奇妙な1週間(2)

創作の怖い話 File.257



投稿者 でび一星人 様





机の模様からは、牧田の時のように無数の触手が出てきて、

イスを引き込んで行った。



「ひょっひょ・・・

皆さんは大丈夫ですよ。

その机の模様は【選ばれたモノ】しか取り込みません。

だからもたれたりしてても大丈夫です。」

デビロがゆっくりと歩きながらそう説明した。

・・・だが、あんなものを見せられたらいくら【大丈夫】と言われてももたれかかれるものでは無い。

 

 皆がそれぞれ席に着き、少し落ち着いたのを見計らってデビロは説明を再開した・・・。


「え〜・・・皆さん。

先ほども申しました通り、

皆さんは亡くなりました。

思い出してみてください。

もしかしたら、死んだ瞬間を思い出せるかもしれません。



・・・例えるなら・・・ですね、

皆さんは生前、【寝る瞬間】をハッキリ覚えていた事ってありましたか?

無い人が多いはずです・・・。

【生】から【死】に移行するのも、それとよく似ているのですよ。


・・・さて、本題ですが、

人は死んでからどうなると思いますか?

・・・普通は、生前の罪により、

天国に行くか地獄に行くかが決まります。

天国に行き、しばらく経ってまた生まれ変わるか、

地獄に行って、刑期を終えてから生まれ変わるか・・・。

それが普通の形です。

ところが、

普通では無いケースがあります。

・・・それが皆さんです。」


デビロがそこまで言ったところで、

「・・・普通では無い?」

と、高校生風のなよっとした青年が聞いた。

「・・・ええ。

ほんの稀ですが・・・

私共、【番人】の気晴らしの為にゲームを行うのです。」


「・・・ゲーム・・・?」

もう一人の高校生風の男の子が聞いた。


「ええ。

気晴らしです。

・・・アナタ方も生前、気晴らしくらいはしたでしょう?

それと同じようなものです。

我々唯一の気晴らしなのです。




・・・そのゲームというのはですね、



まず、ランダムで死んだ者を8人選びます。

その8人というのは、本当にランダムで、

天国に行く者、地獄に行くもの、

誰が選ばれるのかはわかりません・・・。



 そしてその選ばれた8人で、

生前培ってきた知識を駆使して、

順番に【怖い話】をしてもらいます。」


「・・・怖い話・・・?」

高校生風の女の子が聞いた。



「ええ。

怖い話です。

・・・そしてその中で1番怖い話をした人は、

我々の手により、何でも一つ願いを叶えてもらえるという特典があります。

・・・ただし、ムリな願いもあります。

【願い事を増やしてくれ】なんてのがそうです。

【生き返らせてくれ】とか、【次に生まれ変わった時には、〜な人生にしてくれ】

なんてのは出来ますので。」


「い・・・生き返る事もできるのか!?」

30代前後のメガネをかけた小太りの男が言った。

「・・・ええ。出来ますよ。」

デビロはニヤリと笑う。

「・・・まあ、1番怖い話が出来たらの話ですがね・・・。」


「おお!じゃ、じゃあ、アナタは良い人って事ですか?」

高校生の男の子が少し嬉しそうに言う。


「・・・ひょっひょ・・・

ひょっひょっひょっひょ・・・。


良いか悪いか・・・は、わかりませんよ。

物事、角度を変えれば全てのものが善になり悪になる・・・。

・・・それに、喜ぶのは早いですよ・・・。

最下位になったら・・・その人は地獄行きです・・・。」


「・・・地獄・・・?」

20代後半くらいのキレイな女性が言った。


「・・・ええ。

地獄です。

さっきの牧田さんのように、

その【地獄の門】から地獄に行ってもらいます。

そして・・・残りの6名の方は・・・本来行くべき【天国】か【地獄】に行ってもらいます。

つまり【何も無し】って事ですね。

まあ・・・今回は牧田さんが【失格】となったので、7人で争って頂く形となります。

つまり、7番目の方が地獄行き・・・と。

・・・以上がルールです。

至ってシンプルでしょう。

・・・何か質問はございますか?」



「あ、あのぉ・・・。」

小太りでメガネの男がゆっくりと手をあげた。

「どうぞ。何でも聞いてくださいよ。」

デビロは腕を後ろで組み静に言った。

「・・・あのぉ・・・。

ほ、本来行くべき天国か地獄って・・・

今解るんですか?」

「フフ。

気になりますか?」


「ええ・・・。

そりゃぁもう・・・。

もし地獄行きの予定だったら、

オレ、死に物狂いで1番を目指します。

でも・・・

もし天国行きの予定だとしたら、

最下位にさえならなければ良いわけですよね・・・。」


「ひょっひょ・・・

なるほど。

アナタ、少し賢い。

たしかにそうですね。

・・・ですが残念。

どちらに行くのかは、お教えする事は出来ません。」


「そ・・そうですか・・・。

でもまあ、おれはそんなに悪い事はやってないと思うし・・・

大丈夫だろう・・・。」


「・・・そうとは限りませんよ。」


「・・・え?」


ゆっくりと机にもたれかかろうとした小太りの男に、

デビロはニヤケた顔で言う。


「・・・さっきの牧田という男。

彼はルール違反を犯し、地獄行きになりました。

・・・彼はね、

生前、親友の奥さんをレイプしました。

その親友はそれを苦に自殺。

彼自身も、レイプした奥さんの手により殺害されました。

・・・でも、そんなヒドイ事した彼、

予定では天国行きだったんですよ・・・。」


「え・・・ええ!?

そ、それで天国?」


「ひょっひょ・・・

そう。

なので、世の中で【善】とされている事が実は【悪】だったり、

その逆だったり。

アナタ方の常識は、必ずしも正しいとは限らないのです。」


「そ・・・そうなんですか・・・

うう・・・

なんだか不安になってきた・・・。」



「ひょひょ・・・。

まあ、とにかく怖い話をする事です。

1番怖い話をする事ができれば、

本来地獄に行く者でも天国に行く事ができるのですから・・・。」



皆、デビロの説明を聞いて色々と考えているようだった。

そんな静かな雰囲気の中、OL風の女が口を開く。


「・・・だいたいルールは解ったわ。

じゃあ、さっそく始めましょうよ。

誰から話せば良いの?」


「ひょっひょ・・・。

まあまあ。

そんなに焦らないで下さい。

・・・この【会】は我々唯一の楽しみ。

そんなにアッサリ終わってはおもしろくないでしょう?


アナタ方が話す怖い話は、

1日につき一人です。

そして安心してください。

怖い話をする会はそんなに何時間もかかりません。

話の長さにもよりますが、一人1時間もかからないでしょう。

それ以外の時間は、各自部屋を用意していますので、そこでおくつろぎ下さい。」


OL風の女は不機嫌そうな顔をしながら口を開く。

「・・・『おもしろくない』・・・ねぇ・・・。



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