美人画

創作の怖い話 File.70



投稿者 喜多屋のテツロウ 様





3年前、僕の祖父が他界しました。

とても優しい祖父で、誰からも好かれる人気者の祖父のお葬式にはたくさんの方が弔問に訪れました。

そんな祖父には骨董品(みたいなの?)を集める趣味があり、僕は祖父の持っていた古い絵を形見分けに頂きました。

その絵は美しい女性が描かれてあり、優しく微笑むその女性の表情に惹きこまれるような魅力を感じたのですが、

姉曰く「不気味・気持ち悪い」とのこと・・・

今、書いてて思い出しましたが従兄弟たちもなんか気持ち悪がってたような・・・

まぁそんなわけで僕的にはとても気に入った絵だったんだけども、

姉のその一言や友達に見られるのもなんか恥ずかしい気がしたので、

部屋には飾らずにずっとしまっていました。

その1年後、僕は地元を離れ県外で一人暮らしをすることになりました(転勤のため)。

一人暮らしをすることにワクワクし、引越し作業もとても楽しかったです。

あの絵も持っていくことにしました。

引越しも落ち着いて、最後にあの絵を入れてある箱から取り出し久々に観てみました

相変わらず素敵な女性でした

その日の夜、その女性が夢に出てきました。

僕と女性は夢の中では友人同士のようで、仲良く遊んでいました。

やっぱり笑顔がマジで素敵なんです。

朝目覚めると、それが夢だったことに気付きとても残念でならなかったのを覚えています。

でも、部屋に飾ってある絵を観ればまた見た夢を思い出すことができるんです!

信じられないかも知れませんが…

この日を境に、毎晩その女性の夢を観ました。

海や山や遊園地などいろんな場所にその女性と行きました。

間違いなく、僕はその女性に恋をしていたと思います。

その想いに気付いたときからは、その女性は夢の中で恋人になっていました。

初めて女性の夢を見てから一週間ぐらいたってから頻繁に周りの人に体調を気遣われるようになりました。

顔色が悪く、疲れてそうに見えたようです。

たしかに、そのときの僕は元気が有り余っているわけではないですが、体調の不良を感じることはありませんでした。

ダイエットをしていたのでそのせいだと思ってましたよ。

何度目か夢で、女性は僕にあるお願いをしてきました。

それは一緒に旅に行こうっていう内容でした。もちろん僕はOK!と伝えます。

伝えながらにして僕が頭で思い描いたのは、直後の女性の素敵ないつもの笑顔。

しかし、女性が見せたのは笑顔ではありませんでした

急に無表情になり、そしていきなり目をカッっと大きく開き、僕の面前に近づき一言

「絶対だからな」

僕はいきなり頭上から冷水を叩きつけられたようなショックを受け、その衝撃で目が覚めました。

なんだったのだろうか・・・?

いままであんな表情の女性を見たのは初めてだ

怖くて、部屋に飾ったある絵が見ることができず、そそくさと出勤のため家をでました。

お店での休憩中(僕は飲食店に勤めています)、母からメールが来ました

そのメールには、あの絵に関する恐ろしい内容が・・・

メールは叔父からの伝言でした。そしてあの絵にまつわる話でした。

叔父は祖父の葬式には事情があって来れなかったのですが、

祖父の遺したあの絵が僕の手に渡ったことを知って連絡してくれたようです。

・あの絵には何やらイワクがあり、大変危険であること
・あの絵を購入してからすぐに祖父の体調が悪くなったこと
・たまたま法事で祖父の家に来たお寺の方にそのことを教えてもらったこと
・あの絵を人手に渡しても必ずなんらかの形で祖父の元に還ってくること(3回あった)
・お寺に相談に行ったら、御札のようなものを貰い、絵の裏に貼ってしまっておくように言われたこと
・言われたように貼ってからは何も起きなくなったこと
・誰にも迷惑かけないように家に隠しておいたこと
・祖父が亡くなったら叔父が引き取ることになってたこと
・来週の日曜日に叔父が岡山に取りにくること
・御札を確認すること

僕はこのメール見てすぐに僕は体調不良ということで家に帰ることにしました

幸い、見た目がかなり酷い状態らしくすんなり早退の許可がもらえました

帰り道、いろんなことを考えてしまいます。

なんで叔父は引き取らなかったのか?忘れてた?

怖くて御札の確認なんかできないこと。でもしないといけないような・・・

てゆーか、来週まで待てないし

それでもこのタイミングでメールが来るってことはじいちゃんが助けてくれてるのかも

どうしよう・・・

って考えていた矢先

タイヤがバースト!

