河童(3)

創作の怖い話 File.199



投稿者 でび一星人 様





「おお。社長かぁ。懐かしいなぁ。

あの社長は情に厚い人やったからなぁ。」


「・・・本当に・・・。

諦めさせるなら・・・今しか無いかもしれませんね・・・。」



「まぁ、まだ22歳やろ?娘と双子や言うてたやんな?

まだまだ焦る必要は無いとは思うけどな。

八木ちゃんも、あの仕事はじめたんが30前やったやろ?

そんなんは、いくらでもやり直しが利く。

心配なんは、心を壊してまうっちゅー事や・・・。

気つけたりや。ホンマに。」


「あぁ・・・本当にそうですね・・・。

やっぱり、百朗さんは昔からそういう気遣いが優れてますね。

おそれいります・・・。」


「はっはっは。

嬉しい事言うてくれるな。

ホラホラ、のめのめ。」


百朗さんはそう言うと、おれのコップにまた酒を注いだ。


「ひぃ・・・。も、もうそのくらいで!」


「何やぁ。八木ちゃん遠慮するなやぁ〜。」


「い、いえいえ、もう本当に・・・あ、それより百朗さん、

トイレって、どっちですかね?


トイレ行きたくなっちゃいました。」


「ん?おお。トイレか。


トイレはな、この部屋出て、右にまっすぐ行って、

突き当たりから外へ出れるから、


外へ出てさらにまっすぐ行ったところの離れにあるわ。」

「あ、ありがとうございます。

ちょっとトイレ借りますね。

・・・よいしょっと。」


 おれは立ち上がり、トイレに行こうとした。


「・・・あ、八木ちゃん。」


百朗さんが呼び止めた。


「・・・何ですか?」


「ん・・・。

あのな、

ウチのトイレな、

田舎で古いトイレなもんで、

ボットン式なんやわ。」


「・・・あぁ。平気ですよ。

おれも、小さいころはボットン式でしたから。」


「・・・そうか。

まずは大丈夫やな・・・。

あ、後な、

この辺・・・【河童】が出るんや。」


「・・・河童?」


「・・・そう。河童や・・・。」


「河童って・・・あの、お皿かぶってるやつですか?」


「・・・そう。皿かぶりや。」


「・・・あの、黄桜の?」


「・・・そう、黄桜や。」



「あっはっは。

百朗さん、おれを驚かそうとしてるでしょ?」


「・・・いや、そんなしょうもない事する歳と、もうちゃうで・・・。


・・・河童ってな、

なんで【河童】ってよばれるようになったか知っとるか?


 昔はな、トイレは川で済ませとったんや。


川にしょうべんしたり、

川にう○こしたり。


 ある意味自然の水洗便所やな。



 河童とは、読んで字の如く、

河(かわ)に住む童(わらべ)でな、

よく、そうやって川に用を足す人に、イタズラをしとったんや。」



「そ、そうなんですか・・・


・・・で、イタズラってどんな?」

「うむ・・・聞いて引くなよ。


川にう○こしようとしてる人、おるよな?

お尻出して。


そんな人にこっそり忍び寄ってな、





 尻に手をつっこんで、

 腸を引っ張り出すんや・・・。」



「ちょ・・・腸を・・・。」


「あぁ・・・そして引きちぎる・・・。


どうや?シャレならんやろ?」



「・・・なんだか、おなかとお尻のあたりが痛くなってきました・・・。」


「・・・そうか・・まあ、八木ちゃんも気つけてな。」



(気つけるってどうやって・・・。)









 ギィ・・・




   ギィ・・・。





 薄暗い廊下を歩き、トイレに向かう。




 それにしても百朗さん・・・。




こんな薄暗い怖い廊下を通らなきゃいけないのに・・・


なんであんな話するんだ・・・。





 ギィ・・・




 ギィ・・・








 チカッ・・・









 その時、外で何かが光ったような気がした。



パっとそっちを見るおれ。





・・・暗闇・・・。




 気のせいかな・・・。



なにやら、




二つの目が光ったような気がしたけど・・・。

ギィ・・・ギィ・・・




 廊下を歩き終え、俺は備え付けてあるサンダルを履き、外へ出た。

もうすぐ夏とはいえ、

夜の外は少し肌寒かった



 ザッ・・・




ザッ・・・





 サンダルが地面とこすれる音が鳴る。




外は真っ暗。




 トイレに着き、おれはトイレの電気のスイッチを探した。




「・・あった。これだろう。」


パチン。





・・・あれ?



明かりが点かない。




パチン パチン パチン。




何度かスイッチを押した。




しかし、明かりは点かない。



「な、なんだよ・・・こ、壊れてるのかぁ・・・やめてくれよ・・・。」





 パチン!パチン!





勢い良くスイッチを押すも、電気は点かない。



「うう〜〜仕方ない・・・。」



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