殺人

創作の怖い話 File.89



投稿者 Acidとしての時雨 様





昼の喧騒も打って変わり、
今は虫の鳴き声と
車のエンジン音だけが聞こえてくる

太陽はとうの前に地平線の彼方に沈み
今は月と車のライトだけが
寂しく夜の道を照らしている


そんな深夜・・・

Aは一人ある家に向かっていた


そこは、数日前から噂になり始めた
心霊スポット


車を止め、今は主の居なくなった家に入る

鍵は壊されており、
易々と中に入ることが出来た

家の中は荒らされており、
人の気配は全くない

A「・・・ほんとに出るのかねぇ」


などとぼやいていたその時!!

Aは視界の隅にある人影を捕らえた・・・


急いでその方に振り返ると





そこに。。。
一人のおっさんが佇んでいた・・・・

A「・・・・」
おっさん「・・・・」

しばしの沈黙の後、先に切り出したのは
Aだった


A「あの〜〜〜おっちゃんも肝試しに?」

予想外の質問だったのか
おっさんは はぁ?とう表情を浮かべた後
すぐに否定しようとしたが

A「あっ、いやいや!!
そんな否定しなくても!

大丈夫!!
いい年こいたおっさんが一人で肝試しなんて、世間は冷たい目でみるかもやけど
俺はそんな心せまくないから!!www」

と誇らしげに親指を突きたてた


おっさん「え?・・・いやいや!!!
ほら!!!これこれ!!」

と必死に自分の頭を何度も指差していた


・・・若干はげていた


A「ん?・・・
あっ!!!なるほど
はげてるけど、おっさんって歳じゃないって言いたい?

ならごめん!! 謝るねwww」

おっさん「はげ(;ω;)
いや、その・・・・はげてるとかやなくて
ここ!!ここ!!」

おっさんは
自分がはげてることを否定するかのように
しかし、再び頭を指差す


・・・大量の血が流れていた

A「うわ!!怪我してるやん!!大丈夫!!?

