恐怖体験(6) |
創作の怖い話 File.182 |
投稿者 でび一星人 様 |
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「・・・なあ、父さん。なんで注射なんかうってもらったん?」 僕は当然の疑問を投げかけた。 「・・・んw」 父さんはどう説明するか考えているようだった。 「・・あの注射って、一体何なん・・・?」 僕は重ねて質問した。 すると父さんは静かな口調になり、 「・・・あの注射は、ペストのワクチンや。 もし感染してたら大変やろう・・・。 ネズミにかじられたんやから・・・w」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「いやぁ〜。 あの時は本当に痛かったよ。 ネズミが顔に乗ってたんだろうね。 光った目がやたらと大きく見えたのは顔の上という至近距離だったからなんだよきっと。」 モモマーは頬の傷をさすりながら言った。 「・・・あの・・・途中怖いんかなって期待?したんやけど・・・ 結局、 ただ単にネズミにかじられた痣って事か・・・?」 「・・ん?ああ。 そうなるね。 いや、むしろそうだよ。 当事はペストって怖かったからねぇ。」 ・・・モモマー・・・。 こいつは歳ととったとは言え、 所詮はモモ天の父親や! 激しくそう思った。 ピカッ! ゴロゴロゴロ・・・ 窓の外が雷鳴と共にまた光った。 モモマーとウチは窓を見る。 雨も大分強く降っているようや。 「・・・雨、やまないねぇ・・・。」 モモマーはテーブルに目をやり、お茶をすすりながら言った。 「・・・ホンマやなぁ・・・。」 ウチは窓を見ながら返した。 ピカッ! また稲光がした。 ウチは目を疑った。 窓の外に、何か動物のような陰が映ったからや。 目をこする。 もう一度窓を見る。 ・・・何も無い。 ・・・気のせいやったんかな・・・。 ウチもモモマーと一緒にお茶をすすった。 「鍋衣ちゃん、お茶、おいしいね。」 「・・・たしかにコレめっちゃ美味いわ・・・。」 モモマーの煎れたお茶はなぜか無茶苦茶美味かった。 その美味さは今日1日におこったあらゆる不快感を拭ってくれるような味だった。 【モモマーの戦争・恐怖体験】 完 モモマーの戦争の話を聞き終わったウチは、ふと棚に置いてある写真に目をやった。 写真には、若い頃のモモマーと、まだ5歳くらいのモモ天が映っていた。 「・・・なあ、モモマー。あの写真、モモマーと息子やんな?」 「ん、そうだけど?」 「・・・言いたくなかったらええんやけどな・・・モモマーの奥さんって、どないしたん?喧嘩して別れたんか?」 「・・・鍋衣ちゃん、気になるかい?」 「・・・え、まあ・・・な。 せやけど、無理やりには聞きたいと思わへんで。 もしよければ、教えてほしいかなってな。」 「・・・そう・・・。まあ、話してもいいんだけどね。」 モモマーはそう言うと、写真を手に取り眺めた。 ウチはそんなモモマーを見つめていた。 モモマーは目を瞑りしばらくじっとしていた。 そしてモモマーはポケットからサイフを取り出し、 そこから写真の切れ端を取り出してウチに見せた。 「・・・キレイな人やんか・・・。これがモモマーの奥さん?」 「・・・ああ。これが、僕の妻・・・典男の母だよ。」 モモマーはなぜか寂しそうにそう呟いた。 「・・・何や、いろいろワケがありそうやな・・・聞かせてくれるか?」 モモマーは目を瞑ったままイスに座りなおした。 「・・・聞かせたいのはヤマヤマなんだけどね・・・ 怖い話じゃないんだよ。」 「・・・?別に怖くなくてもウチはエエけど・・。」 「鍋衣ちゃんがよくても、コミュのメンバーが許してくれないよ・・・。」 ??? モモマーは何を言ってるんやろ・・・。 「な、なんやねん、コミュとかメンバーとかって・・・ワケがわかれへんわ・・・。」 「ハハハ・・・まだ鍋衣ちゃんは若いからね・・・。 僕らの住んでる世界は【コミュ】の中の1部分に過ぎないんだ・・・。」 ・・・コイツ、ちょっとボケたんか? ワケのわからん理屈をコネとる・・・。 「あ、そうだ鍋衣ちゃん。こうしよう。」 モモマーは手をポンと叩いて続ける。 「コメント欄に、モモマーの奥さんの事が気になるという声が、【20人以上】あれば、 続きのコメントで話すというのはどうだろうか?」 ウチはワケが解れへんけど、 「エ、良エんとちゃうかな・・・。」 と頷いた。 モモマーは急に目を開けて話し出した。 しばらく沈黙が続いていたので少しビクっとした。 「な、何やワケわかれへんけど、ようやく話す気になったんやな?」 ウチが聞くとモモマーは静かに頷いた。 そして昔を噛み締めるように、 ゆっくりゆっくりと語り始めた・・・。 「あれは・・・」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ― 僕が18歳の頃。 就職で東京に出て来た僕は、寮で生活をしていた。 現場で汗まみれになり毎日必死に働いたよ。 おかげで飯も美味かったし、よく眠れたね。 そうして二年ほど働いたある日、 20歳になった僕は現場から営業に配属されたんだ。 今までの生活とは内容が一変したよ。 毎晩先輩に連れられて飲みに行かされた。 翌日二日酔いで立っていられないくらい飲まされた時もあった。 先輩の口癖は、 「営業マンたるもの、いくらしんどくても這ってでも会社に来い。 這って来るのがムリならタクシーで来い。」 というものだった。 だから僕はいくらしんどくても会社に行ったよ。 でも先輩も経験してるからわかってるんだろうね。 あまりにしんどそうな時は早退させてくれた。 そんな時は決まって、 「よく頑張って出社したな。」 と、逆に褒めてくれるんだ。 ・・・そういう時代だったんだよ。 人の心にゆとりがあった。 あの頃はそういう時代だったんだ。 そんなある日、僕は先輩に連れられて【女の人と飲むお店】デビューする事となった。 緊張の中、暗い照明のお店に入る。 僕の胸は高鳴る。 →恐怖体験(7)へ ★→この怖い話を評価する |
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