裕史怪談(2)

創作の怖い話 File.230



投稿者 でび一星人 様





中学三年、最後の春休み。


裕史には、仲の良い友達が三人居た。




名前を仮に【A人】【B作】【C夫】としておこう。



三人は、中学最後の思い出作りに、少し遠出をしようという事になった。


電車を乗り継ぎ、二つ隣の県までやってきた。


C夫の家は金持ちで、過去二回ほど家族でこの地に来た事があるという事だった。


C夫に案内されるように、裕史と二人はそれなりに楽しく観光した。




そして夕方。



「ホント、1日ってあっという間だな。」

「ほんとだなぁ。」


四人はそれぞれ名残惜しみトークをした。


「よし。記念に写真を撮ろう。」


B作は持ってきたカメラを掲げてそう言った。


「すげ!お前、カメラなんて持ってんの?」

「へへ。親父から借りてきたんだ。いいだろ〜。」



「どれ、まず最初におれが撮ってやるよ。」


普段から目立とうとはしないタイプの裕史が、まずはシャッター係をする事にした。



「は〜い、笑って笑って〜。 ハイッチーズ!」

パシャッ。





「OK〜。 じゃ、次おれが撮るよ。」


写真を撮り終わった裕史にそう言って、B作が近寄った。



裕史と二人が並び、今度はB作がシャッターを押す。



「はいっちーず!」



カス・・ カスカス・・・。



「・・・あれ?」


B作がカメラを見ている。



「どうした?」


「いや・・・なんかカメラの調子がおかしいんだ・・・。」





結局、カメラの調子はそのまま戻らず、裕史だけ記念写真無しのまま帰宅する事となった。


帰りの電車の中、裕史だけ少しテンションが低かった。






「これからさ、毎年、この時期に同窓会やろうぜ!」



四人は別れ際、そう約束して別れた。

1年後






高校1年生になった裕史は、同窓会の為にファミレスに来ていた。



(久しぶりだなぁ。 アイツら、元気にしてるかな。)


少し待っていると、


「よう!」


C夫がやってきた。


「おお!C夫!ひさしぶり!!!」

この四人で待ち合わせをすると、大体裕史が1番早く着き、C夫が五分くらい前に来て、

A人がギリギリに来て、B作が遅刻するというパターンなのだ。




「・・・そろそろ、A人が来る時間だな。」

「フフ。本当だな。」

二人がそんな事を話しながら待っていると、


「・・・よう。」


やってきたのはB作だった。


「おお!B作!!! あれ?待ち合わせ時間まだ過ぎてなけど、どうした?」


「・・・オイオイ・・・なんだよその皮肉・・・。」


「ハハ。お前も高校生になって、成長したって事だな。」


「・・・。」



裕史とC夫は、B作を楽しみながら皮肉った。



普段なら、こうしていじられると逆に喜ぶB作。


しかし、なぜか元気が無い。


「・・・オイ。B作どうした?」

裕史は心配して聞いた。

するとB作は、うつむき加減でこう言った。


「・・・うん。 あのな、驚かずに聞いてくれ。


おれも今朝知ったんだがさ・・・。

A人が亡くなった。」



「えっ?」   「えっ?」



裕史とC夫は固まった。


B夫は話を続ける。


「・・・今朝・・さ、オレ、A人と一緒にここに来ようと思って、電話したんだよ。


そしたらさ、A人のやつ、今朝家を出てすぐに、交通事故に遭ったって・・・。」




「・・・まじかよ・・・。」




楽しみにしていた同窓会は、いきなり重い雰囲気になってしまった。





 そんな重い雰囲気のスタートだったが、

せっかくこうして集まったのだから、三人は思い出話に花を咲かそうと話をした。



必死に場を和まそうとする裕史とC夫。


・・・しかし、B作だけはカラ元気すら出てこない様子。



「オイオイ。 どうしたんだよB作。 

・・・そりゃ、電話で直接そういうの聞いちまったから凹むのもわかるけど、せっかくこうして集まったんだしさ・・・。」


裕史は心配してそう声をかけた。



「・・・いや、そうじゃないんだ・・・。ちょっとな・・・。」


どうやら、B作は何か気がかりな事があるようだった。


それを察したC夫は、


「ん?何かあるのか?」


とB作に聞いた。



「・・・うん。」


B作は小さく頷いた。



そして、鞄から1枚の写真を取り出した。



「・・・あのさ、去年四人で行った【卒業旅行】で、裕史が撮った写真、覚えてるか? これなんだけど・・。」


B作は写真をテーブルに置いた。



「・・・うわっ・・・なんだこれ・・・。」



裕史とC夫はギョっとした。

まず、A人 B作 C夫が写っている写真の後ろに、灰色の老人のような顔が写っていた。



見るからに【心霊写真】とでもいうべき感じだった。



しかし本当に気味が悪い部分は他にあった。


まず、A人の両足が写っていなかった。


次に、B作の左腕。


もう一つ、C夫の首から上も・・・。




C夫は顔をしかめた。

「・・・何だよ、この写真・・・。 気持ち悪い・・・。」


B作はそう言うC夫に対して、


「・・・そうだよな・・・。 だからさ・・・オレ、この写真、お前らには黙ってたんだ。」







「・・・じゃ、じゃあさ、何で今頃その写真見せるんだよ・・・どうせならずっと黙ってたほうがC夫だって・・・」


裕史がそう言いかけた時だった。


それを遮るようにB作が写真に写るA人を指差してこう言った。



「・・・A人のヤツさ、交通事故に遭ったって言ったろ?


けっこうな激しい事故だったみたいで・・・。











両足がちぎれてたんだって・・・。」





「・・・。」


「・・・。」



裕史もC夫も言葉を失った。



→裕史怪談(3)へ



★→この怖い話を評価する



[怖い話]


[創作の怖い話5]