・・・まぁ
でもぴんぴんしてるし、大丈夫やろ?」

おっさん「えぇ〜〜〜〜・・・
あの・・・これ、
一応致命傷なんですけど・・・」


A「確かに!!!wwww
肝試し来てて、そんだけ怪我してたら
逆に怖くて幽霊逃げてまうやんwwww

肝試しには確かに致命傷www」

おっさん「いや、そうゆうことやなくて・・・」

A「ああぁ〜〜〜w
なるほど、ええ歳こいたおっちゃんが一人で肝試し来て
一人で怪我して、一人で寂しく帰ったら・・・

確かに社会的に致命傷wwwww」

おっさん「・・・その、いや、
もういいです;;」

おっさんは、何かを諦めたかのように
力なくうな垂れた


A「で・・・どうなの?
幽霊出た?www」

おっさん「いや・・・だかr

A「あいた〜〜〜〜www
そんだけ苦労しといて幽霊見れてないん?wwww

まぁ〜でもそんなに簡単に出る訳ないし
どんまい!!!w」

再び親指を強く突きたてる


おっさんは再び力なくうな垂れたが
突然、何かに気づいたかのように
急に頭を上げ

おっさん「・・・あっ!!!そうや!!!
こっち来てみてください!!!」

そう言っておっさんは
急に威勢良くAを案内する


そこには、人一人をすっぽり映せる大きな鏡があった

Aのすぐ隣におっさんが立っている

しかし・・・その鏡には、


Aしか映っていなかった・・・

A「え???・・・・」
おっさん「にやり」

これで気づくやろ?と言いたそうな
自信に溢れたおっさんの表情

A「ちょwwww
おっちゃん何その顔?www

鏡に映してもらえてないのに、なにその
どや!?みたいな顔wwww

鏡に映してもらえないなんて、
あんたどんだけ影薄いんやwwwww」


おっさん「え!?いや・・・ちょっ

A「薄いのは頭だけにして下さいwww」
おっさん「はぅ(´;ω;`)」


そんなやりとりを繰り返している内に
Aはあることに気付いた


A「あ〜〜〜、何か肝試しする雰囲気でもなくなってもたな」

おっさん「いや・・・
その・・・・ごめんなさい」

A「いやいや、んな謝らんでも
こっちも邪魔したみたいやし」


するとおっさんは申し訳なさそうに
喋り出した

おっさん「あの〜〜〜
一つよろしいですか?」

A「ん?何?」

おっさん「その・・・ちょっと申し上げにくいんですが




実は私が幽霊だったりします・・・」

A「・・・・え?」

おっさん「ほら、ちょっとベタですけど
足とか・・・」

おっさんの足元に目をやると

・・・確かに足が無い・・・・

A「うお!!! ・・・・え?
んじゃ〜・・・ほんまに??」

おっさんは静かに頷く

A「・・・・」
おっさん「・・・」

またしても沈黙・・・・
最初に切り出したのはAだった

A「いや・・・その

何か色々ほんまごめんなさい・・・」

今までの元気は全く無く、Aはただ申し訳なさそうに謝った

おっさん「いやいや!!!
私も最初から、言ってれば・・・ねぇ

私の方こそ、期待を裏切ってすみませんでしたorz」


深夜の荒れた家の中・・・
2人の男性が頭を下げあっていた・・・


A「え〜〜っと、・・・じゃぁ俺帰りますね」

おっさん「そうですか。。。
大したおもてなしも出来ずにすみません」

A「いやいや!!こっちが勝手にお邪魔した訳やし
なんか色々失礼なこと言ってすみませんでした・・・」



微妙な空気・・・・

そんな空気を振り払うかのように
Aが話し出した

A「今度仲間連れて来ますwww
今度はめちゃびびるんで、おっちゃんもよろしく頼みますww」

おっさん「そうですか!!!
分かりました!!!今度は全力出して頑張ります!!!」

A「んじゃ!!!w 又頼みます!!!」


そう言って二人は妙な結束を固め、
さよならしました・・・

おっさんに別れを告げるとAは外に停めた車に戻り
帰路についた

その帰り道・・・・


Aは友人に連絡するべく、携帯を取り出した


A「・・・・・・・あっもしもし?」
電話の相手はAの友人のZだ



A「おう、今行って来た
んでもって、もう帰道やで

おお!!! それそれ!!!

まじで出たwwww!!」

どうやら、先ほどの家での出来事を報告しているらしい


A「いやいやwww 何か適当にはぐらかしたら
全然大丈夫やったでwwww

ほんとやって!!www
何か最後の方は仲良く話し出来たもんwwwww
まじやってwwww


いや、でもほんとうけるwwww

せやねんwww

・・確かに!!ww
あのおっさんほんま間抜けやでwwww
なんたって・・・・・







自分を殺した奴の顔覚えてないもんなwwwwww

それどころか、めちゃ親しげに話しててんからwwww
ほんま間抜けなおっさんやでwwww


いや、でも真剣な話
幽霊として出てくるんやったら厄介やで

いつか、俺らのこと誰かに話すかもしらんやん

霊感なんて無いと思ってた俺ですら見えてんから
普通の奴でも見えてまうで


いらんこと喋る前に・・・・

もう一回やらなあかんぽいな・・・


そや!!!
あのおっさん俺らに2回殺されることなるわwwww




・・・・・・・・・・え?
いや、今一人やで?

はぁ?他の奴の声聞こえる??

いやいや!!
そんなはずあらへんって!!!

俺、車の運転中で周り誰もおらんねんから
他の奴の喋り声なんか聞こえるはずあれへんって!!


あぁ?
ちょwwwお前冗談やめろやwww


は? オマエカって?

