恋愛必勝法

創作の怖い話 File.28



投稿者 ストレンジカメレオン 様





昨日、オレのクラスの女子が何者かに殺害された…

その話を担任から聞かされた時はクラス中が深刻な雰囲気になり、中には泣き叫ぶ子もいた。

その殺害された女子の親友の一人だった来未は特に落ち込んでいた。

来未は、クラスでは明るく顔も整っていて男子女子問わず人気があり、いつも笑顔だった。

そんな来未が、その日は全く笑顔を見せなかった…

来未の友達の一人の詩織が必死に来未を慰め元気づけていた。

オレは殺害された子とはあんまり話したことが無かったが、

来未や詩織とは仲がよくいつも一緒にいたから落ち込んでいるのを見ると心配になった。

オレの男友達の一人の浩志も心配そうに来未と詩織を見ていた。

オレと浩志、来未と詩織。この四人メンバーでいつも遊んだりいろんなことを語り合っていた。

「なあ、孝弘、来未のやつ、特に元気ないからオレも元気づけに行ってくるわ。」

浩志はオレにそう言って来未を慰めに行った。

オレはというと、こういう雰囲気は苦手で、

落ち込んでるのに対してはそっとしておきたい人間だったのであえて来未や詩織の所には行かなかった。

次の日

浩志に会うと

「だいぶ二人とも元気になってきたぞ!良かった良かった!」

「そうか!そりゃ良かったよ!オレも浩志と一緒に元気づけに行ったほうが良かったのかな…」

「孝弘は孝弘なりに気を遣ったんだろ!気にすることないよ!二人とも孝弘の性格は知ってるし!」

浩志はいつも元気で天真爛漫。そんな浩志にオレは知らず知らずのうちに元気をもらっていた。

「じゃ今日はまた、いつもみたいに四人で帰れそうだな!!浩志!」

「わりぃ!孝弘。今日オレ、来未と話さなきゃいけないことがあるんだ!詩織と一緒に先に帰っててくれないか」

「大事な話ならしょうがないな、まあ何かあったらオレにも相談しろよ。」

「ありがと、わりぃな!」

実はオレにとっては好都合だった。オレは詩織のことが好きだったからだ。

そしてその日、オレは浩志に言われた通り、詩織と一緒に帰った。

「大事な話があるんだってさ!浩志のやつ」

「ちょっとぉ〜、孝弘、それってもしかしてもしかするんじゃないの。」

「し、詩織、それどういう意味だよ!」

「ふぅ〜、これだから男はだめね、女の勘よ。ふふ」

浩志が来未に気があるということは結構前から知っていた。オレも本当は自分の気持ちを詩織に伝えたかった。

でも臆病なオレは核心に触るような話題は避け、とりとめのない話を続けた。

その日結局、二人きりというチャンスを無駄にしてしまっていた。

次の日

浩志が元気よくオレの所へ向かってきた。

「孝弘!!昨日はごめん!」

「全然気にしてないっつうの!ところで来未とは話済んだのか?」

「あっ、うん。まあな…あのさ孝弘、実はオレ、来未と付き合うことになったん だわ!

オレは来未のことずっと好きだったんだ、だからオレが来未のこと元気づけてあげたいと思って」

「まじか!?そりゃおめでとうじゃん!!浩志なら絶対、来未のこと幸せに出来るよ!」

「ははっ ありがと!孝弘!お前も本当は詩織のこと好きなんだろ!」

「何言ってんだよ!浩志!」

「孝弘の行動みてりゃ分かるよ!それくらい!まあ詩織のほうはお前の気持ちには気付いてないみたいだけど…

良ければこの本あげるよ!オレはもう必要ないから」

「ん、恋愛必勝法…?お前こんな本読んでたのか!ははっ!ありがたくもらっておくよ!」

「ったく!馬鹿にしやがって!ちゃんと読めよ」

オレははっきり言って浩志が羨ましかった。先を越されたという感じがしていた。

オレは家に帰ると早速本を開いた。

すると中から埃と髪の毛が落ちてきた。

(もう浩志のやつ本の扱い悪いな、まあ良いか…恋愛必勝法か…よしオレも浩志の後に続くぞ!)

〈まずはあなたが気になっている異性の名前と年齢をこの本の最後のページにある表に書きましょう。〉

(ん、名前を書くのか、恋愛マニュアル本ではなくおまじないの本なのかな?

