霊感が強い妻

摩訶不思議な怖い話 File.146



ネットより転載





ちょっと仕事帰りに、一杯引っ掛けて帰った。

その日は、妻はパートに出ていて、夜10時位までは帰ってこない。

早めに仕事も片付き、帰途に就いたが、

家で独りで帰りを待っているのもつまらないと、会社の近くの呑み屋に寄ったのだ。

家に着いたのはだいたい夜9時半頃だった。

玄関の鍵を開ける。

自宅の玄関のドアは二重ロックで、

普通の鍵の上に、ピッキングでは開錠不能の外国製の鍵がついている。

因みに、国内では、合い鍵の製造も不可能だ。

二つの鍵を開け、ドアを引く。

程なく、ガツンと手応を感じた。

ドアが開かない。

よく見るとドアチェーンがかかっている。

おかしいな

嫁さん、先に帰ってるのかな?

インターホンを鳴らす。

ぴーんぽ〜ん…ぴんぽ〜ん…。

返事はない。

もう一度。

ぴーんぽ〜ん…ぴんぽ〜ん…。

やっぱり返事はない。

部屋も暗いままだった。

じゃあもう電話だい!と、携帯を取りだそうとスラックスのポケットをまさぐった時、

「何か」が玄関のドアと壁の隙間からこちらを見ていることに気づいた。

床に頬を擦り付けるように、白っぽい子供が、こちらを見上げていた。

一瞬、部屋を間違えたかと思ったが、それなら鍵が開くはずもない。

その子に何か尋ねようと口を開きかけた瞬間、ドアや壁の端に手をかけるように、たくさんの手が、

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたっ

と、現れた。

その手は一様に白かったが、老若男女、混じっていたように思う。

僕が一歩後ずさると、その子は真っ赤な口でけたたましく笑い、すぐにドアが

ガンッ!

と凄まじい勢いで閉じられ、二つの鍵がガチンガチンッと音を立てて閉まった。

…。なんだこれ。。

質の悪い冗談なら、小一時間説教してやるんだが、相手はこの世のモノではなさそうだ。

大人しく妻と自宅近くのバーで待ち合わせ、少し呑み、再度帰宅した。

酔ったふりをして、妻にドアを開けてもらったが、すんなり開いた。

室内もいたって普通。

手狭な、都会のマンションの一室だ。

挙動不審な僕を見て、妻がニヤリとしたように思えた。

まるで、自分が仕掛けた悪戯に、まんまと嵌った人間を見るように。

それ以降こんな出来事はないが、何となく気にかかる。

僕の妻は霊感が半端じゃないほど強い(らしい)。

僕に内緒で何か人外の者でも飼い慣らしてなければいいのだが。




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