古いカレンダー(2)

摩訶不思議な怖い話 File.138



ネットより転載





それまでは笑ってたけど、さすがの気持ち悪さと呪うという言葉に気分も悪くなり、

「もう、帰ろうや」とAが言い出す。

ただ、帰るといっても夜中の12時か1時ぐらいに

懐中電灯で来た道を戻れる勇気も無く、賛同するものもいない。

「朝までまとうや」と言うも、「まじで?こんなとこで?」とBが言いだす。

BとAは「もう出た方がいいって」と言うが、他の友人は「いや、外なんか歩けんって」と拒否。

その後、結局そこで朝まで待つ事になったが、BBQをするほどの元気もなく、

全員で何となく気分を紛らわせるように話をしていた。

数十分後、いきなり外から

「お〜い、お〜い、お〜い」

と聞こえ始めた。

全員が一斉にびくっとなり、身構えるように静かになった。

「お〜い、お〜い、お〜い」としか聞こえないのだが、それがずっと続く為、

「動物の鳴き声じゃね?」

と言う友人に全員が同意し、又話し始めた瞬間、

バン! バン!!

と小屋の裏側が誰かに叩かれた。

「お〜い、お〜〜い。お〜〜〜い。お〜〜〜〜い」

と叫ぶ声も長さが増していき、それと同時に再度裏側から

バン!! バンッ!!

と誰かが叩く。

「な、なんなん?これ??だ誰か叩きよるん?」

とBが半ば泣きながら言うと、今度は横側からバン!バン!!と音が鳴る。

そこでいきなりドアが開いた。

「おーい、こら。お前らなんしよっとか?おお?」

1人の男が立っている。

自分達は全員怖さと目の前の現状が全く理解できずに固まっている。

「おーいって、呼びよるやろうが? お? 聞いとんか? のー?」

と捲くし立てる男の手には古びたバットが握られており、それが怖すぎて一言も発せられない。

「なんとか言わんか! コラ!!」

と男がバットを扉に殴りつけながら叫ぶので、

「い、いや、BBQしようと思って。来ました…。

知り合いにここの小屋は誰でも使えるって聞いたんでここに居ます」

と言うと、男は

「あほか? おー? ここは今俺が住んどるんじゃ」

と言う。

「本当にすみませんでした。知らなかったとはいえ、ここが個人の家だとは知らなかったので」

「個人の家やないけど、俺が先に住んどるんじゃ。誰がつこうて良いっていうたか知らんけどはよ出て行け!」

と叫びながらバットを床に扉にバンバンと叩きつける。

急いで荷物を纏めてその場から出ようとした時に、その男が

「食いモン持っとるんやったら置いてけ。肉が黒こげになっとるやろうが!

