でびるーるすまん(6)

創作の怖い話 File.237



投稿者 でび一星人 様





【喫茶 魔り巣】を出た後、



私はでび呂さんと一緒にタクシーに乗り、10分ほど行ったところの怪しげな繁華街に辿り着いた。



「で…でび呂さん…

まだ昼真なのに、なんか怖い雰囲気ですねココ…。


きったないビルとかもイッパイあるし…」



「ヒョッヒョ…。

大丈夫大丈夫。

こんなのすぐ慣れますよ。

それに…私のお店は、全然キレイなお店ですから…」


「ほ…本当ですか…?」



私はでび呂さんに付いて歩く。


いかがわしいビルが立ち並ぶ景色。


そんなにいらんだろうってくらいいっぱいある【風俗案内所】。


そんないかがわしい通りを抜け、信号を渡る。



「でび呂さん、いかがわしいゾーンは抜けたみたいですね。


…でも…そういうお店ゾーンから抜けたところに、

本当にでび呂さんのお店はあるんですか?」



「…ヒョッヒョ…。

ええ。ご心配なく。


ほかの店からは少し離れに作ったんですよ。


高級感をかもし出すためにね…」




信号を渡り最初の角を曲がる。


「…あっ」


「ヒョッヒョ。あれです。


一目でわかったでしょう」


「わぁ…キレイ…」



目の前に広がる大きな建物。

まるで高級ホテルのようないでたち。

「こ、ここ、本当にそういうお店なんですか???」



「…ヒョッヒョッヒョ…。

ええ。


一見そう見えないでしょう?


とてもキレイなお店でしょう。


ここなら、アナタのようなキレイな女性でも気持ちよく働けるはずですよ」


「そ…そうかもしれませんね…」




【働く】…。


その言葉を聞き、私もそういう仕事をするんだと実感すると、


急に緊張感が身を包む…。



「ヒョッヒョッヒョ…。


桜田さん?リラックスしてください。


誰でも、最初はルーキーです。


はじめから何でもできる人間なんていません。


…焦らない事です。


一つずつでいいんです。


一つずつやっていけば、そのうち二つ三つとできるようになりますよ。


…それはウチのスタッフも重々に存じ上げております。



いきなり10を求めるスタッフはウチにはいませんよ。


だから、落ち着いて、一つずつ。

…ね」



「は…はい…」






店に入り、豪華なフロントを通り、奥の部屋に行くと、


店長という名札をつけた男の人が現れた。



でび呂さんはその店長に一言二言何かを話し、

店長からお金を受け取り、それをポケットに入れていた。


…そして私の元にやってくる。



「…桜田さん。

店長の方には話しておきましたから、


とりあえず今日は【体験】で実際に働いてもらいます。


な〜に。いきなりは怖いと思うので、最初の一時間くらい、店長から講習を受けられますのでご安心を。


…では、私は他に用事があるのでこれで…」



「えっ?でび呂さん行っちゃうんですか??」


「ヒョッヒョ…。

安心してください。

店長はやさしい人ですよ。

大丈夫です」


「そ、そうですか…はい…」

「では、頑張って下さいね!」


でび呂さんはそう言うと、自動ドアをこじあけ、外に出て行った。




「…君だね?今日体験で働く…えっと〜桜田院子さんっていうのは」



【店長】が私の後ろから声をかけてきた。


私は慌てて振り向く。


「あっ、は、はい。

さ、桜田です。

よろしくおねがいします」




「…ふむ。

アンタ、36歳か。

〜なるほど。聞いた通り、そうは見えないね。

…よし。28歳で行こう」


「…えっ?」



「君は28歳。いいね?

お客さんに聞かれたらそう応えれば良いから」


「えっ…は…はい…」


「…よし。

じゃ、とりあえず講習だ。

一緒にあの部屋に。

…あっ、靴は脱いでね」


「は…ははは…はい…」






その日。



私は結婚後初めて旦那以外の男性の下半身を見た。




「…おっ、桜田さん上手いじゃないか。

旦那とかで練習したりしてた?」


「んぐ…んぐ…い、いえ…はじめてです…んぐ…」


「ほぉ〜。これならもう十分いけるよ。


ちょっと混んで来たから、さっそく客つけよう。

ok。

じゃ、その浴衣来て待ってて。


お客さんが来たら、さっき教えた手順でね。

…もしわからなかったら、そこにマニュアルあるから」



「は…はははは…はいぃ…」



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