でびるーるすまん(3)

創作の怖い話 File.234



投稿者 でび一星人 様





『…奥さん!ちょっと奥さん!

何ぼーっと考え事してるんですか?

どうなんですか?


私の言ってる事、あたってるでしょう?』



「あ…当たってるわ…。

なんで解ったのよ…」



『ヒョッヒョッヒョ…。


そんなに難しい事ではありませんよ。


奥さんの心境は、奥さんの尻にちゃんと書いてありますから』


「し…尻??

何よ尻って!

普通顔に書いてあるとかじゃぁないの?」




『ヒョッヒョッヒョ。


まあまあ。


そこも広げなくていいじゃないですか。


後編で完結させないと怒られるかもしれないですから…』



「あ…あぁ…そうね。


ごめんなさい」



『ヒョッヒョ…。


さて、奥さん、


アナタは感謝される事に餓えていた。


…そこでアナタは感謝される為に、通販で買い物をしたり、

高い出前をとったりした…。


…その結果、これから払っていけないようなローンの額になってしまった…。


そんな感じでお悩みでしょう?』



…なんで…コイツなんでそこまでズバズバと…。

『ヒョッヒョ…。


私に隠し事は出来ませんよ。


ちゃんと全部、奥さんの尻に書いてあるんですから…。


…おっと奥さん、でも勘違いしないで下さいよ。

私は奥さんを責める為に、今こうやってお話してるのではありません。


私はね、


奥さんを救う為に現れたのですから』


…私を救う?



「ど、どういう事?」



恐怖心もあったが、私は【救う】という言葉に反応し、テレビに身を乗り出した。



『ヒョッヒョ…。

どうやら少し私に寄ってくれたみたいですね。

ギガ ウレシス』


「ちょっと!

ショコタンの真似とかいいから話進めてよ!

後編で終わらなかったら大変でしょ!」


『す…すいません…。


…ヒョヒョ…』



「笑ってないで話進めなさい!」


『は…はい…。


…と、とりあえずですね、


アナタのやってきた行動は、正式な【感謝を受ける行動】ではありません。


まずそれを理解してください』



…な…何ですって…?


私がしてきた事が、正式な感謝を受ける行動じゃないですって???



「ちょっとアンタ!


適当な事言わないでよ!!!


私はちゃんと感謝されてきたわよ!!!

いつもいつも、【ありがとうございます】って心のこもった言葉を沢山受けて!!!」

『ヒョッヒョッヒョ…。


…奥さん、アナタ本当にその言葉は感謝の言葉だと思っているのですか?』




「お、思ってるわよ!

何いいがかりつけてるの!!!?」



『ヒョヒョヒョン…。


言いがかりにとられてしまったのであればあやまります。


すいません。



…ですが奥さん、


アナタが受けたその【ありがとう】のうち、


果たして何割が本当のありがとうなんでしょうかねぇ…』


「…はぁ?


な、何が言いたいのよ」


『…奥さん…。

奥さんに【ありがとう】と言ってくれた人達を思い出してください。


彼らが奥さんに【ありがとう】と言った動機は、一体何だったのですかね…』




ど…動機…?




動機ってそりゃ…。


ものを買ってもらって…私に感謝して…。



『ヒョッヒョ…。


奥さんは大事な事を抜かして考えているんじゃないですか?


…奥さんに感謝の言葉をくれた彼らは…





その【ありがとう】と引き換えに、お金…給料を貰っているという事を…』

…給料…?お金…?




『ヒョッヒョ…。

奥さん、アナタは勘違いをしていますよ。


彼らは奥さんに感謝などしていません。


彼らにとって、感謝の言葉を発するのは仕事なのです。


その言葉と引き換えに、彼らは金をもらい、その金で生きているのです。


つまり彼らの感謝の言葉は、彼らが生きる為の術でしかないのです。


…そりゃ、中には心から感謝する純粋な人間も居ることでしょう。


…ですがそんな人間は一部です。


毎日毎日、業務用語で言葉を発しているうちに、


最初は魂が篭っていた言葉も、


ただの飾りの音でしか無くなって行くのです。



…わかりますか?奥さん、






奥さんが彼らに言われてきた【ありがとう】は、感謝の言葉ではありません。





あくまで、【ありがとう】という言葉なだけなのです!!!』








頭の中が真っ白になった。

…私が今まで受けてきた、私の心を満たす言葉【ありがとう】…。


…その言葉が、実は何の意味も無いカタチだけのものだっていうの…。


…そんな…ウソよ…。


…わたし…何の為にこんなにお金つかって…。


…本当は気付いてたわ…。



通販で買ってきたものが、そこまで良い物じゃないって…。


出前とってたてんぷらの油が、キャノーラじゃ無いって事…。



…でも…私は感謝されてると思ったから…。


感謝されたかったから私…。


私…


私…。




『奥さん…。

奥さんのやってきたこと、それは、






  感 謝 を 金 で 買 う 行 為  





…だったのですよ…。


…そんなんで、本当に心が満たされるはずありません…』




「そんな…私…私…」



気が付くと、


座り込んでいる私のヒザの上は大粒の涙の跡でいっぱいだった。



「うぅ…うう…」




『ヒョッヒョ…。


すいません奥さん。


私、ウソはつけないもので…図星とは言え、すこしキツい言い方になってしまいましたかね…。



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