あん? もってぇねぇことしおってからこんボケ」

と、囲炉裏の上の焦げた肉を指差して怒鳴り散らす為、肉や魚を置いて逃げるように外に出た。

外に出る為にその男の横を通る際、男の目を見てかなり萎縮してしまった。

多分白内障なのだろうが、片目が白い。

これで見えてるのか? と言うぐらいに。

外に出た後に成すすべなく立ち尽くしていたが、真っ暗闇の怖さで不安になり、皆急いで懐中電灯をつけた。

懐中電灯をどこに照らすべきか分からず、

とりあえず足元に照らしながら「どうする?」と話をしていると、小屋から再度怒鳴り声が聞こえた。

「おい、こら! おぉ? お前ら出て行けって言ったやろうが!聞いとるんか? おい!」

何が起きたか分からずに他に足りてない友人が居ないか、

誰か小屋に残ってないかを確認するも、その場には友人全員がいる。

「おっまえら、人様をなめとるんか!? あ〜!?」

と怒鳴る声は続く。

「女やけって、容赦せんぞ!!」

そう男が叫んだ瞬間に、俺を含めてその場に居た友人数人は腰を落とした。

Aが「え?今なんて言った??」と誰に聞くわけでもなくボソボソと言う。

その瞬間に又男の怒鳴り声。

「あー?? 知らんわー。てめー誰に口答えしよるんか! こら! 『女でも俺は殴るぞ!』」

と今度は再度はっきりと言った。

俺達は男同士で行っていた。

女は1人も連れてきてない。

それにも関わらず、あの小屋ではあの男が『女』に向かって怒鳴っている。

二重の恐怖に足がガクガク震えて、どうすれば良いのかと考える余裕もなく、

動けずにただただその場で友人と目を見合わせてるのみ。

多分1人が逃げればそれに続けるのだが、誰も先頭に立って逃げる勇気も無い。

少なくとも、俺には真っ暗闇を先頭に立って照らしながら逃げる勇気は無かった。

しかし、次の言葉が聞こえた瞬間、さすがに全員一斉に逃げ出した。

「まゆみぃー!? だれじゃあ、ぼけ! しらんわ!!」

最初、名前と思わずに何を言ったか全く分からなかったが、言葉の端や流れから、

頭でゆっくりと『まゆみ』と言ってるのでは?と理解した瞬間に体がビクッとなり、

「まゆみぃや、いうのは知らんっち言うとろうが!」

と再度はっきりと聞こえた瞬間に、全員ほぼ同時に逃げた。

Bは

「ありえん…ありえんやろ…」

と泣き声を上げながら逃げていた。

小屋からかなり離れたところで足が遅いAを待つ為に全員が止まり、Aが

「はぁ、はぁ。ちょっ、ちょっとまって」

と言いながら追いついた。

そこで全員が再度息を整える為に少し休んで居ると、Bだけがボソボソと

「まゆみって誰なん何なん、誰なん。まゆみって何なん」

と繰り返す。

さすがに俺も怖い為に

「おい、今はそんなん言うなよ。後で話し聞くけん。頼むけ、今は言うなよ」

と言うも、Bはずっとボソボソと独り言を続けていた。

その後、息も整い少しずつ落ち着きを取り戻し、山を下る事に。

下りながらも後ろが気になり、少しの音にも敏感になっていた。

さらに下って行くと道の端に地蔵があり、下の街の光も見え始めた。

下の街の光が見えてかなり安心感を取り戻した俺達は、地蔵に

「呪われませんように」

という願掛けの為に皆で立ち止まり手を合わせていると、

「それ、地蔵じゃないんやね?」

と友人のDが言った。

「それ、いちおうは地蔵やけど、守護系じゃないんじゃね?」

とオドオドしながら言い出す。

「え? 知らんけど、地蔵って何かを守ってくれたり厄除けになるんやないん?」

と聞くと、

「たぶん、厄除けとかにはなるかも知れんけど、これ身代わり地蔵なんかね? 大丈夫なんか?」

と言いながらDは少しずつ後ずさる。

「なんか、怖がらすなや。十分びびったやないか」

とAがDに怒鳴ると、Dが

「それ、足切り地蔵やん。足の付け根から切られとるやん」

と言ったときに、全員が一斉に地蔵の足を見る。

確かに右足の付け根が不自然になくなっている。

その横に立っていた数本の風車がいきなり吹いてきた風に反応し、カラカラと回りはじめた。

そのカラカラと音が鳴りながら回り始めた風車に、目がすーっと引き込まれる。

その風車の下に『まゆみちゃん』と文字が見えて、一瞬にして背筋に寒気が戻った。

その後、直ぐに走りだして下の道路まで全速力で逃げてきた。

山から抜け出し、アスファルトの道路を見て安心を取り戻した。

息を整えて全員で一番近いAの家に向かおうと決めて、道路沿いを歩き始めた。

時間は夜中の2時で、辺りはかなり静かで車も通ってないのにも関わらず、

反対側の霊園の歩道を俺らとは反対に向かってくる人影を見てビクっとし、再度走り始めた。

その歩いてる人影をはっきり見たわけではないけど、

何故か女の子の様な錯覚をした為、鳥肌がざわざわと立ち、

「見るな、見るな」

と怖さから呟きながら逃げた。

その後Aの家につき、その時起こった恐怖体験を皆で話し朝まで過ごした。

次の日からBが耳鳴りが止まらないと病院に通院した以外は、

特に今のところ変な事はないけど、Bはそれ以降慢性の耳鳴りになってしまい、

本人曰く「金縛りが酷い」とのこと。

多分、オレたちを怖がらせようと繰り返し言っています。

「女が夜に枕元に立つ。んで、刻まれていく瞬間を俺の前でずっと喋り続ける」

と言ってる時もあったが、

その話をしている時以外は別に以前と変わったこともないので、多分大丈夫かと…。

その山小屋の話を兄にしたところ、

兄が行ったときは(自分が行ったよりも1、2年前)別にそんなカレンダーも無く、

普通にBBQをしたし、兄の友人も俺達の体験後にキャンプしに行った事があるらしく、

「雑誌とかはあったけど、別に人は住んでなかったぞ」

との事でした。

T山自体の霊的現象の噂は一切聞いた事が無く、

麓のS霊園とその奥の峠が有名だったのだけど、一応、それ以来その山には近づかないようにしています。

別の友人が一度T山に仲間内で行った事があるらしく、その話をした事があった為、地蔵はあったのか聞くと、

「おまえら、あれは水子地蔵やろ。しかもいたずらしたのお前らちがうか?」

と言われ、何もやってないと言ったら

「嘘付け、目のとこがくり貫かれて、足が付け根からないやねぇか」

と言っていましたが、確認には一切行ってません。

最近、その中の友人のDが10年前に何か事件があるかを調べてみたところ

(図書館で新聞読んでインターネットで調べた程度ですが)特に事件は無かったとの事です。

ただ、S霊園の奥にある峠は事故が多く、亡くなった方は何人かいたそうですが、多分関係は無いと思います。

「せんもんのやくはとくとるな。こはわもら かならろ」

この文章ははっきりと覚えてなかったのですが、

友人と話してる時に覚えてることを言い出し、このような感じの文章でしたが、

ちゃんと覚えて意味を調べとけば良かったかな…。

何か性質が悪そうですので。




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小型懐中電灯


[怖い話]


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