父親は何処に

創作の怖い話 File.46



投稿者 ストレンジカメレオン 様





母親はまた机に座って何かを調べている。父親が行方不明になってから約二週間…

三人家族だった僕と母親は捜索願いを出して、探しまわったが全く父親の情報が見つからないままだった。

父親が行方不明になって一週間たったあたりから母親はショックのせいか、おかしくなってきていた。

独りでぶつぶつぼやいてたり、急に笑いだしたりと家庭が父親が行方不明になってから崩れ始めている。

それでも母親は父親を探す手掛かりを探しているのか、何かを調べている時はとても真剣であった。

父親が見つかれば、きっとまた元の家族にもどれるはずと僕は思い、

母親に「おふくろ!オレも調べもの手伝うよ!親父のこと 探してるんだろ!?」と声をかけた。

すると母親は「大体 お父さんのことは分かったからお前はそんなことしなくていいよ。

そろそろご飯作るからあっちで休んでなさい。」と僕をかるくあしらった。

それでも少しでも力になりたかった僕は

母親がご飯を作りにいってるすきに母親がいつも調べものをしている小さな書斎の本棚を開けた。

すると何冊かの本が落ちてきた。

「なんだこれ… ん…医学書か…こっちは生物学の本だ…これは…人体の構造……?なんだこの本…?」

台所から母親の声が…「ご飯出来たわよ!!今日の焼き肉はおいしく出来たから早く来なさい!」

今日の焼き肉はおいしく出来た!?

僕はもう一度 無造作に散らかった父親の捜索とは全く関係のない本を見つめる。頭が混乱し始める……

母親がもう一度僕を呼ぶ。

「ご飯出来たって言ってるじゃない!聞こえないの!?」

とりあえず母親にこの書斎にいることに気付かれたらまずいと悟った僕は本を急いで片づけ、

忍び足で自分の部屋に戻り、布団に隠れ、眠ったふりをして母親がもう一度呼ぶのを待った。

「まさかおふくろ…親父のこと……でもそんなことあるはずない!」

布団のなかで独り、勝手な想像が広がっていく。

ギシ、ギシ、ゆっくり静かに母親の足音が近づいてくる。

足音は僕の部屋に近づいてると思ったが…よく耳をすますと足音は書斎へ向かっている……

そして足音がやむ…

今度は静かに書斎から僕の部屋に足音が近づく…

足音は僕の部屋のドアの前で止まり、急に元気良くノックを始める。

「寝てんの!?ご飯出来たってさっきから何回も呼んでるのよ!!」

僕は寝たふりを続けた。

「開けるわよ」

母親が部屋に入って来て僕を揺さぶった。

「なに…?」

僕は寝ぼけたふりをした。

「ご飯出来たわよ!」

二人で台所へむかう…沈黙のまま台所に着き席にすわる…

「おいしそうでしょ?」

母親は笑顔で僕に言う。

「そうだね。これ何の肉?」

僕はとっさに聞き返す。

「…………………何の肉だったかしら、忘れちゃった、

そんなこといいから早く食べなさい!せっかくおいしいのに冷めるわよ」

おふくろはおいしいそうに肉を食べ始める。その姿には寒気を覚えた…

「なにぼけっとしてるの!!早く食べなさい!」

「うん…」

次の瞬間

「ピンポーン!!」インターホンが家の中に響く…

「誰かしら」

母親が玄関に向かう。

「ただいま!!」

「あ… あなた…お帰りなさい…いったい何処行ってたの!?」

親父が帰ってきた!?僕も急いで玄関へ向かう!

「お、親父!!何処行ってたんだよ!!

捜索願いとか出しても見つからないし、会社の人も知らないって言うし!!」

「すまん!すまん!急に今の会社とは別件の仕事が入ってな!

何回か家に電話を入れたが誰も出なくてこっちも心配だったんだぞ」

僕はほっとした!!そしてとても嬉しかった!

逆に母親を疑ってしまった自分に怒りの感情もあった。

「ちょうど良かった!今 ご飯食べてたのよ!あなたの分も用意するわ!詳しい話は後で聞かせて!」

母親と僕は軽い足取りで台所へもどる。親父は着替えに行った。

とても肉がおいしそうだ!安心した僕は焼き肉を一口食べてみた。

とてもおいしい!すごい勢いで僕は全部たいらげた。

「お父さんのこと 待ってなきゃだめじゃない!」

「だっておいしかったからさ!」

親父が着替えを終え席についた。

「久しぶりなんだし夫婦水入らずで二人だけで話しな!

オレ後で親父にいろいろ話聞かせてもらうよ!聞きたいこともあるし!」

食事をすぐに済ませた僕は自分の部屋へ一人向かった。

「これでまた元の生活に戻れるんだ!でもあの書斎にあったおふくろが調べてた本は何だったんだろう?」

ふと気になった僕はまた書斎へ向かう。 そして本棚を開けた。

やはり医学書やら、そういった本ばかりだ…

本をどんどん取り出してみる…すると本棚の奥に黒いビニール袋がみえる。

「あれ…なんでビニール袋が本棚に?取り出してみよう」

僕はビニール袋に手を伸ばす…

「アハハハハ!!!!」

二人の大きな笑い声が台所から響く。

なにそんなに笑ってるんだろと思い、興味本位で僕は耳をすました。

「ほんとそっくりね!」

「だろ!金かかったんだぞ」

「特別な整形だからね」

「そういえば前の旦那は?」

「ほとんどあの子のお腹の中よ」

これを聞いてしまった僕は手の力が抜けビニール袋を離した。床に転がったビニール袋の中から………

腐りかけの本物の親父の生首が無造作に転がっていった………(



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