体に良い

創作の怖い話 File.241



投稿者 でび一星人 様





こんばんは。

ストーリーテラーのでび一です。

 皆さんの好きな食べ物は何ですか?

人によりいろいろ異なると思います。

 ちなみに僕は卵料理なんて好きですね。

非常に用途が広い。

ま、それはどうでもいい話ですね。

 さて、現実ではありえない世界にもし自分が紛れ込んでしまったら、

あなたはどうしますか?

今宵のお話はそんなお話です。

それではどうぞ・・・

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 「タマゴは体に良い。1日一個は食べたほうが良い。」

親友のAが言った。

「ふ〜ん・・・。」

僕は適当に相槌をうつ。

だって、タマゴが体に良かろうが悪かろうが、そんなに興味が無いから。


「なんで体に良いか知ってるか?」

Aは尚もタマゴの話を続ける。

「知らないなぁ。なんで?」


本当は別にどっちでも良いが、Aも話したいんだろうし聞く僕。


「タマゴからは、生命がまるまる一個生まれるだろう? 

つまり、生命まるまる一個分の栄養が、バランスよく組み込まれているからなんだ。」


Aはじっと目を見て話す。

僕はその視線に気付かないフリをして「ふ〜ん。」と、また相槌をうつ。



「タマゴより、もっと体に良いもの、知ってるか?」

・・・まだ続けるか・・・A・・・。

「・・・知らないなぁ。」


Aは僕に顔を近づけて、ゆっくりと

「・・・それはね、人間を、丸ごと食べる事だ。」


「・・え?」


『人間を食べる』という響きに、うかつにも反応してしまった。

Aはその反応に満足したかのように続ける。


「人間を丸ごと食べるって事は・・・だ。 

人間を作ってる栄養素を全て摂取するという事。 これほどバランスのとれた食事は無い。」


「ふ、ふ〜ん。」


僕はこのAが何を考えてるのかよくわからない時がある。

時折こんなふうにワケのわからない事を言うからだ。





・・・しかし、そんなAの話を聞いていて良かったのかもしれない。

僕は一週間ほど前、家族と親戚でキャンプに出かけた。

そして、予期せぬ事が起きてしまった。


キャンプ場の海辺に向かう途中、乗っていたフェリーがグラリと揺れた。

何が起こったのか解らなかった。


気がつくと、僕は海に投げ出され、真っ暗な水の中で意識を失った・・・。





・・・気がつくと、僕は見知らぬ浜辺に横たわっていた。

少しばかり水を飲んでしまったらしく、胸のあたりが気持ち悪い。


 ガンガン痛む頭を押さえながら、ゆっくりと立ち上がり辺りを見渡してみた。


・・・浜辺には小さな船のオモチャがいくつかあるくらいで、人の気配は無かった。


 僕はとりあえずおまわりさんを探そうと立ち上がった。


「オイ!」





どこからともなく声が聞こえてきた。

辺りを見渡すが、だれも居ない。


(おかしいな・・・。)

等と思いながら、行こうとすると、また

「オイ!」

と、声がする。


・ ・・しかし周りには誰も居ない。


「オイ!」

「オイ!」

  「オオイ!」


声は一つでは無かった。

気味が悪くなった。

見知らぬ浜辺で、人が居ないのに声がする。


 「オイ!」


・・・ん?


どうやら、声は足元から聞こえて来るようだ。

僕はゆっくりと足元を見る。


 一瞬、今目に映るものが何なのか理解出来なかった。

足元には、7センチくらいの小さな人間が数人立っていた。




 数時間後、僕は浜辺に座り、その小さな人達と話をしていた。

どうやらここは日本らしかった。

言葉は問題なく通じる。


彼らいわく、たまに僕のような大きな人が迷って流れ着くんだそうだ。


 彼らはそんな【大男】のために、山を切り開き、寝床を作ってくれているらしい。


 夜、僕はそこに案内された。


おそらく、彼らからすれば【ゴルフ場】みたいな広さだろうか?

