恐怖体験(1)

創作の怖い話 File.177



投稿者 でび一星人 様





「ヘイ!ラッシャイ!」

「ちょwww鍋衣ちゃんwww寿司屋じゃ無いんだからwww」

「どっちでもエエがなモモ天、がっはっは。」

「ちょwwwその『モモ天』っていうのもやめてよwwwちゃんと店長って呼んでよねwww」


 

 うちの名前は【八木 鍋衣】

19歳 フリーター。

高校時代からバイトしていたこのコンビニで、卒業後もそのまま働いている。


「ちょwww鍋衣ちゃん、僕の話ちゃんと聞いてるのwww?」

そしてこの、やたらと語尾に【w】←が多いのが店長をやってる【百瀬 典男】。

39歳独身。

三年ほど前に脱サラしてコンビニで雇われ店長やってるクチや。

名字が【百瀬】で店長をやってるから、ウチは【モモ天】と呼んでいる。


「鍋衣ちゃんww鍋衣ちゃんってwww!」

「なんやねん!うっさいなあ!」

「そ・・・そんなに怒らないでよwww僕店長なんだよwww」

「お前が店長でも盲腸でもそんな事はウチには関係ない!

それより何や?何かウチに用事でもあるんか!」

「おww鍋衣ちゃん、上手い事言うねぇwww」

「え?そうか?上手かったか?いやぁ〜照れるわぁ〜。」

「鍋衣ちゃんwww単細胞だねwww」

「・・・。」



 こんな感じで、いつもモモ天と2人で勤務している。

モモ天は『人件費削減!』と上からキツく言われているらしく、

店長自らよくシフトに入っているので、この時間帯はウチと2人になる場合が多いんや。

かといって魅力もクソもない男なので、恋心が芽生える可能性は0中の0や。


「鍋衣ちゃんwwwちょっと本の整理してきてくれる?」

モモ天がレジにイスを持ってきてくつろいでいるウチに指図してきた。

「嫌や、モモ天がやってこいや。」

ウチはアゴで本棚を指す。

「ちょwww鍋衣ちゃん、かわいいんだから売り場に出てお客さんに見てもらわないと勿体無いよwww」

モモ天がいつもの如くニヤけながら言う。

「・・・しゃあないなぁ。」

たしかに、モモ天の言う通り、ウチを見に来てるお客さんもいるやろうから、

仕方なしに腰を上げ、本棚に歩いていった。


「鍋衣ちゃんwwwこれこれ、ついでに残ってる雑誌の数カウントしてよwww」

モモ天は在庫チェックじみたファイルを手渡す。

「なんでウチがそこまでせなアカンねん! 嫌や!めんどい。

整理はするけどそんなチェックは自分でやれや!」


「鍋衣ちゃんwww鍋衣ちゃんって字キレイだからさwww

そのキレイな指で書いた字のほうが皆喜ぶんだってwww」


そういう理由なら仕方ない。

ウチはファイルを受け取り、本の数かぞえもやる事にした。

「え〜っと、じゃろんが5冊に〜

ジョンプが3冊に〜

ニャップル通信が4冊に〜・・・。」



 順に本棚の本を数えてる時やった。



ドンッ


立ち読みしてる客にぶち当たった。

「エラいすんまへんなあ!お客さん。」

「・・・別にかまわないし、ぶつかるくらい。」

その客はPOPな感じでそう言った。

なんとなく気になったのでその客を見てみると、70歳過ぎのおじいさんやった。

おじいさんは端っこの壁にもたれかかりながら本を読んでいた。

【チュパカブラの生体】

(何や・・・けったいな本読んどるじいさんやな・・・。)

ウチはそんな事を思いながら、

「チュパカブラの生体が1冊〜」

と、本数え作業を継続した。


 その後もウチは本を数え続けていた。

数分ほどそうしていたやろうか。

突如さっきのじいさんが、

「・・・ちょっとお嬢さん。」

と、声をかけてきた。

「な、何やじいさん。」

じいさんがやたらと顔を近づけて声をかけてきたので弱冠ウチは後ずさった。

「・・・お嬢さん、さっき『チュパカブラ』って言ったよね? 興味あるの?チュパカブラ。」

おじいさんはじりじりとウチに近付きながら聞いてくる。

「な、なんやじいさん、ウチはチュパカブラかアレックスカブレラかしらんけど、そんなん聞いた事ないわ!

