憑かれた出張(2)

摩訶不思議な怖い話 File.159



 投稿者 スナフキン 様





北海道旭川在住です。

これは10年前の11月雪がちらほらと降り始めた頃の話です。

当時私は2t箱車のトラックドライバーをしておりました。

道東担当で毎週1泊2日で決まったルートを走るルートセールスってやつです。

1日目の帯広、2日目の釧路と何事も無くルート営業を終えて夕方、旭川に向け走り出しました。

道東の帯広・釧路は北海道では雪が少ない方で初冬の11月は殆ど雪に当ることはありませんが

私の住む旭川は道内でも有数の豪雪地帯・・・

出張の帰りは最短ルートの大雪山を越える道で帰っていたので来た道とは違い

山に近づくにつれ雪が降り出し走るほどにその降り方も激しさを増していきました。

これでも道産子のはしくれトラッカーです。

多少の吹雪位は何てこと無いのですがシーズン初めの雪と言うこともあり慎重に車を走らせていました。

デフロスターを効かせていたせいか車内が暖かく眠気が襲います。

窓を開けて換気をしたり一人なのをイイことに大声で歌ってみたりして眠気と戦いましたが

結局勝つことは出来ず仮眠を取る事にした私は2Km程先にある○又という地区にある

「青少年研修センター」(正式名称は不明)みたいな所の駐車場を目指しました。

良く小中高生が宿泊研修等で使うアレです。

駐車場にはコカ・コーラの赤い自動販売機と緑色に怪しく浮かぶ電話BOXがあることを

毎週走る私は知っていたので「とりあえず着いたらエメマンと仮眠取るから

直帰するって会社に電話だな」などと考えていました。

携帯は持っていましたが何せ当時の北海道では人里離れた山の中はすぐ圏外だったので・・・・

その「○又」っていう所はその昔は炭鉱で栄えていましたが閉山後は

一気に過疎化が進み住民は数える程、実際に研修センターの前後3Km位は民家も無い地区です。

更に裏道的な要素満開の山道ですので夜になると車も殆ど走りません。

駐車場に着き会社に電話をして温かい缶コーヒーを買った私は寒くて走って車に戻りました。

車内はデフロスターのお陰で暖かく缶コーヒーの温かさが何故か更なる眠気を誘いました。

横になりどれ位の時間が経ったのでしょう。

多分、10〜15分位の仮眠だったと思いますが

大型トラックが走り抜けた音で「ビクッ」となって目が覚めました。

トラック乗りなら理解してくれると思いますが車内での仮眠中って外の車の音に

過敏に反応してあたかも居眠り運転をしていたかの様な

錯覚に陥り慌ててブレーキを踏む右足に力が入ることがありますよねw

正にアレですw

ところが「ビクッ」と力が入った瞬間に目は覚めているのに身体が動きません!

いきなりの金縛りです。

いつも目だけは動くので辺りを見渡しました。

3方の窓が全て真っ黒で街灯の光も降っている筈の雪も見えません。

何だか寒いと思ったら、掛けていた筈のエンジンも止まっています。

「これはちょっとヤバくないかぁ」

そう思った瞬間、真っ黒なフロントガラス

に肩から上の人の姿が一つ・・・また一つ・・・ドンドン増えていきます。

老若男女様々な人たち・・・

正確に数えてはいませんがフロントと左右の視界に入るガラスには20体以上の姿が見て取れました。

そして皆、無言無表情のまま右手で手招きをしているのです。

全ての目線と目が合い逃げ場も無い私は目を閉じ心の中で必死にお経を唱えました。

お経といってもただ「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」

と・・・

暫くするとセルも回らず突然エンジンが掛かりました。

それと同時に金縛りも解け「助かったぁ〜〜〜」と思い身体を起しました。

しかし彼らはまだソコにいて私を悲しそうな目で見ています。

手招きはもうしていませんでした。

「一体何なんだよぉ〜〜〜」と硬直していると・・・・

「ごおぉぉぉぉ〜〜〜」「ガラガラガラガラガラ」「ゴトンゴトンゴトンゴトン」

地響きのような何かが崩れるようなそんな大きな音が頭の中で響き渡り

それとほぼ同時に彼らの悲鳴やうめき声が耳や頭の中、体中に響き渡りました。

しかしそれは一瞬の出来事で声は徐々に小さくなっていきそれにリンクして

彼らもまた小さくなって雪の中へ消えていきました。

私は速攻で車を駐車場から出し旭川に向けて走り出しました。

もう眠気など微塵もありませんでした。

私は毎週その場所を通ってはいましたがその地で過去に何が起きたのかなんて判りません。

そんな私に彼らは何を言いたかったのかは今となっては知る術もありませんが・・・・

私の色んな霊体験の中で「恐怖」を一番感じた出来事でした。

やっと携帯の圏内に入り嫁に電話を入れました。

私「玄関に塩なぁ」

嫁「はいは〜い」

こんな会話をもう25年やっております。




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