少年A

幽霊の怖い話 File.43



 ネットより転載





高校のときのクラスで、虐められてる訳じゃないけど、「いじられてる」Aという奴がいた。

なんというか、よく問題を当てられても答えられなくて、笑われるような感じ。

でも本人はへらへら笑ってて、特に暗くも無いし、鈍感という言葉が当てはまる奴だった。

ちなみにAは喋るとき少しドモり気味で、それも笑いのネタにされていた。

夏休み前、遊びと称して心霊スポットへ連れて行って脅かしてやろうという、

工房丸出しの幼稚な考えを思いついた俺達グループは、そいつに声をかけた。

一つ返事で承諾したA。

場所は現地でも有名なダムで、その周辺の探検という事に決まった。

そして当日。

真夏の夜、Aを含め5人はいたものの、 場所が場所だけにやっぱりひんやりとして、ちょっと不安になった。

それでもここまで来たなら行こう、という事で、膝の辺りまで茂った草、湿って不安定な地面を進んでいく。

もちろん先頭はA。

ある一定の所まできたら4人そろって隠れてやろうという事になっていた。

(バカ高校の生徒の頭で考えるドッキリ作戦はこれが限界)

10分くらい彷徨ったとき、廃屋、というか小屋みたいなものを見つけた。

それを見つけてここがタイミングだな、と隠れようとした時。

小屋の入り口付近に、白い女が、もう本当にイラストとかで見る「髪の長い白いワンピースの女」がいた。

どう考えてもこんな時間にそんな女がいるのはおかしいから、そいつがこの世のものではないのが一瞬でわかった。

誰かが逃げろ!と叫んだ。

俺も走り出そうとした。

ところが、Aが逃げない。

「おいA!後ろ見てみ!早よ逃げるぞ!」

と言っても、きょとんとした顔でAは、

「ん、んー?なんか、お、おるんかー?」

(ドモってるから普段からこんな感じ)

と。

どうやら彼だけ「見えて」ないらしく、きょろきょろしてそこから動こうとしない。

置いていくわけにもいかず、逃げるに逃げれなくなった俺達。

女が滑るように近付いてくる。

Aの方向ををこれ以上ない、恐ろしい笑顔で見ていた。

こいつを連れて行こう、みたいな、こいつなら気付かずに、みたいな…

やばい…とは思うものの何も出来ない。

とうとう女がAの隣りまで来た。

「なあんてな。コイツやろ?」

「え?」

唐突に、いつもの口調と違うAは、女をはにかんだ笑顔で指差した。

Aは女の顔に自分の顔を近づけ、面と向かって言い出した。

「おい、コラ。こんなトコで彷徨う事しか出来んのかお前は。

いい加減死んだ事に気付け、このアマ。」

ワンピースの女はもう笑っていなかった。

明らかに動揺した顔を2,3秒浮かべた後、ふっと消えた。

Aは「そのほうがいい。」と呟いていた。

途端、雨が降りはじめた。

Aは唖然としていた俺達に向かって「ん?行こ、行こ。」と。

もう、いつもの口調に戻っていた。

俺達はAと本当の友達になった。

後にAにあの時の事を聞いた。

「んー、ん、あれはな、でき、できんねん、なんかな。」

としか言わなかった。




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