 じいさんが読んでるその本に書いてるから口にしただけやで!」

ウチが不気味さを感じながらじいさんにそう言うと、じいさんはピタリと止まり、

「・・・なんだ・・・そうなんだ・・・チェ。」

と、舌打ちをしてまた本を立ち読みし始めた。


このじいさんは一体何者なんやろう・・・。

『チュパカブラ』に対してエラい興味があるみたいやけど、何かあったんやろうか・・・。


 ウチはなんとなくこのじいさんを放っとけん感じがした。

「・・・なあ、じいさん。 その『チュパカブラ』って、なんやエライこだわってるみたいやけど、なんかトラウマでもあるんか?」

ウチがそう聞くとじいさんは本をパタンと閉じ、本棚に戻して、

「・・・いやいや。

別にたいした事じゃぁないよ・・・。

それよりお嬢ちゃん。

こんな老いぼれの事を気にしてくれてありがとうね。」

と言いウチの頭を撫でた。


「い、いや、そんなお礼言われるほどの事してへんけど・・・。」

ウチが顔を赤らめ、そう言ってる時。

「ちょっとwww鍋衣ちゃん仕事は順調www?」

モモ天がニタニタ笑いながら近付いてくる。

「な、なんやねん!サボってへんで!珍しくちゃんと作業しとるわ!」

ウチがそう言って雑誌をメモったファイルをモモ天に見せたときやった。

「・・・父ちゃん・・・w」

モモ天がフリーズした。

「は、は?父ちゃん?」

ウチはじいさんとモモ天の顔をキョロキョロ見回した。

「フフ・・・ひさしぶりだね典男。」

じいさんは笑顔でモモ天に歩み寄った。

「な、なんでこんなところに居るんだよwww父ちゃんwww」

モモ天が不思議そうな顔で聞いている。

「お前の事が心配でね。 様子を見にきたんだよ。

でも安心したよ。

立派にこんな店やってて。

それにこんな若い嫁までもらって。」

じいさんは何を勘違いしたのかウチの顔をチラっと見た。

「ちょ・・・ちょっと待ちー! ウチはモモ天なんかのy・・・」

ウチが誤解を解く為そう言い掛けた時、モモ天は急にウチの口を塞いだ。

「モゴ・・グ・・・な・・・モゴ・・なにすんねんモモ天!・・モゴモゴ・・・。」

暴れるウチの口を塞いだまま、モモ天はウチを後ろの方にやり、

「そ、そうだろ父ちゃんwww若くてキレイな嫁さんだろwww」

と、ニタニタ笑いながら言った。

(はーー!? な、何言うとんねんコイツは!)

ウチは誤解を解こうと必死にもがいたが、モモ天の力はなぜかめちゃくちゃ強く、その腕を解く事が出来なかった・・・。

 (鍋衣ちゃんwww!ワケは後で話すから、話をあわせて!!!おねがいwww)

耳元でモモ天がそう呟いた。

(な、なんでやねん!ていうか離せや!)

ウチもつられてヒソヒソ声でそう返す。

(鍋衣ちゃんおねがいww時給20円アップするからwww)

(わ、わかったで!)

ウチは正義の為に、モモ天の話に合わせる事にした。


「どうもお父様オホホホホ。」

(ちょっとwww鍋衣ちゃん、自然にやってよwww)

(お、おう。ス、スマン。馴れんもんでな!)



「・・・君たち、さっきから何ヒソヒソ話してるの?」

ウチとモモ天の怪しすぎるヤリトリを見ていたモモ天のお父んが怪しんだ顔で聞いてきた。



→恐怖体験(2)へ



★→この怖い話を評価する



[怖い話]


[創作の怖い話4]