悲劇の仮面(2)

創作の怖い話 File.41



投稿者 ストレンジカメレオン 様





僕がこの仮面の事件を真相を知ったのは、

尊敬する桜井先輩から今までの仮面の事件の事情を聞かされてからである。

そして本格的にこの仮面の事件を全て解き明かし、一連の事件に終止符を絶対につけてやろうと思ったのは、

桜井先輩が死んだ時からである。そして仮面の恐ろしさを痛感したのもこの時であった。

そう全ては、桜井先輩からの話から始まった。

「稲葉君、相談があるんだけど時間もらえるか?」

「桜井先輩、何ですか?相談って、僕で良かったら聞きますよ。」

「ありがとう、稲葉君は一番信用できる後輩だと思っている。

オレはある事件について捜査を続けている、そのことで手伝ってほしいことがあってな」

「ある事件というのは?」

「田原さんが自殺したのを知ってるよな?」

「ええ、田原さんは中川さんを殺害したあと、自殺をしたんですよね?

なぜか田原さんは以前浪人生が起こした事件の証拠品の仮面を自宅に持ち帰っていて、

浪人生の時と似たような自殺現場になっていた不気味な事件ですよね!?」

「そう、今からオレが話すことを稲葉君が信じるか信じないかは

稲葉君次第だがこれからオレが言うことは全て事実なんだ!」

僕はこの桜井先輩の目を知っている、この目は桜井先輩が自分を忘れて、

事件に没頭しているときの目だ!今から桜井先輩が話すことは全て真実のはずだ!

「ぜひ聞かせてください!」

「実はな……………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………ということなんだ、

それでこれがその例の仮面なんだ。そしてこれがこの事件の重要事項をまとめたレポートだよ、」

そこには、にわかには信じられないような事が書き出されていた。

今まで事件で死亡した人間は犯人を含めすべて仮面による被害者となる状況である。

そうだとしたら非常に恐ろしく悲しい事実である。

「現実から離れている内容ですが事実である以上、仮面の呪いなんですね…

そしたらそんな仮面、ここで壊してしまえば終わりじゃないですか!」

「いや、そういうわけにはいかないよ…

オレは一連の事件が仮面の呪いであるという完全な証拠をつかんで、

呪いによって犯人扱いにされている被害者の無実を証明したいんだ!」

「一体どうやって!?」

「今、オレの自宅には数カ所にビデオカメラを設置してある、

この事件に関しては何が起こるか分からないから今も撮影し続けている状況だ、そこでだ…

オレはこの仮面をつけて、自ら呪われてみる。

君は、オレの自宅の前で、もし仮面をつけたオレが出てきたら取り押さえてほしい!

オレはそうすることでこの事件に勝てるんだ」

「嫌です!!

それは、もし僕が仮面をつけた桜井先輩を取り押さえたとしても桜井先輩自身が死んでしまう可能性も高いです!

それに証拠をビデオカメラで捉えたところで

そんな非現実的な事実を世間が認めてくれるかどうかだって分からない…」

「これは勝負なんだ!中川さんという方が言っていた、ひとつひとつの事件に自分のプライドを賭けて、

勝負する、そうすることで事件と本気で向き合うことが出来る、ってね!だから…」

「桜井先輩!!それとこれとは違います、事件に勝つということは、

いかに犠牲者を出さずにすんだかということなんじゃないですか!?

中川さんはそういう意味でおっしゃったんじゃないんですか!?

白黒をつける、それも大事なことですが、もっと大事なことを忘れていませんか!?

それに桜井先輩の命は桜井先輩だけのものではないんですから…」

桜井先輩は俯き考えこんだ様子であった、そして顔を上げ

「そうだな…………………確かに君の言う通りだ…オレはどうかしてたよ、

仮面に振り回されていたのかもしれない、やはり仮面を壊そう!仮面を壊すのはオレの役目だ、」

桜井先輩はそう言って、仮面を手にとった。

一呼吸をおいて、仮面を床にたたきつけた、

「バーーーーッッン」

仮面が粉々に割れ、床に、ばらまかれた。

「これでこれ以上犠牲者は出ることはないだろう、これで良かったんだよな、稲葉君。」

その時の桜井先輩の表情は悲しみと安堵の気持ちが混ざったような

なんとも言えない切ない表情だったのを覚えている。

「はい!一番良い決着のつけかただったと思います。

この割れた破片は一応重要証拠品になるのでしっかり保管しときます。」

僕はこれで仮面の事件が幕を閉じたものだと思っていた…

これ以上、誰かが死ぬことは無いと思った。

「今日は疲れたから早めに帰らせてもらうよ、ありがとう、稲葉君、やはり君に相談して良かった!

