卒園式

創作の怖い話 File.101



投稿者 でび一星人 様





「・・・え〜みなさん。 卒園おめでとう。

皆さんは、これから小学校に行き、やがて社会に羽ばたいて行く事になるでしょう。

その時に、今からする話を思い出して下さい。

世の中には、沢山の【荒らし】が居る事でしょう。

その【荒らし】が一番喜ぶ反応を知っていますか?

それは、「やめろ」とか、「このトピ削除して下さい」等、【相手をしてもらえる事】です。


では、一番【荒らし】がされて嫌な反応を知っていますか?

それは、【素無視】や【無反応】です。

これをしばらく続けていくと、

荒らしは、無反応相手に荒らす事となります。

いうなれば一人しかいない部屋で、一人で踊り続けるようなモノです。

自分がその立場ならどうですか?

そのうち飽きますね。


元々、【荒らし】とは心の弱い人間なのです。

だから誰かに相手をしてもらいたいのです。

相手にされなければ、相手を探してまたどこかに巣立って行く事でしょう。


最後に、

我々は、荒らしに対して感情的になるのでは無く、

【かわいそう】という気持ちで、暖かく見守ってあげるべきなのではないでしょうか?

無反応という形で・・・。」



・・・はっ。

私の名前は 八木 沙織。

今日は娘&息子の卒園式。

ちなみに双子。


永い永い園長の話を聞いているうちに眠ってしまったようだ。

ぜんぜん話、聞いてねぇ・・・。


 高齢出産だったために、娘&息子は五歳なのだが、私はもう49歳・・・。

周りのお母さんは若い人ばかり。

たまに、「おばあさまですか?」って言われてカチンとくる。


「こうてーいのーすみにー・・・」

息子&娘が卒園式の歌を歌っている。

ちらほら、周りのお母さんの涙が伺えた。

しかし私は泣けない。

こんな歌では泣けない。

尾崎レベルで無いときっと泣けない・・・。




「おかああああああああん!」

式が終わった・・・。

娘のなっちゃんが元気に駆け寄ってくる。

元気すぎて飛びついてきたので、ヒラリと身をかわしたらおもいっきり転んで膝をすりむきやがった。

ふっ。強く育つんだよ。我娘よ。


 「八木さん・・・。」

誰かが近づいてくる。


見ると、娘&息子の担任だ。

担任は涙を流しながら話しかけてきた。

「とうとう卒園ですね・・。 本当におめでとうございます・・。」

もう、ボロッボロに泣いている。

・・・無理も無い・・・。

この保育園設立史上最悪の問題児と言われた娘が卒園するんだからね・・・。

・・・先生、ごめんよ・・・。



先生と、腹の内を見せ合わない会話をしていると、トコトコと息子のかーくんが歩いてきた。

「・・・お母さん、あっちでタケシ君と砂あそびしてきていい?」

卒園式が終わり、午後三時くらいまではグラウンドを開放してくれているので、

それまでは自由に遊んで良い事になっている。

「うん。いいよ。遊んどいで。」

私はニコっと笑ってかーくんの背中をぽんっと押した。

かーくんは勢いよく砂場の方に走っていった。


・・・息子も、本当に活発になってくれた・・。

まぁ、他の子に比べたら大人しいほうだが、4歳くらいまでは本当に超根暗系だったから・・・。



「オカン!一緒に遊ぼうや!」

ん? 見ると、さっき転んだなっちゃんが復活して私を誘っている。

「何?何して遊ぶの?」

私が聞くと、

「ジャングルジム行こう!オカンが上のぼって、パンチラゴッコやろうや!」

ゴンッ


娘の頭にタンコブが出来た。


「ほら!つまんない事言ってないで、適当に遊んどいで!」

「いでで・・ほぉ〜い・・。」

娘は頭を押さえながら校庭に歩いていった。


見ていると、娘の周りに沢山の男の子が集まっている。

これは、娘がモテる為のものでは無く、【ガキ大将】だからだろう・・・。

私に似ているから、けっこう美人なはずなんだが・・・。



ワイワイとグラウンドで遊んでいる子供を見つめていると、ある事に気づいた。

木のところで遊んでいる子供たちが、なにやら短い白い棒を振り回している。

なんだろう?あの棒・・?

 丁度娘もその棒を振り回して遊んでいたので、目が合った時に手招きして呼んでみた。

駆け寄ってきた娘に、

「それ、なぁに?」と聞くと、


「あそこの木のところ掘ったらな、いっぱい出てきてん。」

という。

「ふ〜ん。何だろうねぇ、これ・・・。」

と言ってその棒を見た時にギョっとした。

長さ30センチほどのその棒は、両端が少し太く、






人間の骨のような形をしていた。



「ちょっと先生!!」

私は先生を呼び、棒を見せた。

20代そこらの先生もどうしていいかわからず、パニックになっちまったので、私は園長室に乗り込み、棒を見せた。

 園長はビックリした様子で、数人の先生にすぐさま指示を出し、

棒を子供たちから回収させ、警察に電話したようだった。

 ちなみに先生が子供たちから棒を回収しに行ったときに付いていったのだが、

子供たちは白いイビツな形のボールを蹴って遊んでいた・・・。






 卒園式のグラウンド開放は、すぐさま中止となり、

残っていた保護者や子供たちは警察に話を聞かれるまで園に釘付けにされた。


 埋まっていたのは察しの通り人骨で、白骨化したものでは無く、

骨だけの状態にして埋められた比較的新しいものだという事が後日警察に聞いてわかった。






 ゾっとしたのは、その骨を埋めた犯人が、30代半ばで無職の、園長夫妻の息子という事だった。





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