マジです

パニックになりかける僕の目に入ったのは、ルームミラーに写るあの目を見開いた女

幸いに事故にはならずにすみました。あの女も一瞬見えただけです。もしかしたら気のせいかもしれません。

僕は、なんとかスペアタイヤに付け替え、また車を動かしました。かなり慎重に・・・

そのとき、自分の住むアパートの近所にある神社をふと思い出しました。

あそこの神主さんはとても感じの良い方で、

外で出会うと気さくに声を掛けてくれ引越ししたばかりの僕にとても親切してくれました

神主さんに相談しよう・・・

神主さんいませんでした・・・

正直泣きそうになりましたが、グッとこらえて神主さんの娘さんに事情を話すと

娘さんはすぐに神主さんに携帯で連絡をとってくれました。

やはり神主さんはすぐには帰ってこられないらしく(なんでも沖縄の島にいるらしい^^)早くても明後日になるとのこと

それでも娘さんに色々指示をだしてくれているみたいでした。

結局1時間くらい待たされて、娘さんから紙でできた人形を数枚いただきました。

それの紙と紙の内側には何やら筆書きされているようでしたが僕には内容はわかりません。

ただお守りとして非常に効果があるので何があっても側において置くようにとのことでした

その他にも色々、盛り塩するようにとか(位置とか細かく指定された)生ごみは絶対に家に置くなとか

本当は安全な所に避難したほうが良いらしいのですが、

今からだと移動中が危険らしいので今日は家に戻って指示通りにしなさいと言われました

確かに、移動であんな思いはもうしたくありませんしね

結局僕は、アパートにもどりました。

あの部屋に入るのはかなり勇気が要りましたよ。

しかも引越しして間もなく友人がいないためこんなときに一緒にいてくれるヤツなんかいませんでしたし

途中2度ほどブレーカーが落ちるアクシデントがありましたがそれ以外は何事も起きずに、

指示通りの措置をすることができました。

あの絵は押入れにしまいました。これも指示通りで

そうそう、あの絵を額縁から取り出し裏側にある御札を確認しました。

あの御札、絵の半分が破れ下半分だけ残っていました。

もしかして祖父はこの御札が破れたからあの女に・・・

気晴らしにネットなどをやって気を落ち着かせてましたが、

結局この日の夜、女は夢に現れませんでした

朝、目が覚めてすぐに神社に行きました。一応報告したほうが良いと思って。

神社までの短い時間、朝がとても心地よくなんだかもう不安を感じることがありませんでした。

神社ではまた娘さんが神主さんに連絡をとってくれて、指示を聞いてくれます。

新しくお守りを頂きました。古いのは必ず燃やさないといけないとのことです

そして、明日神主さんが戻るまで家から一応離れないで待つように言われました。

僕は家に戻り、店に仮病を使って休む連絡をし、のんびり明日を待つことにしました。

今晩は昨夜と同じように安眠できそう。押入れの方は怖くて見られないが・・・

夜になり、風呂に入り、かなりリラックスできていたのを覚えています。そしてウトウトしだしたので寝ることにしました

一生の不覚とはこうゆう事を言うのでしょうね…

僕は夜中になって気付きました。お守りを身に付けていないことを。

ヤベッと思い、ベットの横にある机(足側)の上に置いたお守りを取ろうとした瞬間

金縛りです。

やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい

視界の端には部屋の奥側の壁が見えます。

最悪です。

押入れにしまってあるはずのあの絵が壁に掛けられています。

その絵に気付いた瞬間から、暗いにもかかわらずハッキリと絵が見えてきました

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ

絵の中の女の顔もわかります

これまでにないくらい険しい表情で僕を凝視しています

金縛りになってからどれくらい時間がたったかわかりません

じいちゃん助けて・・・

「ジイチャンハタスケテクレナイヨ〜」

女がいつの間にか僕の隣にいて耳元でつぶやきました

目は真っ赤に充血し、ピンポン玉くらい見開いて僕を覗き込むように凝視しています

恐怖が絶頂に達した時、反動で(?)金縛りが解けました

僕は腹筋の要領で状態を起こし、足側にある机の上のお守りに手を伸ばしました

ガシッと僕の肩を女が鷲づかみして紙一重でお守りに届きませんでした

肩を掴むその手は恐ろしく硬く冷たい。本当に死人のような手でした。そして肩が砕けるかと思うほどの力で放しません

女の顔が僕の側まで再び近づきました。女の髪の毛が僕の頬に触れます。ゆっくり僕のほうに顔を向け

女「ヤクソクヲマモレ オマエハツレテイクゾ」

じいちゃん・・・助けて・・・

気絶する直前だったと思います

御札がそのときに勝手に机の上からヒラヒラと落ちました。ベッドの上に

じいちゃんです。間違いありません

火事場のクソ力でしょうか、僕はもう片方の手を力いっぱい伸ばしお札を掴み取ることができました

掴んだ瞬間、女がフッと消えました

本当に死を覚悟しましたね

じいちゃんにホント感謝です。

今度必ず墓参りしてお礼を言おう

と考えたとき

耳元で叫ぶ女の声が・・・

女「クソッ、モウスコシデ!

チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!チクショウ!

チクショウ!

チクショウ!



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