一面芝生のスペースを、山の上に作ってくれていた。


布団も何も無かったが、なかなか芝生が柔らかく、気持良く寝れた。


 翌朝、小さな人たちと一緒に漁をする事になった。

ハンカチくらいの大きさの網を、海でバシャバシャとやるだけで、小さな魚が沢山とれた。

どうやらここでは魚も動物も、全部小さいらしい。

 ちいさな人たちは凄く喜んでくれた。

人に喜んでもらえるという事は、少なからず嬉しいことだと思った。



 
 そんな生活が一週間ほど続いただろうか?


僕の体に異変が起こる。

体が凄く重いのだ。

思えば、ここに来て魚しか食べていない。

小さい魚ばかりだ。


 木の実も、小さいブタや牛も、

この町の人たちは分けてくれない。


 僕は魚しか食べる事ができていなかった。


この体のダルさは、おそらく栄養が偏ってしまったものかもしれない。

Aがよく栄養の話をしてくれてたのでそんな事を思った。



・・・そしてその日の夜、

例の寝床で横になっているときにAのあの言葉を思い出したんだ。

『タマゴより、もっと体に良いもの、知ってるか?・・・それはね、人間を、丸ごと食べる事だ。』


 好奇心


  体調不良


複数の原因が重なりあったんだろう。

僕はその夜、遠くの村まで歩いて行った。


 どうやら、遠くの村の人間も、小さい人ばかりみたいだ。



高鳴る胸。


 僕はまず一番手前にある家の屋根をはがす。


その音で中の人は目を覚ます。

4人家族のようだ。

 まずは、声をだせないように頭を指で潰した。

声が通りそうな母親らしき人の頭から潰した。

続いて父親。

そして子供。


 その四つの遺体を左手に乗せ、

はがした屋根を元に戻し、僕は山へと戻って行った。


 きっと物音で、何人か村人が出てきたのかもしれないが、

僕は彼らから見たら大股なので姿を見られる前に去る事が出来た。


 寝床に戻り、その四つの小さな人たちを焼いて食べた。

小さい魚しか食べてなかった僕にとって、それらは癖こそあったが美味しく感じた。

 

 

 翌朝。

体が軽かった。

便もしっかりと出た。


 (Aの言ってた事って、本当だったんだな・・・。)

Aの話を聞いておいて良かった。



 おそらく、僕は【殺人】を犯したのだろう。

でも、あれだけ小さい人間だと、その実感がイマイチ薄い。

 

 それにしても、あの味は癖になる・・・。


僕はその日の夜も、別の村に行き、屋根を剥がし、5人ほど採取して来て食べた。


 そんな日が何日か続いた。

もう病みつきになってしまった。

人間無しの食生活なんて考えられない。


 今夜も僕は人間を採りに行く。


今日はあっちの村に行ってみよう。


 例の如く、一番手前の家の屋根を剥がす。

中には5人の老人が居た。


(なんだ・・じじいかよ・・・。)


やっぱり年寄りより若いほうが美味しいのだ。

でも仕方なくその5人の老人の頭を潰し、山に持って帰って食べた。

 少し味は落ちるが、やっぱり魚より美味しい。


腹を満たし、今日も眠りについた。



 翌朝


起き上がろうとしたが、体が動かない。


金縛りだろうか?


いや、多分ちがう。 なんだか様子が変だ。


僕の周りを、沢山の小さい人が囲んでいた。


 耳元の男が僕に言った。

「お前が、夜な夜な村をあさりに行く事はうすうす勘付いていた。 

長老を含む老人たちが・・・犠牲になってくれたんだ。 お前に痺れ薬を盛るためにな。」



 はめられたのか・・・?


昨日のあの家に集まった5人の老人。

 かれらの体に、痺れ薬を仕込んでいたと・・・?



 「おい、大きな兄ちゃん。知ってるか?」


耳元の小さな男が言う。


「 人 間 っ て 、 体 に 良 い ん だ ぜ ? 」


僕の体の肉が、次々と切り取られて行った。


 シビレ薬の効果か、痛みは感じなかった。

あぁ〜終わりかぁ〜。

そんな事を考えながらも、僕の体は少しずつ小さくなって行った。











 半分くらい体が無くなったところで、心は全て無くなった。



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