死んだ彼女 |
感動の怖い話 File.20 |
ネットより転載 |
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俺が高校生だった頃、隣のクラスに目茶苦茶可愛い子がいて、俺は恋心を抱いていた。 1年ほど片想いをしていたが、体育祭の日、その子が俺に告白をしてきて付き合うことになった。 その子は高校でもかなりモテていたが、オレなんて全くモテない。 ブ男と付き合うなんてどうかしてる! と、周りの奴が噂するのを一時期学校ではよく耳にした。 俺も何度か「オレなんかのどこがいいの?」と尋ねた。 彼女は毎回ハニカミながら、 「笑顔が好きになった。周りが何を言おうが、私が好きなんだからいいぢゃん!」 と言ってくれた。 すごく真っすぐな子だった。 俺は昔から自分自身にコンプレックスを持っていた。 「俺は不細工で頭も悪い」それがオレの口癖だった。 彼女はそんな俺に、 「でも私はそんな貴方が好きなんだから。自分で悪く言うのは辞めて」 と。 俺にはとても出来過ぎた子だった。 高校を卒業し、俺は町工場に就職、彼女は大学へ進学した。 彼女は大学の授業が終わると、しょっちゅう工場の前で俺のことを待ってくれていた。 19歳のとき、彼女が妊娠した。 俺達は周囲の反対(彼女が大学生だった為)を無視して結婚した。 彼女は当然、大学を中退、元気な女の子を産んでくれた。 俺に甲斐性がないので、彼女は半年後にはパートをして家計を助けてくれた。 金は無かったが毎日幸せだった。 娘が2歳になって間もなく、彼女は交通事故で他界した。 パートの行きに車に跳ねられて。 俺は葬式でも涙が出なかった。 彼女の死を信じられなかった。 それから3年経った。 俺は今でも彼女の事を引きずっている。 オレなんかと出会わなければ彼女は……。 俺は彼女のお陰で幸せだったが、彼女には俺のせいで幸せを掴みそこなったんじゃないのか……とか。 生活する為に工場と夜のウエイターのバイトで、彼女の忘れ形見の娘との会話もあまり無かった。 そのせいか、娘はいつも1人で絵を描いている。 昨日、仕事から帰ると、また娘が何か描いていた。 「それなに?」 愛想なく聞くと、娘は 「おかあさん」 と答え、絵を書き続けた。 一瞬、ドキッとした。 「え? おかあさん? ……お母さん何してるの?」 と聞き直すと 「今日はオカーサンとお砂場で遊んだの」 娘が言った。 俺は娘に聞いた。 「どこのお母さん? お友達の?」 娘ははっきりと 「違うよ、美優(娘)のお母さんだよ。昨日も遊んだの」 と。 娘は続けてこう言った。 「美優おかーさん大好き、おかーさんもねぇ、美優とパパが大好きなんだよ」 俺は娘を抱き上げ、すぐにその砂場に走った。 砂場に着くと、もちろん、そこに彼女はいなかった。 娘は、 「おかーさんはこの公園が大好きなんだって。いつも美優より先に着てるよ」 その言葉を聞き俺は思い出した。 この公園は高校時代、よく彼女と立ち寄り、始めてキスしたのもこの公園。 俺は、娘の前で号泣した。むせる様に泣いた。 娘はポカーンとしていた。 俺は娘を抱きしめ、謝った。 「ごめんね」と。 彼女が死んだ事を受け入れられず、多感な年頃の娘の相手もせず、 毎日クヨクヨ生きていた自分自身が恥ずかしかった。 彼女は死んでも、娘の遊び相手になって。 俺は死んだ彼女にも苦労をかけていた。 ★→この怖い話を評価する |
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