ベランダにいるもの

摩訶不思議な怖い話 File.107



ネットより転載





会社からの帰り道、私が住むマンションが見渡せる橋の上で、部屋のベランダを確認する。

なんてことは無い、ほぼ無意識に行う日常的な儀式です。

その日も自分の部屋のベランダを橋の上から見上げる。

「ん?」

ベランダに誰か居る....

明らかに人が立ってる。

顔はうつむき、長い髪が垂れ下がり、赤いドレスを着た女が立っていました。

私は怖くなり、近くに住む同僚のK美に電話し、近所のカフェで落ち合う事にしました。

事の経緯を話しました。

K美は勘違いだと言い切り、一緒に部屋まで来てもらう事にしました。

部屋に入ると、何も変化の無い見慣れた部屋。

ベランダを見ても誰も居ない。

「やっぱり見間違いだよ」そう言うとK美は帰って行きました。

私の不安と恐怖は一向におさまりません。。

しかし、強がりの性格ゆえか、自分自身に「あれは何かの見間違いだ」と言い聞かし、

その日は食事も摂らずにベットに入り眠ってしまいました。

「ピンポーン」部屋のチャイムで目が覚めました。

時計を見ると午前1時。

こんな時間に誰だろう?

ボーっとした意識のまま、インターホンの受話器を取りました。

同僚のK美でした。

K美凄い剣幕で「今すぐ部屋を出て!!人が居る!!あんたのベランダに人が立ってるよ!!」

私は荷物も持たず、鍵もかけずに一目散に部屋を出ました。

下に居たK美は私を見るなり、泣き出してしまいました。

私もそんなK美の様子に恐怖がこみ上げ、声を上げて泣いてしまいました。

「ふと気になってね......何度か電話したんだよ」

あらためて携帯を見ると着信が3件入っていました。

「ごめん気づかなかかった..」

「夕方の事が気になってね、橋の上まで行ってみたの」

こころなしかK美の声が震えていました。

「最初洗濯物がいっぱい干してあると思ったんだけど...良く見るとそれ、全部人だった。

ほんとにどうやったらこんだけの人がベランダに入れるの?って思うくらい、ギッシリ人で詰まってて、

全員微動だにせず、部屋の方を向いててね....」聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ち、また涙が溢れました。

そのまま二人で警察に出向き、事の経緯を話しました。

まじめには取り合ってもらえなかったのですが、念の為にと、二人の警察官が部屋まできてくれました。

しかし当然のように何も居ませんでした。

その日はK美にお金を借りて、タクシーで隣市ある実家へ帰りました。

翌日そのまま両親に来てもらい、部屋を解約してもらいました。

一応不動産屋に経緯を話すと、今までそんな話は一切ないと、首を傾げるばかりでした。

実家に帰って来た翌日。

その日は会社を休み、実家でボーッとしていると、上司から電話があり、K美が入院したと聞かされました。

昨日の今日だけに、なんとも言いがたい不安を抱え、K美が入院した病院に向かいました。

K美は顔と手を包帯で巻かれ、寝ていました。

付き添いの方に、同僚だと言う事を告げ、それがK美のお兄さんだとわかりました。

「会社でK美に何かありましたか?」お兄さんは私に聞き、

「会社では特に何もなかったと思いますけど..」

「じゃ彼氏とか?」

「K美になにがあったんですか?」

昨日の事には触れず、わたしは聞き返しました。

「部屋で暴れたらしいんです」

「え?」

何か割れる音に気づいた管理人が部屋まで行くと、K美がもの凄い声で叫んでいたそうです。

なにかあっては大変だと、管理人は警察に通報し、合鍵を使って入ったそうです。

「病院に運ばれてから警察に聞いたんだけどね、ベランダの窓ガラスが粉々に割れていたそうでね。

その破片で怪我したみたいで..警察は侵入者の痕跡を調べたらしいけど、

そんな様子もなくてね、それに内側から割られた窓の様子から、K美が自ら割ったんだろうと.....」

私はくらくらと目の前が真っ暗にまりました。

きっとあれだ.....

その後、K美は精神を病んでしまい、地方の病院に入院してしまいました。

何度か面会をしたいと、ご両親に頼みましたが、今はそっとしといて欲しいと言われました。

数ヶ月経った頃、突然K美から手紙が届きました。

その手紙には、あの時は楽しかったとか、同僚の誰々が嫌いとか、取引先の男性がかっこいいとか、

たわいもない内容で、元気に頑張ってます!と

白い病室のベットに座るK美がピースサインをした写真が同封されていました。

その背後に映る窓は黒い紙で全て塞がれていました。




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