DV(1) |
人間の方が幽霊よりも怖い話 File.4 |
投稿者 でび一星人 様 |
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「沙織、結婚しよう。」 林田さんが、私に言った。 怖い・・・。 断りたいが、断れない・・・。 私はゆっくりと頷いた。 「・・ほっ。よかった。」 林田さんが微笑んだ。 一体いつからこうなってしまったのだろう? いつから私は林田さんに脅えるようになったんだろう・・・。 林田さんと私が付き合い始めたのは、今からちょうど2年前。 本当に偶然だった。 昔、こんな田舎町では無く、私は東京で働いていた。 そのときに同じ職場だった林田さんと、まさかこの町で再会するなんて夢にも思わなかった。 数回食事に行ったりするうちに、私と林田さんは付き合うようになった。 恥ずかしながら、私は30になるまで男の人とお付き合いをした事が無かった。 林田さんは初の彼氏ということになる。 林田さんは本当に優しかった。 レディーファーストという、最近ではあまり使わないような言葉がぴったりの人だった。 付き合って半年が経った頃だった。 林田さんが「家を買うので、同棲しないか?」と言ってきた。 母にも相談したが、「ウチからそんなに遠く無いし、もう30なんだから自分の好きなようになさい。」 といってくれたので、私は林田さんと一緒に暮らす事に決めた。 その頃の林田さんは仕事も順調で、ここらへんのスナックやラウンジ数店を任されていて、 26歳にしてそこそこ稼いでるようだった。 そして同棲生活が始まった。 最初は毎日が新鮮で、とても楽しいものだった。 一応私もそのころは仕事をしていたから、家事との両立は大変だったが、優しい林田さんの為だから頑張れた。 そんな優しい林田さんが、最初に怒ったのは、同棲を始めて1ヶ月ほど過ぎた頃だった。 私は病院で栄養士をやっていたのだが、 その時、院内基準といわれる、【1日に栄養をとるために、 どういう食材をどれくらいつかったらいいか?】みたいなルールが改定された。 つまり、今までサイクルで回していた献立が使えなくなるという惨劇が起こったのだ。 毎日私は残業して、せっせせっせと献立を作った。 そんな日が何日か続いて、ある日家に帰ると林田さんが玄関でまちぶせしていて、 「・・・最近遅いよな? 本当に仕事?」 と聞いてきた。 「仕事に決まってるじゃない!何?疑ってるの?」 と、私もムっとしたから言い返したんだけど、 「逆ギレすんじゃねえ!」 と、怒鳴り返された。 林田さんが怒鳴るなんて、初めてのことだったから、私は黙ってしまった。 ハッとしたのか、林田さんは、 「ご、ごめん・・。心配だったからつい・・・ごめんな?」 って、謝ってきた。 【怒鳴られた直後に謝られ効果】で、私はその後何も言えなかった。 翌朝、一緒に朝食をとってる時に、 「・・なぁ、沙織?仕事さ、辞めて、ゆっくりしたらどう?」 と、林田さんが言ってきた。 「でも・・。今せっかくいろいろ解ってきて充実してるところなのに・・・。」 「・・いや、おれはさ、沙織の体が心配なんだよ。 毎朝早くから、夜遅くまでさ。」 「う〜ん・・。 でも、ごめん。 私はやっぱり今は辞める気は無いから・・・。」 林田さんは、ちょっとムっとした感じだった。 「・・そう。わかった。」 その日は夜家に帰ってきても、一言も会話をしなかった。 その日を機会に、林田さんが私に対する態度はだんだんとキツクなって行く。 少し部屋が散らかっていると、怒鳴るようになった。 洗濯物をたたまずにしばらく置いていても、 食器を洗おうと浸けているだけでも、「早くあらえ!」と、ののしられるようになった。 元々O型で少々ズサンな所のある私にとって、そういう部分は山ほどあった。 最初は流してそれなりに対応していたのだが、 日が経つにつれて、【何をいわれるかとビクビク】するようになってしまった。 いつどこをツッコまれるのか、怖くなってしまったのだ。 同棲を始めて半年が経った頃。 林田さんに初めて暴力を振るわれた。 お風呂に少し、垢アカが残っているという事だった。 いきなり、リビングでくつろいでる私を林田さんは担ぎ上げた。 そしてそのまま、浴槽に放り投げられた。 「・・ねえ?これ、見える?ねえ?アカ、残ってるよね?ねえ?掃除もできないの?」 林田さんは、私の頭を持ち、何度も何度も浴槽に沈めたり、上げられたりされた・・・。 暴力がエスカレートするのは、早かった。 三ヶ月後には、私の体は痣だらけになっていた。 今までは【怒鳴る】だったものが【暴力】に変わった感じだ。 林田さんが何かを言って、逆らうと必ず暴力を振るわれた。 何を言われても、何も言い返せないようになってしまった。 そんな生活のため、私は体調を崩しがちになり、仕事もよく休むようになった。 ある日、担当の営業さんから、 「山岸さん・・。悪いけど・・な、 君のこの出勤状態やと、皆が迷惑するんやわぁ・・。」と言われた。 ・・・【自己都合による退社】を余儀なくされた。 会社を辞めて、林田さんは凄く喜んでくれた。 その日は機嫌も良く、何もされなかった。 私は、これで林田さんの暴力も無くなるだろう・・・良かった。仕事辞めて・・・。 と思っていた。 翌朝、前日飲んだお酒のせいで、起きるのが遅れた。 私が起きると、既に林田さんは起きていた。 (殴られる・・・。) 林田さんは、私が先に起きていないと怒るのだ。 林田さんは、ガスコンロのところに立って、何か作ってくれてるようだった。 「・・お、おはよぉ・・・。」 恐る恐る、私は挨拶をした。 もしかしたら、仕事を辞めたから、もう朝遅くても殴られないかもしれない・・。 朝食を作ってくれてるんだ・・・。 そういう望みもあった。 でも、甘かった。 林田さんは、ガスコンロで針金のハンガーを焼いていたのだ。 私の叫び声が家中に響き渡った。 →DV(2)へ ★→この怖い話を評価する |
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