創作の怖い話 File.58



投稿者 でび一星人 様





「良ちゃん。

お母さん今から買い物行ってくるから、

お風呂の湯加減見て、もし沸いてたら火、止めといてね。

あ、ちゃんと底の方まで見ないとだめよ?

底の方は冷たい時あるからね。

あと、健二に目薬点してあげて。

目医者さんからもらったのが冷蔵庫の上の方に入ってるから。

それと、7時になったらおばあちゃんの体温も測っといてくれる?

脇に体温計計挿して三分くら待ってれば良いから。」

「は〜い。」

娘の良子は元気に返事をした。

まだ5歳というのにしっかりした娘だ。

家には他に、寝たきりの母と9ヶ月の息子が居る。

良子に全部まかせて買い物に行くのは今日が始めてだ。

でも良子なら大丈夫。

幼稚園でもしっかり者と評判の娘だから。

買い物を終え、家に帰ると寝たきりの母のうめき声が聞こえてきた。

急いで母の寝室に行くと、母のベッドが血まみれだった。

シーツをめくると、母の脇に深々と体温計が刺さっていた。

母の脇からはどくどくと、粘度の高そうなどす黒い血が流れ出ている。

 私は慌てて救急車を呼ぼうと電話のある部屋まで走る。

その部屋に寝ている健二の左目には、えぐるように目薬の容器が刺さっていた。

右目も同じようにえぐったであろう穴がポッカリと開き、真っ赤な血が溜まっていた。

私は急いで健二を抱え上げ、浴室に向かった。

血を洗い流さなければいけない。

なぜかそう思った。

浴室に行くと、良子が浴槽に上半身全てを突っ込み、体を【くの字】に曲げ、動かなくなっていた。

良子は目をしっかりと見開き、浴槽の底をじっと見つめているようだった。



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