奇妙な1週間(13)

創作の怖い話 File.268



投稿者 でび一星人 様





ポツ・・ポツ・・



  ポツポツポツ・・・・・



ザァァァァァ・・・・



「うわっ、雨がまた降ってきた!」




百瀬老人がそこまで話した時、

また急に雨が降り出した。


「・・・通り雨でしょう。一時中断しましょう。」

デビロの指示で、一同は玄関口に非難した。



「すぐ止みそうですね。この雨は。 

雨が上がったら、また始めましょう。」

「雨・・・止んだみたいね・・・。」

下山静香が腕を組みながら言った。

「・・・そのようですね。さて。戻りましょう。」

デビロの指示で、皆それぞれの席に着く。

「・・・それでは、百瀬さん。続きをよろしくおねがいします。」

「はい・・・w」


百瀬は続きを話し始める・・・。

「・・・ダメ・・・やっぱりかあさん怖い・・・。」

「おかあさん・・・。」

ドアノブから手を離したおかあさんの声は震えていました。



ゴソゴソ・・・




  コトコト・・・




部屋の中からは、依然として物音がきこえてきます。


裕史君はそんなおかあさんの前に立ちました。

「・・おかあさん。僕があけるよ。」

「え・・ダメよ裕史。危ないわ。」

「大丈夫。コレがあるから。」


裕史君は武器として手に持ったしゃもじをかかげました。

「裕史・・・わかったわ。お願い。」


お母さんは裕史君の目を見て、ゆっくりと頷きました。


裕史君もひとつ頷き、ドアノブに手をやります。


「なむさん!」

そう叫び、裕史君はドアを思いっきり開けました。


ゴソゴソ・・









   ゴソゴソ・・・







人影がそこにありました。




ゴソゴソと、なにやらケーキを漁っています。




「だ・・・誰・・・?」



裕史君は震える手でしゃもじを握りながら、その人影に言いました。



ピタッ・・・




人影は裕史君の声に反応し、動きを止めました。


そしてゆっくりと振り向きます。





ドキドキ



ドキドキ・・




ドキドキドキドキドキドキ・・・




裕史君の鼓動の動きは早まります。






そしてその人影が振り向いた瞬間、




裕史君は叫び声を上げました。

「おとうさん!!!!」




「おう。裕史か。何やってんだよ!火つけっぱなしで、どこ行ってやがった?」


「アナタ!」


お父さんの声と気づくと、おかあさんも部屋に入って来ました。



「おう!お前まで・・・何やってんだよ!

今日は裕史の誕生パーティーやるっつーから、仕事早く切り上げてきたってのによ!」



 そう。


今日は裕史君がダダをこねて誕生パーティーをしてほしいと言ったので、

仏教徒のお父さんが折れ、仕事を早く片付けて帰ってきてくれたのです。


「おとうさん・・・ゴメンヨ。てっきり変出者だと思って・・・。」

「な、なに言いやがるんでぇ!このガキが!」

「アナタ!今日はこの子の誕生日なんだから抑えて抑えて!」


 そこには、暖かい家族の姿がありました。


家族三人が揃い、裕史君は無事に、

お父さんが少しかじったケーキに立てたロウソクの火を吹き消し、八歳の誕生日を迎える事ができました。

その後、お父さんは裕史君の誕生日プレゼントを、巨大な白い袋から取り出し、手渡しました。

「わぁ!おとうさんありがとう!」

「ヘン。よせやい。照れるじゃねえか。」


鼻をすするお父さん。

その後、お父さんはビビリながらシャンパンのフタを空けてくれました。


飛んでいったシャンパンのフタは、天井にぶち当たり染みを作りました。



暖かい家族。



うれしそうな裕史君の笑顔。



照れながらも、満足げなお父さん。



そんな姿を見つめ、幸せを感じるお母さん。



家族の中に、とても暖かな時間が流れていました。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「・・・以上です。どうも皆ありがとwww」

百瀬老人は話を終えると、満面の笑みでお礼を言った。

「百瀬さん・・・。」

不機嫌な表情のデビロ。

「・・・百瀬さん、アンタ・・・怖い話って・・・意味わかるか・・・?」

「www怖くなかった?Www」

ガタッ!


デビロはものすごい剣幕で百瀬の胸倉を掴みました。

「お前!おい!なめてるのか!? だれが感動話をしろと言った?あ?

これだけ雨で待たされて、

これだけハードルが上がってんだぞ?

こんなんで皆が納得するとでも思ってんのか!?」


「いてててて・・・離してよwwwデビロさん・・・デビロさんに触れたら地獄に行っちゃうじゃないかwww」

「どの道、地獄行きはお前だよ!モモジイ! この糞野朗!低脳な猿!

