネットより転載





部屋に戻ると、少し飲んでほろ酔い加減の彼女がしな垂れかかって来て「エッチしよ」と言うので、

布団の中でウフン・アハンとじゃれあっていた。

やがてマジモードに入り、そろそろイきそうになってきたところで、

不意に背筋をゾワゾワっと逆立てるような感覚が走った。

物凄く嫌な感覚だった。

そのまま果てると、私は彼女に腕枕しながら眠りについた。

夜中に、私は妙な感覚で目が覚めた。

目が覚めたといってもかなり寝ぼけた状態ではあったが。

キスされたり、体のあちこちに舌を這わされる感覚がした。

やがて、彼女が体をを沈めて来る感覚がしたので起きようとしたが、全く体が動かない。

ええ?っと思って目を開けると、私の体の上で身を沈めていたのは、彼女ではなく例の白いキャミソールの女だった。

私は女と目が合ったまま視線を外す事ができない。

女の真っ赤な唇がニイッっと笑った。

私は悲鳴を上げようとしたが、その悲鳴は女の唇に塞がれた。

意識が遠くなり、私は気を失った。

帰りの車の中で私はグッタリしていた。

彼女は「車酔い?大丈夫」と心配したが「大丈夫」と答えるしかなかった。

温泉旅行から帰ってきてからは、私と彼女は忙しさもあって遭ったり電話したりする機会がなかった。

2週間位経ったか?

週末、仕事が早く終わった私はバイクを車検に出す為にショップに向けてバイクを走らせていた。

すると、対向車線に見慣れた赤い車が信号待ちしている。

私はクラクションを鳴らして手を振ったが、彼女は気付かない。

やがて信号は青になった。

クラッチを握り、ギアをローに入れようとした瞬間、私は見た。

彼女の車の後部座席に例のキャミソールの女が座っていて、明らかに私の方を見て笑っていた。

真っ赤な唇を歪ませて。

ショップに着いてすぐに私は彼女の携帯に電話を入れた。

しかし、携帯は繋がらず「この電話は現在電波の届かない所に・・・」のアナウンスがあるだけ。

自宅に何度電話しても話し中。

私はショップで借りた代車を彼女の自宅へと飛ばした。

しかし、ガレージに車はなく、呼び鈴を鳴らしても誰も出てこない。

連絡が取れないまま月曜日になった。

残務を終え帰り支度をしていると、不意に携帯が鳴った。

携帯に出ると、地元の友人に凄い剣幕で怒鳴られた。

「お前何やってんだよ!##ちゃん事故ってヤバイって!

早く@@第一病院へ行け。急げ!」

私はタクシーを捕まえて病院に向かった。

病院に着くと、彼女の両親と連絡をくれた友人がいた。

彼女が事故を起した現場がその友人の職場の目と鼻の先だったのだ。

事故った彼女の車はグチャグチャで、

車外に救出された彼女は救急車でサイレンも鳴らさずに搬送されたのだという。

放心状態の彼女の両親、その場のあまりに重たい空気に耐えられず、

私は友人に付き添われて、タバコを吸いに待合室に向かった。

廊下で看護婦とすれ違った。

すれ違いざま、その看護婦がニヤッと哂ったように見えた。

2、3m進んだ所で私はハッとした。

・・・今の看護婦・・・真っ赤な唇・・・あの女だ!

すぐに振り返ったがもうそこには誰もいなかった。

彼女の49日が過ぎてしばらくして、私は元カノに呼び出された。

待ち合わせ場所に行くと、予想はしていたが、やはり彼女の母親が待っていた。

私は流されるように、彼女らに全てを委ねた。

それから数年。

私は仕事で上京した。

宿泊先のホテルから近い事もあり、例の元売春街に足を運んだ。

夜桜でもと思ったが、川沿いの桜はもう散ってしまっていた。

街は様変わりしていた。

200店以上在ったという「売春宿」の半分くらいが取り壊されて、剣道場?やコインパーキングになっていた。

川上の方では何やら大規模な工事をしており、川沿いの道は綺麗に整備されていた。

メイン通りの真ん中のガード下には仮設交番があった。

裏通りには古ぼけた地蔵があった。

なんとなく手を合わせているとかなり年を食った婆さんに声を掛けられた。

婆さんの飲み屋は、私の以前上がった店の2軒隣にあった。

店の中には客らしい片腕の小汚い爺さんが1人いるだけだった。

婆さんに勧められるまま、私はかなりの量のビールを飲んだ。

酔いのせいだろうか、私はそれまでの出来事を話した。

婆さんは

「そういうこともあるさね。この街で命を落とした女は沢山いるからね。

薬の打ちすぎで部屋で冷たくなってた女。

逃げ出そうとして見せしめに殺された女。

店の中で客に滅多刺しにされて死んだ女。

あんたの言ってた店では確か、ガード下にまだ店があった頃に、

客に惚れた娘が散々貢がされた挙句に捨てられて首を括って死んでた事があったよ。

ここはそういう女の恨みの詰まった土地だよ。全部ぶっ壊して更地にしたって消えやしないよ・・・」

と忌々しそうに語った。

後数年もすれば、あの街は跡形もなくなって、ああいう場所だった事も忘れ去られるのだろう。

あの街の「怨念」も人々の記憶と共に消え去るのだろうか。

私があの街に足を運ぶ事もないだろう。

私は酔いで重くなった足を引きずりながら、今は無き色街を後にした。




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