ってか結構この本読んでいる人いるんだな!名前がたくさん書いてある!ちゃんと来未の名前も書いてあるし、

案外本当に効き目があるのかも!では早速詩織の名前をと)

〈次に気になっている異性が写っている写真をこの本に挟み込みましょう。〉

(写真を挟むのか、なんか本格的だな!よし、確か四人で遊園地に行った時の写真があったな!あれを使おう。)

〈そしたら、ここで今日は本を閉じましょう。早速明日には効果があらわれます。〉

(これだけで良いのか!?まあ所詮おまじないだしな…)

次の日、オレは詩織に呼び出された。

「詩織、どうした?急に?」

「あのさ、今後の日曜日、暇?………来未と浩志、二人でデートしたいって言うからさ、

私達は私達で遊ぼっかなぁなんてね」

「お、おう!もちろん暇だよ!全くあいつら羨ましいよ!ははっ」

「うん、じゃ決まりね!じゃ何するかはまた後日で!」

オレは正直言って驚いた。

詩織から遊びに誘われたことなんて一度も無かった。

(これは本の力なのか!だとしたらすごい効き目だ!)

今日も学校が終わり、家に着くとすぐに本を開いた。

〈早速効果が出てきたようですね。この調子でいけば、あなたの気になっている相手を必ず自分のものに出来ます。

では次の段階です。相手の髪の毛とあなたの髪の毛を結びましょう。そしてそれを本に挟み込みましょう。〉

(今度は髪の毛か…どうやって詩織の髪の毛を…うーん)

次の日

詩織がオレを呼んでいる。

「孝弘ー!!ちょっとちょっと!こっち来て」

「どうした?」

「日曜日のことだけどこの映画、観に行かない!?すごい面白そうだよ!」

「どれどれ…あっ、ちょっと待って、詩織、髪の毛に何か付いてる」

「痛っ!もうなにすんのよー!」

オレは詩織の髪の毛をポケットに仕込ませた。

「ごめん ごめん、ちょっと力、入っちゃった、ゴミみたいのが髪の毛に付いてたからさ、それよりどの映画?」

「もうー、この映画だけど面白そうじゃない?」

「あっ、この映画、オレも見たかったやつ!」

「ほんと!?じゃ決定!じゃ日曜日、いつもの駅前の喫茶店の前で待ち合わせね!」

(よし!これで詩織の髪の毛とオレの髪の毛を結べば…)

オレは家に着くとポケットに仕込ませた詩織の髪の毛と自分の髪の毛を結び、本に挟んだ。

〈無事、ここまで出来たようですね。もう少しで相手の方はあなたのもの。では次の段階へ〉

(ここまで来れば本の力なんて無くたって大丈夫だろう!もう本は閉じよう)

オレはそう思い、本を本棚にしまった。

そして日曜日、

少し早めに待ち合わせの場所に向かった。

喫茶店に着くと詩織がすでに時計を気にしながら待っていた。

「よっ!早いじゃんか!待った!?」

「私も今着いたとこよ、孝弘も珍しく時間通りに来たわね、ふふ!」

その後、オレたちは映画まで時間があったので近くのお店でゆっくり昼食をとった後、映画館へと向かった。

映画を見終わって外を出るとだいぶ日が暮れていて12月のイルミネーションが輝きはじめていた。

「綺麗だね!映画もすっごい感動したし、気分が良いなぁ、

今頃来未と浩志はラブラブしてんだろうなぁ、あの二人に幸せになると良いね!孝弘」

「あっ、うん…まあな!」

オレは本の力を信じて詩織に告白するチャンスをうかがっていた。

「見て見て!あのツリー!!とっても綺麗!」

「あのさ…詩織、オレさ…」

「どうした?孝弘?」

「オレ詩織のことが好きなんだ、もう結構前からずっと好きなんだ!オレと付き合ってくれないか!?」

「えっ……孝弘、急にびっくりしちゃった。私も孝弘のこと好きだけど、そんな風に思ったことなかったから…ありがとう!

気持ちは嬉しいよ!でも私、少し考えたいから返事はちょっと時間もらってからでいい!?」

「そうか…分かった、返事待ってるから、ゆっくり考えて…」

そう言ってその日、オレたちはそこで解散した。

家に着いたオレは

「はぁ、絶対いけると思ったのになぁ!本を最後まで読まなかったからかな…

こうなったら最後まで本を読んで絶対詩織と付き合ってやる!」

そうしてまたオレは本棚から本を取り出しページを開いた。

〈この段階が最終段階になります。もう一踏ん張りです。〉

(おっ、最終段階か!よしやってやるぞ!)

〈次に書いてあることを実行すれば意中の相手は完全にあなたのものになります。

あなたが気になっている相手の友達を一人あなたの手で殺してください!

そうすればあなたの意中の相手はあなたのもの。

最後はこの本を違う誰かに紹介してください。

もし紹介しなければあなたに信じられないほどの不幸がかかるので要注意〉

「よっ!昭仁!久しぶり!」

「孝弘!久しぶり!」

「昭仁、今好きな子いるか?良い本紹介してやるよ!」




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