カウントダウン(1)

創作の怖い話 File.114



投稿者 でび一星人 様





ウチの名は八木 鍋衣。

珍しい名前で、読まれへん人もようけおるみたいやから、

一応説明しとく。【なべい】って読むんや。


 今年で中二になった。

中1で、とりあえずこの学校も占めてもうた。

ウチに敵はおれへん。

三年のヤンキー軍団も、ウチが廊下を通ると端っこに避けよる。


 「おう、鍋衣。またサボってるんか?」

 「・・ん?あぁ。タケシか。」


タケシは、保育園に通っとった頃、よく遊んどった奴や。

小学校は、【西小学校】と【東小学校】に分かれる

その関係で、別々の小学校に行く事になってたんやが、

中学でまた一緒に暴れる事が出来るようになった。


 タケシは、ウチが座ってる体育館裏の段差の横に腰かけた。

「鍋衣は、ここが好きやのう。 今日は何時間サボっとるんや?」

中学生離れした大きな体のタケシが話しかけてくる。

「う〜ん・・・。 三時間くらいかな。 次チャイム鳴ったら、昼飯やろ? そん時一回戻るわ。」

「三時間かぁ。 だんだん、サボリ時間増えるのぉ・・・。」

そう言ってタケシはポケットからタバコを取り出し。火をつけた。」

「・・・タケシぃ・・・。 タバコ辞めときぃや。 オマエ、野球部のエースやろ? 影響でるで。体力とかに。」


ウチはタバコがキライやから、煙を払いながら言った。

「はっはっは。 スマンスマン。 鍋衣はタバコ嫌いやったな。 体力は、大丈夫や。 鍛え方が他の奴らとは違うさかいにな。」


 タケシはそう言うと、煙がウチにかかれへんように体の向きを変えた。



 キーン コーン カーン コーン・・・


 昼のチャイムが鳴った。

「お、昼や。 ほなタケシ、ウチ、飯行って来るさかいに。 先公にタバコばれんように気ぃつけや。」

「はっはっは。 心配おおきに。 そんなヘマはせんから。」

笑顔で手を振るタケシに目で挨拶し、ウチは弁当を食いに教室へと戻って行った。

寒いので、セーラー服の上着の下から手を入れ、廊下を歩く。

すれ違う生徒は、皆ウチを避けるように端っこに避けてくれる。

楽でいいと言えば良いんやが、少し寂しくも感じる。

 避けへん奴と言えば、さっきのタケシと、双子の弟鎌司くらいのもんやろう。



 教室に入り自分の席に座ると、廊下を猛ダッシュする音が聞こえてきた。

ガラガラガラ!

教室の入り口を開ける音。

「な、鍋衣さん! すいません!遅くなりましたぁ!」



「おう。モヤシ。 あったか?」

「はい。な、なんとか買えました!」

この男のアダ名はモヤシ。

例の如く、モヤシのように細いからそう呼んでる。

モヤシは言わば、ウチの【パシリ】や。

弁当だけで足りへんウチに、いつもこうやってヤキソバパンを買ってきてくれる。


ウチはモヤシからヤキソバパンを受けとった。

「いつもおうきにな。モヤシ。」

「い、いえいえ。辞めてくださいそんな・・・。」

 モヤシとは中1の頃に出会った。

 帰りしな、三人くらいのチョイ悪に囲まれてイジメられてるモヤシをウチが見つけた。

 チョイ悪共が帰ったあと、ウチはモヤシに「やり返さな、いつまでもイジめられるぞ?」

と声をかけたんや。

せやけどモヤシは、一向に仕返す事はしなかった。

見かねたウチは、モヤシをパシリにした。

ある意味ウチの【側近】になったモヤシは、他のやつらにイジメられる事もなくなった。

 そしてモヤシを側近にしてみて思うんやが、

コイツはほんまに気の効くやつで、あらゆる部分で助かっている。


 ウチは一人で弁当とヤキソバパンを食う。

他の生徒はビビって近寄らへんからや。

モヤシも、隅っこに行って一人で食う。

ハミ子やからや。



 弁当を食い終わり、ぼーっとしていると、午後の授業の鐘が鳴った。



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