なんなんそれwwww
そんな冗談いらんっt

【  オ マ エ カ  】


A「!!!!!!!!!!!!??」


異様な殺気に包まれたその台詞が、
突然Aの頭に鳴り響いた

と同時に、

Aの視界は一変することとなる・・・・



車で帰路についていたはずが、
気づけば、先ほどの家の玄関に立っていた・・・・

A「へ?  あれ?
・・・・なんで???」

突然の事態の変化で、
Aは頭の整理が追い付かない

【オマエカ】

A「!!!!?」


誰かからの視線を感じ、
すぐさま振り返る



・・・先ほど訪れた家

玄関から伸びる暗い廊下の向こうで



黒い人影がうっすらと見える・・・

A「ちょwwwwなんなんや!!!!」

ガチャガチャガチャ!!!!

急いで脱出しようとドアノブを回す

先ほどはあっさりと開いたドアが
今は全く開こうとしない・・・・

A「いやwww なんでやねん!!!
おぉZか?
いや、何か俺、あの家に戻ってるwwww」

心の底から湧き上がる感情に抵抗しようと
わざと明るくZに話かける

事態は一変したものの
携帯はまだ繋がったままのようだった



A「扉・・・開かんねんwwww
ちょ・・・・やばいってwwww
【 オマエカ 】

視線を人影の方に戻す



・・・・明らかに先ほどよりも近づいて来ている


A「いやいやwwww
まじやばい!!!

ちょっ!!! お前今からこっち来い!!!!」

段々余裕の無くなって来たAは
Zに助けを求める

A「これまじやばいって!!!!【 オマエカ 】

た、頼むからすぐ来てくれ!!!!【 オマエカ 】





視界の隅で恐る恐る確認していたあの人影は

Aが確認する度に
足音も無く徐々にその距離が近づいていた




先ほどからAの心に湧き上がる感情・・・


それは、「恐怖」だった



A「開かへん!!! くそっ!!!
扉が開かんねん!!!!

あほ!!!!
んな時に落ち着いてられるかぁっ!!!!!

Aの恐怖が臨界点に達しようとした時



【 お 前 か 】


・・・・それはAのすぐ真後ろで聞こえた

恐る恐る振り返ると

先ほどはあんなに親しく話ししていた男性が

恐ろしいまでの殺気を放ち
こちらを睨んでいた・・・・

A「ちょwwww
おっちゃんwww、そんな怖い顔せんでも

何か扉開かんねんwwww」

恐怖を紛らわそうと
先ほどと同じ口調で男性に話しかけるも

男性は顔を崩すことなく、Aを睨み続けていた・・・・

【 お前か 】

A「いや、何か勘違いしてない??ww
さっきの電話そうゆうことちゃうねんwwww」

何とかこの場を逃げ切ろうと
Aは必死で抵抗を試みる

A「だから・・・・話せば分かるって

ん?
なんや、えらい汗が出てきた
目に入って滲むわ」


目に入ってくる嫌な汗を拭う

しかしそれは、汗ではなく


血だった・・・・

A「え?? なんで???
って・・・・

い”あ”っ!!!!!」


突然自分の頭に激痛が走る




【 死ね 】

パニックになっているAを
更にどん底に突き落とすような

そんな言葉が頭に入ってくる


A「ちょ!!!! 
い!!!” あ”ぁ!!!” 待っt” !!!」


何度も何度も、Aの頭に謎の激痛が襲う


とうとう頭を両手で抱え、
その場にうずくまってしまった

【 死ね 】

しかしそれでも、激痛は襲ってくる
何度も 何度も、 
何か硬い鈍器の様な物で殴られているような

そんな、感覚・・・・



それは、

AとZがこの男性を殺害した時と同じようなものだった・・・・

A「いっ”!!! すみません・・・
ごめんなさい!!!! ごめんなさい!!!!」

うずくまり、頭を守る形で、目を閉じ
そうやって必死に助けを求めた



・・・・・

すると
次第に頭に襲う激痛は無くなり

先ほどから頭に入ってくる嫌な言葉も聞こえなくなった


・・・・・・


・・・・助かった?



