ネットのオフ会

摩訶不思議な怖い話 File.151



 ネットより転載





ネットで知り合った8人の若い男女がオフ会をやる事になった。

殆どがリアルでの面識は無い者ばかりで多少の不安もあったが、

結局、みんなで集まって遊園地で遊ぼうという事になった。

そして当日になり、待ち合わせの場所に次々と参加者が集まってきたが、

Aという名前の男がなかなかやって来ない。

仕方がないので7人で行こうかという事になった時、

いつの間にか1人の若い男が近くにいるのに気づいた。

そこで、もしかしたらと思い、声をかけると、

「じゃあ、行きましょうか」

そう言って彼は立ち上がった。

やけに不自然な言動だったが、その時はみんなじれていて、たいして気にも止めなかった。

お互いに簡単に自己紹介をした後、みんなで遊園地へ入り、最初の内はぎこちなかった彼等も、

やがてワイワイと賑やかに遊ぶようになったが、Aだけはどこか打ち解けないところがあった。

普通に話はするし、他の人に話題を振られても反応はするのだが、

どうも相手を見下して馬鹿にしてるような雰囲気があった。

チャットやBBSでは、もっと積極的に話を盛り上げるキャラだったはずなのに、

そのリアルでの性格のギャップにみんな不審を抱いていた。

しかしネット上でもAは自分の事だけはあまり語らなかったので、

一体どういう人物なのか誰にもよく分からなかった。

その為、一度は盛り上がった場もなんとなくしらけてしまい、

日が暮たこともあり、今回はこれでお開きにしようという事になった。

ところが、それぞれが別れて帰るという時になると、

「僕と同じ方向へ行く人がいたら車で送りますよ」

そうAが言い出した。

殆どの人は電車で来ていたが、Aは車で来ていて、近くに停めているらしかった。

確かにこれまでのAの冷めた調子には気に食わないところもあったが、

彼の言葉に甘えれば電車賃がタダになる。

結局、Tという男と、Sという女がAの車に便乗させてもらう事になった。

こうして初対面3人の夜のドライブが始まった。

Aの車は中古らしいが、かなり手入れがいきとどいていた。

TとSは後部座席に座りAの運転を見守っていたが、

Aは変にかっこつける事もなく、安全運転を心がけていた。

車はやがて郊外に入り、片側二車線の道に入った。

まだそんなに遅い時間でもないのに、彼等の乗った車以外はほとんど無い。

窓の外には明かりがほとんど見えず、時折ガソリンスタンドや自販機の光が見えるばかりだ。

車内でTとSはたわいない雑談をしていたが、

Aは自分からは何も喋ろうとはせず、時々話を振っても軽く受け答えするだけだった。

窓の外は暗い林がずっと続いている。

よく見るとたくさんの地蔵が並んでいる。

ライトの光に浮き上がるそれはひどく異様だった。

頭が酷く欠けているもの、

口に亀裂が入って不気味に笑ってるように見えるもの、顔が真っ二つに割れているもの・・・

1つとしてまともなのが無いのである。

異様な光景に気づいたTとSは気分が悪くなり、さらに何故か嫌な予感がした。

「この辺りは結構出るそうですよ」

珍しくAが自分の方からボツリと言った。

「・・・出るってなにが?」

「出るんだそうです」

「・・・だから、何が?」

Tが尋ねてもAは何も言わない。

「あのう、この車、さっきから同じところを走ってませんか?」

窓の外を見ていたSが言った。

「ほら、あのガソリンスタンドと自販機、さっきも通りすぎましたよね」

確かに彼女が指差す先にはそれらの明かりが通りすぎてゆく。

「そんなことはないですよ」

答えたのはAだった。

抑揚のない棒読み口調だった。

「この道路は一本道ですからね、曲がってもいないのに同じところは走れませんよ。

郊外の道なんてみんな似てますからね。気のせいですよ」

Aは初めてと言っていいくらいペラペラと喋り、最後にヒヒヒッと低く笑った。

その笑い声を聞くと、TもSもそれ以上何も言えなくなった。

暫く沈黙が続いた後、Aは手をのばして何やらゴソゴソやるとテープを取り出した。

「何かかけましょうか」

Aはテープをカーステレオに押し込んだ。

ところが音楽が流れてこないのである。

2、3分たっても、まったく何も。

沈黙と圧迫感に耐えかねたTが口を開いた。

「・・・何も聞こえないんだけど」

「・・・・・・」

「・・・ちゃんと入ってるの?」

「・・・・・・」

「・・・ねえ?」

「聞こえないでしょう?なんにも」

「・・・ああ」

「深夜にね、家の中でテープをまわしておいたんですよ。

自分は外出してね。家の中の音を拾うようにテープをまわしておいたんです」

「・・・なんでそんなことしたわけ?」

「だって、留守の間に何かが会話しているのが録音できるかもしれないでしょ」

「・・・何かって・・・なんだよ?」

「・・・・・・」

Tは初めて相手が答えなくて良かったと思った。

そして、それ以上Aと会話してはいけないとも思った。

するとSが突然悲鳴をあげた。

窓の外にはまたあの不気味な地蔵群が並んでいたのだ。

「おい、とめろ!」

Tが叫んだが、Aは何も言わない。

「 と め ろ ! ! 」

再びTが叫ぶと、静かに車は止まった。

TとSは転がるように車から降りた。

車はすぐに再発進して遠ざかっていった。

残されたTとSが辺りを見まわす。

・・・と、2人は顔を見合わせて顔面蒼白になって震えた。

そこには石の地蔵など無く、それどころか、彼等が遊んだ遊園地のすぐ近くだった。

一本道をずっと走ったのに、どうやって戻ってきたのか全く分からなかった。

それだけではなかった。

後で他の参加者に連絡を取ろうとしたら、

なんとAは時間を間違えて待ち合わせの場所へ来て待ちぼうけを食らい、そのまま帰ったといういうのだ。

だとしたら、オフ会に参加したAを名乗るあの男は一体何者だったのか?

後日、Tはほとんど同じ道をたどる機会があったが、道路の何処にも石の地蔵など無かったという。




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