上からこの事件に関しての捜査打ち切りの命令も出てたところだったしな。」

「どうして捜査の打ち切りを?」

「さあ?、上が考えていることはよく分からん、」

そう言って桜井先輩は帰っていった。

生きた桜井先輩を見るのは、これが最後になるとは思いもしなかった…

次の日、桜井先輩は帰らぬ人となったのだ…

残酷な殺されかたで…

死体はもう桜井先輩だと分からないくらいズタズタにされていた…臓器が部屋中に飛び散り、

顔もグチャグチャにされ脳みそが飛び出し、その場に立っているだけで気がおかしくなるような現場であった…

不気味なことに、それなのに周りにはまったく抵抗した跡が残っていなかった。

「ど、どうして……さ、桜井先輩……………これが…か、仮面…の呪い……」

足の震えが止まらなかった…

見るも無惨な光景の中、僕はあるものに気づいた。

「このビデオカメラ!電源が入ったままだ!!もしかしたら!」

僕はこっそりビデオカメラを持ち出し、署に持ち帰った。

桜井先輩がたしかに仮面を壊したはずなんだ…今回は仮面とは関係ない異常者による殺人にちがいない!

これ以上ない恐怖と不安の中、オレはテープを再生した…

(あっ桜井先輩が部屋に入って来た、やはり自分でビデオカメラを設置していることを忘れているな…)

桜井先輩は着替えもせずに寝てしまっている。

僕ははっきり言ってビデオを見たくなかった、あんな残酷な殺され方をされた死体を見て、

自分の尊敬していた先輩が殺される姿など見たくなかった。

しかし、僕は逃げたくはなかった、この恐ろしい現実から……桜井先輩が逃げなかったように!

桜井先輩は自ら仮面をつけようとしたのに、僕が逃げるわけにはいかない!

逃げることは許されない、そう自分に言い聞かせていた。

そう覚悟を決め、画面に集中した。

途中までは早送りをしていたが、ちょうど日付が変わるころ、

突然、桜井先輩が起きたので、早送りを止め、再生した。

桜井先輩は突然起きたかと思うと、周りを見回していた、まるで何かを探しているようだった…

「誰だ!?」

桜井先輩は誰もいない部屋で叫んでいる。

「お前は仮面の呪いの主か!?何を言ってるんだ!!」

たしかに桜井先輩はだれかに向かって叫んでいた…

「仮面はオレが壊したはずだ!そんなこと信じられるか!」

次の瞬間

いきなり桜井先輩の喉が急に引き裂かれ、大量の血が噴き出した。

さらに腹部がズタズタにされていく…

(なんなんだ……一体……この映像は……僕は夢でも見てるのか…現実離れしすぎているにもほどがある…)

みるみるうちに桜井先輩はなんの抵抗も出来ずに肉片となっていった…

(こ、これを公表して、呪いの存在を知ってもらわなければ…)

そう思い、僕がビデオカメラを手に取ると、急に電源が落ち、まったく使えなくなってしまった。

そしてテープも二度と再生出来なくなってしまった…

(なんてことだ…桜井先輩が犠牲になってこのビデオが全て証明してくれると思ったのに!

……でもこれで本当に終わりのはず……だよな…)

なぜか僕は急に仮面が気になり、粉々になっているはずの仮面を確認しにいった。

オレは仮面を見た瞬間、背筋が凍り付き、身動きがとれなくなった…

仮面は元の形を取り戻していたのだった………

(まだ……まだ…終わらないのか!?一体オレはどうすればいいんだ!!)

恐怖、怒り、悲しみ、さまざまな感情がオレの体中から溢れ、

なにがなんだか分からなくなり、なにが現実だかも分からなくなっていた…

(オレはどうすればいいんですか?桜井先輩)

オレは桜井先輩が言っていた言葉を思い出した。

「上からこの事件に関しての捜査打ち切りの命令も出てたところだったしな。」

(どうしてこの事件に関しての打ち切りの命令が出ていたんだ!?きっと、何かを知っている人間がいるんだ!)

警視庁の上の人間なら知っているはずだ!

この事件を打ち切りにした理由を聞けばなにかが分かるかもしれない!

僕は今まで全ての事件の関連性、重要事項を整理し、レポートをつくり、上の人間とかけあう準備をした。

(この事件、必ず終止符をうってみせる!今まで犠牲になった人達のためにも…)



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