Aは恐る恐る目を開けた

うずくまった姿勢のA

地面から顔までわずか数十cm



そのわずかな間から
まるでAの顔を覗き込むように

あの男性の顔が

下から自分の顔を覗き込んでいた


A「・・・・ぁ・・・・ぇ」

あまりの恐怖にそのまま硬直状態になるA

男性はそんなAを見て

ニヤっ

と不気味な笑みを浮かべ・・・
【どう? 痛い?】

A「ひぃっ!!!!!!」

そのまま後ろに倒れ、
尻餅をついた形となる

【痛いでしょ? 私もすごく痛かったよ】

A「お願・・・・助 けて・・・・」

気がつくと男性の手には、金属バットが握られていた

それを大きく振りかざす・・・・

A「ちょ!!! すみません、お願いです!!!
助けて・・・・


い”・・・・・・



う”あああああああああああああああああああああああぁ”!!!!!!」

「Zの視点」
※注 以降【】内、電話の声


思わず携帯から耳を遠ざけたくなるような
Aの悲鳴が聞こえた後


もうAの声は聞こえなくなった・・・・

Z「もしもし!!!!? A?
大丈夫か!!!!?

おい!!!! 冗談やめろって!!!!!!」


Zの必死の呼びかけも空しく
Aからの返答は無かった・・・・・


何がなんなのか訳がわからず、
恐怖に駆られ、携帯を切ろうとした

その時




【もしもし?】


・・・・それは
聞き覚えの無い声だった


【もしもし? あなたAさんの友人さんでしょ?】

先ほどのAの絶叫に比べ、
この男の声はまるで
近所の知り合いに挨拶するかのような

そんな落ち着きのある声だった


Z「・・・・あんた 誰?」
先ほどのAの状況が未だ信じられないZは
恐る恐る電話の相手に話かける


【あぁ〜繋がってたんだ 良かった〜

あっ私ですか? 私は・・・・・










先日あなた方に殺された者です】


Z「!!!!!???」

すぐさま携帯の電源を切る



【電話切っても無駄ですよ】

なんども電話を切るが一向に電源が落ちない


【私とお話した時点でもう手遅れなんですよ】

あまりの恐怖に携帯を遠くへ投げ飛ばす

しかし、まるで自分の頭の中に携帯が埋め込まれているかのように
電話を通したその男性を声が耳から離れない

【あなたの友人さん、必死に助け求めてたでしょ?

はやくこっちに来なくてよろしいんですか?】


・・・もう、行けない
誰がそんなとこへ行くか!!!!

心の中でそう叫ぶ

【やっぱり来れないですよねぇ 残念だなぁ〜










仕方が無いので、私がそちらに向かいます
必ず殺しに行くので、待ってて下さい】

Z「えっ?」

ドックン!!!
心臓を直接鈍器で殴られたかのような
そんな衝撃がZを襲う

殺気も、怒りもなく
男性はただ平然と、そう告げた


Z「いや・・・・・待って!!!

お願いです!!!! 助けてください!!!!

ほんとにごめんなさいい!!!!許してください!!!! 」


【・・・・】

電話の向こうからは何も聞こえない

Z「ほんとにごめんなさい!!
ちゃんと自首します!!!許して下さい!!!!」

【・・・ふぅ】

小さいため息の後、
男性が話し出した

それは、先ほどまでの落ち着いた声と
少し変わっていた・・・・


【・・・・私もねぇ〜 ほんとは人殺しなんて・・・・ぅっ
したくないんですよ・・・ぅっ・・く・】

何の感情も無く話していた男性が
悲しげな声で、時折嗚咽を混じらせながら話ている


【この子(A)を・・・・殺してしまって・・・ぅ
まだ・・・・こんな若い子を・・・ぅっ】


Z「お願いです!!!助けて下さい!!!
お墓参りちゃんと行きます!!!

物凄く後悔してます!!!
ほんとなんです!!!! 」


【・・・・う・・ぅ〜〜
そう・・・ですか・・・・ぅ・・・くっ


くっ・・・・ただ、この子を殺してると
・・・何だか・・・くっ




凄く・・っく・・爽快で・・・・ぅっ・・・く

こんな感覚・・・・ぅっく・・・初めてで・・・

ぅくっく・・・くっく


くっくっくっくっくっくっく】






「くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ!!!!」



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