やる夫の防犯カメラ

摩訶不思議な怖い話 File.153



投稿者 じょにお 様





「………だから、本当なんだお!なんでやらない夫は信じてくれないんだお!」

自宅玄関前にて、やる夫は電話先の友人に向かって喚いていた。

「最近、やる夫の部屋がおかしいんだお!大学から帰ってくると、台所のものが動いてたり、

ゴミ箱に捨ててあったものが無くなってたり…。なんだか気持ち悪いんだお!」

そう言うと、がちゃり、と家のカギを開け、やる夫は玄関から部屋の入口まで入っていった。

「………まぁ、現実主義者のやらない夫に話で信じてもらおうとは思ってないお。

だから、今日は部屋の入口に防犯カメラを仕掛けといたんだお。

これを見れば、何が起こってたか一目瞭然だお!

じゃあ、また後で電話するお。」

友人に別れを告げ、電話を切ったやる夫は、

部屋の片隅に取り付けられたカメラに手を伸ばすと、中のICチップを取り出した。

1DKの部屋の中を見渡すと、やはり、何か違和感がある。

早速、パソコンにUSBチップを接続し、映り始めた部屋の様子を見た。

しばらく見ていたが、ただ平凡な部屋の風景が映っているだけだった。

「……やっぱり、やる夫の気のせいだったかお?ちょっと早送りして見てみ…」

そう言いかけたその時。

画面の中に、人影が現れた。

見ると、それは不気味な女だった。髪は長くボサボサに伸び、青白い顔にギョロギョロとした眼球。

まるで般若のような顔つきをしたその女は、手には大きな出刃包丁を握っていた。

その人影は、やる夫の部屋に入ってくると、呪いの言葉を呟きながら、

台所や机の上のものをいじったり、ゴミ袋を漁ったりしていた。

「…なんだお、こいつ…。」

あまりのことに言葉を失うやる夫に構わず、

画面の中でその女はクローゼットを開けると、その中に入っていった。

「…じょ、冗談じゃないお!早く警察に通報しないと!このカメラがあれば、信じてくれるはずだお!」

そう言って、やる夫が携帯電話に手を伸ばそうとした時。

画面の中に、もう一人、人影が入ってきた。

『……入口…防犯カメラを…といたんだお…。

…れば、…が…こってたか……瞭然だお!じゃ……電話するお。』

そう言って、その人影がカメラに手を伸ばすと、そこで映像はぷつり、と止まっていた。



やる夫の背後で、何かがギィと開いたような音がした。




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