Bad day(9) 出会い

創作の怖い話 File.16



投稿者 ストレンジカメレオン 様





当時、私はある一家惨殺事件の捜査に全力を注いでいた。

その一家は子供が三人いて、母親と父親の五人家族だった。

父親が仕事へ出掛けている間に事件は起こった…

その一家の母親と子供三人は刃物でズタズタにされ、殺された。

事件現場から金目当ての無差別殺人である可能性が高いことが分かった。

この不幸な事件に巻き込まれた一家とは…

私の家族だった…

この事件については仕事というよりも復讐という心持ちで全力をかけて犯人を追った…

私は犯人を許すことを出来なかった…

犯人を捕らえ次第、この手で殺してやろうと思い、捜査をしていた。

目撃情報や現場から分かるわずかな情報をもとに、少しずつ犯人を特定していった…

そしてある一人の男を容疑者として特定した。

しかし、証拠としては不十分だったため、早急には逮捕というかたちには至らなかった…

私はこの男が完全に犯人だと確信していた…

すべての情報と一致する男はこの男だけだった。

全てを失ったと思っていた私は、これ以上失うものはないと思い、決心をした。

直接、この男の家に乗り込み、私がこの手で男を始末しようと………

この決心が私の運命を変え、悪魔の手先となるきっかけになるとは、

この時、私に想像などつくはずがなかった。

決行の夜、私は天国の家族に手紙を書き記し、復讐の準備を整え、静かに皆が寝静まる時間を待った。

心臓が緊張と興奮で高鳴るを抑え、漆黒の闇の中へ私は一歩、踏み込んでいった。

そして男が住むアパートの一室にたどり着くと、その中に侵入しようとして、私は窓に手をかけた。

鍵がかかっていると思い、準備していたものを取り出そうとしたが、鍵は掛かっていなかった…

神が不幸な私に味方をしているのだと、私は信じた。

窓をそっと開け、私は中に侵入した…

この時、私は異様な空間に足を踏み入れてしまったいう恐怖感に襲われた。

何故、この感覚が私を襲ったかは分からなかったが、この直後、私が目撃するものは異常なものだった。

そっと奥へ私は部屋の中へ足を踏み進めると、生暖かい空気と悪臭を感じた。

その嫌な空気と匂いがする部屋に人の気配がするのを感じた…

私はその部屋のドアの目の前に立ち、静かに深く息を吸い、吐いた。

そして恐怖を自分の中にしまい込み、ドアに手をかけた…

この時、ドアと同時に私の悪魔の運命の扉も開いたのだ。

部屋には一人の男が立っていた…

静かに笑みを浮かべながら……

阿久津 雅樹との出会いである。

この男が後に、私がシンさんと呼び、崇める男である。

阿久津の足下は真っ赤に染まっていた…

私は暗闇の中、異臭を放つ元凶を見つけた…

阿久津の周りに散らばる肉片、臓器、そして生首………

そのバラバラにされている男は私が、自らの手で始末しようとしていた男だった。

「あなた、そんな物騒な格好してどうしたんですか?

あなたもこの男を始末しようとしてここに来たんですか…?

あっ もしかしてあなた…

宮本さんですか?」

阿久津の第一声だった……

「お、お前は何者だ!?お前がこの男を殺したんだな!!」

「やはり宮本さんのようですね。

私は………

悪を静かに始末する制裁者ですよ。

この男はですね、あなたの家族以外にも、多くの犠牲者を出してたんですよ。

そんな男は一刻も早く始末しないと次の犠牲者を出してしまうでしょ…」

「だからって……」

「だからって…何ですか?

今更になって、人を簡単に殺すなとか言うんですか?

あなたもこの男を殺すためにここに来たんでしょ?」

「それは、私の家族が………」

「知ってますよ、私情があって初めて人を殺す理由になるんですか?

私情が無きゃ、こういう男を放っておいて、あなたみたいな犠牲者が出るのを待ってろと言うんですか?

それははっきり言ってあなたのエゴですよ。

自分以外が犠牲者になるならどうでも良いって言ってるようなもんですよ。」

「そ、それは………」

「あなた、警察でしたよね?

私情を挟んで事件一つ一つに区別をつけていたら良い警察にはなれませんよ…

どうですか?あなたみたいな犠牲者をこれ以上出さないために私に協力しませんか?

死刑になってもおかしくない犯罪者が幸せに生きていて、

またいつかまた事件を 起こしてもおかしくない状況や死刑にされない残酷かつ異常な少年による犯罪…

それをそのままにしておいて良いのでしょうか…

あなたは家族を失って、全てを失ったと思っているでしょうが、あなたという存

在は残ってるんです。

残ったあなたに出来ることは、何ですか?

正義の味方である警察を仕事に選んだあなたならきっと分かるはずです。」

「……………………」

私が残りの人生をこの男に懸けてみようと思った瞬間だった…

しかし、阿久津が人を殺す理由は、正義のためではなく、阿久津自身の存在の神格化を目的とするものだった…

そして〔太陽の光〕はそのために創られた…

私は月光会による罪のない犠牲者が、着実に増えていることに気付き始めた。

浩一君達の一家が良い例だ。

浩一君と恵理君はなんの罪もないことも、二人がとても性格の良い人間だということも知っていた。

私は自分自身を否定をすることから逃れるために、その事実を見て見ぬふりをして来てしまった…

私は自ら死のうと考えたこともあったが、死ぬ前に少しでも出来ることがあればと思い、君達二人に近付いたんだ。

全てを話すと、宮本さんは再びオレ達の前で土下座をして謝った。

そして恵理が宮本さんに言った。

「私はあなたのことを信じます。

今まで私が集めてきた月光会の情報をあなたに託します。

この情報を月光会に、気付かれることなく、月光会の息のかかってない警察の上層部に届け出してほしいんです。」



  → Bad day(10)  進まない捜査



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