裕史怪談(3)

創作の怖い話 File.231



投稿者 でび一星人 様





B作はそう言うと写真を鞄に収めて立ち上がった。



「・・・オレ、今日は帰るわ・・・。


なぁ。オレが何を言いたいか、解るか?


・・・来年もし、同窓会にオレが来なかったら・・・。


C夫、次はお前の番かもしれない・・・。


気をつけてくれ・・・。」



B作はそう言って帰ってしまった。















 更に1年が過ぎた。



高校二年の春休み。



同窓会にB作は来なかった。





C夫は震えていた。


裕史は恐る恐るB作の家に電話をすると、B作の母が出てこう言った。



「今朝・・・交通事故に遭いまして・・・」



B作の死体は左腕がちぎれた状態だったという。




裕史はその日1日、C夫を慰めた。



しかし、ありきたりな慰めの言葉しかかける事はできなかった。

高校三年になった。



裕史は同窓会以来、C夫に頻繁に連絡をするようになった。



理由はもちろん、あの写真の件が心配だったからだ。



「あまり気にするなよ。」

「たまたまだよ。」


そんなありきたりな言葉しかかけられなかったが、


C夫も一人で考えるよりマシだったのだろう。


日が経つにつれ、少しずつ元気が出てきた。





 裕史は夏休みを利用し、あの日写真を撮った場所を【探索】しに行ったりもした。



しかし、ハッキリとした理由はわからなかった。


特に何かがあるワケでもなく、あの写真に写った【灰色の老人の顔】の原因も解らず終いだった。




そして高校三年の春休みがやってきた。



大学進学が決まっていた裕史。



少し切ない卒業式も終わり、裕史の頭の中はC夫の身の安否でいっぱいだった。




 同窓会の日が近付き、裕史はC夫に電話をした。



「おい、C夫、あのさ、今年同窓会中止にしないか?


ほら、 【当日の朝】に、事は起ってるだろう?


だからさ、今日1日、お前は家に篭ってたらどうかなって。」

そう提案した裕史に対して、C夫は、


『・・・いや、やろうぜ裕史。


家に篭ってても、外に出ても、一緒な気がする・・・。


それより、お前の顔を見て安心したいよ。』



裕史はその言葉を聞き、なぜだか胸が痛くなった。




「・・・そうか。わかった。


でも、本当に気をつけて来てくれよな。」


裕史は切にそう願った。


『あぁ。 大丈夫。


家からさ、ずっとタクシーで行くよ。


お前に会うまで、1回も降りないから。』


「・・・わかった。気をつけて。」




裕史は電話を切り、待ち合わせの場所に向かった。



待ち合わせの場所で待つ裕史。



・・・時間が過ぎてもC夫は来ない。



裕史は胸騒ぎがした。


思わず公衆電話から、C夫の家に電話をかける。




 ジリリリリリリン・・・


    ジリリリリリリン・・・・



 ガチャッ



『はい、もしもし。 食田ですが?』


C夫の母らしき人が出た。


「あ、あの、C夫君の同級生の八木ですが、C夫君は・・・。」


『あぁ・・C夫の友達ね・・・ C夫はね、今朝・・・。』

ドクン


 ドクン



     ドクン



 ドクン


    

裕史の胸が高鳴る。





『・・・もう大分前に家を出たわよ? すぐにタクシーに乗って。

八木君と同窓会するって聞いてるわ。

きっと、道が混んでるんじゃないかしら?

この時間、国道は混むから。』





・・・ホッ




「そ、そうですか。わかりました。 どうもありがとうございます。」



ガチャリ




(よ、よかった・・・。無事家を出て・・・。)



裕史はホっとした。



待ち合わせ時間からはもう15分が経過していた。


タクシーが目の前を通るたびに裕史は車内に目をやった。



(・・・無事で居てくれよ・・・C夫・・・。)




待ち合わせから30分が経過した時だった。



「あ!C夫!」



前方からやってきたタクシーの中に、C夫の姿が見えた。



「お〜〜〜い!」


大きく手を振る裕史。

タクシーの中のC夫もそれに気づいたのか、少し照れくさそうに笑いながら小さく手を振っている。




タクシーがハザードランプを点滅させて、道路の脇に車を止める。


裕史もそれを見て、タクシーの方へと向かう。




(よかった・・・本当によかった!)



ここ数年、ここまでホっとした事はあっただろうか?


小学四年生の頃、危篤状態だった母が助かった時以来だろう。




タクシーのドアを運転手が開け、C夫がゆっくりと出てくる。


安全の為、この1年引きこもりぎみだった為か、C夫はずいぶんと太っているようだ。



(アイツ・・・中学の頃は痩せてる方だったのになぁ〜。)


裕史の顔に、笑みがこぼれた。





・・・その時だった。




C夫はヨロけて、その場に転んでしまった。



「アハハハ。何やってんだアイツ。 おっちょこちょいだなぁ。」

プップ〜〜〜〜〜〜!!!






クラクションの音が聞こえた。






「・・えっ?」






タクシーのすぐ後方に、


車とガードレールの隙間を猛スピードで走ってくるバイクが見えた。









バイクは倒れているC夫の首の上を通過した。



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