 それに、あの部屋じゃ無ければオレに触れても地獄にはいかねえよ!」

「デ、デビロさん・・・落ち着いて!」

里美と出不夫があわてて仲裁に入る。

「ハァ・・・ハァ・・・この会をぶっつぶしやがって・・・ハァ・・・ハァ・・・なんなんだよお前ら!」

デビロは反泣きでした。

反泣きのデビロは、百瀬と狩羽を睨んでいました。

「お前ら、感動の話したり、オチのある話したり・・・桜ちゃんのは比喩を解読したらちゃんと怖ぇから良いけどよ・・・。

本当に・・・何なんだよ・・・。」


デビロは頭をかかえ、その場にうずくまってしまいました・・・。

「デビロさん・・・。」

それを見た狩羽は、申し訳なさそうな顔でデビロに歩み寄りました。

「デビロさん・・・そうだよな・・・デビロさんは、

この会の進行を任されて・・・無事に終われるように必死だったんだよね・・・。

僕はね・・・死んだ時の事を思い出して・・・地獄に行って当然だと思って・・・

あんな事をしちゃったんだから・・・

自分が地獄に行っても、元のとおりだ・・・って・・・

でも、デビロさんの立場をまったく考えていなかった・・・本当にゴメン・・・。」


「・・・。」


デビロはうずくまったまま、顔を上げようとしない。

百瀬老人も、デビロの前に行き、そっと声をかける。

「デビロさん・・・ゴメンヨ・・・。
いや、おれもさ、

この歳まで生きてね・・・

自分だけ幸せっていうのが・・・なんというか、よくない考え方だと学んだんだよね・・・。

だから、誰かの不幸の上に成り立つ幸せを得るくらいなら・・・

自分がって・・・。

狩羽君の姿を見てて、思ったんだよ・・・。」

「えっ・・・。」


狩羽は百瀬老人の顔を見た。

「・・・狩羽君・・・。

君のその考え、おれには丸わかりだったよw

話した後の君は、震えていた・・・。

紛れもない、地獄が近づく恐怖・・・。

それを感じた。

それは君の優しさだ。

そんな優しい君が、

ただ独り、犠牲になろうなんて思っちゃいけないよ。」

「百瀬さん・・・。」


狩羽の目からは、涙がこぼれていました。

「ふふwww君はさ、

結局は地獄に行くのかもしれない。

でもさ、

僕も付き合うんだから、少しはマシだよねwww」


百瀬老人は、ひとつも震える事なく、笑顔でそう言いました。


「百瀬さん・・・アンタって人は・・・。」


泣きじゃくる狩羽の手を、桜は強く握り締めていました。


それに気づいたじろ吉は、怒って二人の手を引き剥がしました。


「おい!何やってんだよ!こんなところでラブラブするんじゃないよ!」


それは、嫉妬によるものでした。

「ご・・・ごめん・・じろ吉・・・。」

狩羽はじろ吉に謝りました。


(じろ吉は・・・桜ちゃんの事が好きなのか・・・。)

そう思いました。

「バカ野朗!謝るのはお前じゃねーよ!」

じろ吉は狩羽にそう言うと、桜を睨みつけました。

「オレの健治に容易く触るなよ!このメスネコ!」

「メ・・メスネコ・・・とりあえずごめんなさい・・・。」

桜はペコリと頭を下げた。


そう。


じろ吉は同性愛者だったのです。

「・・ちょっと!」

下山がウデを組みながら、デビロに詰め寄りました。

「ちょっと!アンタ!どうでもいいけどさ、早く頭上げなさいよ。

会はこれで終わりでしょ?

とっとと終わらせてよ。」



「・・・そうですね・・・。」

デビロは気を取り直したのか、ゆっくりと起き上がりました。


「・・・皆さん、取り乱してしまい、すいませんでした・・・。席におつき下さい・・・。」

デビロは静かに皆に言うと、自分も席に座りました。


「・・・それでは、今から結果を発表します・・・。」


ゴクリ・・・


それぞれ、神妙な面持ちで、デビロの発表に耳を傾けます。


「・・・まず、1番怖かった話・・・

いろんな意見を参照とさせてもらいましたが、


じろ吉さん・・・アナタです・・・。」


「え!?おれ?や、やった!」

じろ吉はこぶしを高々と突き上げました。

「チッ。」

舌打ちをする下山。


「・・・で、最下位は・・・。」

出不夫がこわばった顔で結果を待つ。

「最下位は・・・百瀬さん。アナタですよ・・・。」

「フゥ・・・。」

ホっとした表情の出不夫。



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