後輩が見たもの

本当にあった怖い話 File.165



投稿者 チョレギサラダ  様




これは、俺が4年前、大学生の時に体験した恐ろしい話。

4年前、俺は某県の田舎のスーパーでアルバイトをしていた。

ちなみに平日のシフト時間帯は夕方5時〜閉店夜830分まで。

そのスーパーは、従業員がかなり少なく人手不足で、一年を通してあまり客が来なく、立地が田舎ということもあってか、売り上げはイマイチで、年々業績は悪化していた。まぁ、当時はただのアルバイトだったので、給料が貰えれば売り上げとか客数とか俺にはどうでも良かったが。

その日、飲料・酒類の品出しの手伝いが終わった後、レジ業務に戻った俺は、閉店10分前になると使わないレジのレジ閉め業務(売上の確認やクーポン券の枚数確認、万札の処理等)を終え、閉店時間を10分過ぎて他のレジも同様レジ閉め業務を行っていた。

その途中、店内チェックをしていた後輩の森山(仮名)が俺に声をかけてきた。

森山「すいません俺さん、まだお客さんが一人残ってるんすけど。」

俺「あーそう、了解。」

ちなみに閉店時間を過ぎてもお客が一人二人買い物してるのはたまにあることで、

少し腹は立つが一応一台だけレジは開けてあるので問題なかった(レジ閉め業務後にまた会計すると、またやり直しとかでめんどくさいしややこしくなるため)。

とはいえ、もう15分を過ぎても客はレジに来ないため、さすがに早く会計してもらいため、俺は声をかけるためにその客を探そうとした。

しかし、いくら探してもそのお客さんはいなかった。

俺「なんかもういないみたい。何も買わずに帰ったんじゃね?」

森山「えっでも何も買わずに出て行くなんて変ですよ。だってスーツ着たおっさんがまだいて、カゴいっぱいに商品入ってたんですよ?」

俺「見間違いだろ。もう誰もいないし早く帰りたいからほら、4番レジあげするぞ。」

森山「はぁ、分かりました…。」

森山はどこか腑に落ちない様子だった。

店内チェックも終わり、片付けや最終確認を終え、警備員からも誰もいないとインカムから連絡が来たので、

後は俺と森山で事務室の金庫に売上金等を持っていくだけだったのだか…。

“それ”はいた。

従業員入り口近くの魚刺身売場の前に、森山の言っていた、初老くらいのスーツ姿の白髪の男が、

カゴを持たずに後ろを向いて佇んでいた。誰もいなかったはずなのに。

正直俺と森山は漏らしそうなぐらい怖くて震えていた。しかも、客専用の店の出入り口は警備員が閉めたはずだった。

俺「あのーお客様、閉店時間を過ぎていますので、

申し訳ございませんがまたのご来店をお願いいたします。出口までご案内します。森山、さきに事務所までお金持ってって。

多分副店長いるから一緒に金庫に預けてて。終わったらそのままカ上がっていいから。」

森山「は、はい、お疲れ様です。」

俺らは二人とも声が震えていた。その男は、無反応で、歩こうともせずずっと立ち止まったままだった。正直気味が悪かった。

俺「あの、お客様?」

そう言って軽く男の肩を叩いた、その時。

俺「う、うわぁ!?え?え?」

思わず声を上げてしまった。男の左肩から伝わった感触は、ぬるぬるとしてて水飴のような感触そのものだったからだ。

俺は思わず一目散に逃げていき、別の従業員用入り口に避難して、事務所まで駆け込んだ。幸いなことに、まだ金庫室前に森山と副店長がいてくれた。

森山「どうしたんですか俺さん!?」

副店長「おい、何があった!?大丈夫か!?」

俺「森山、あのお客さんのこと話してないのか?とにかく何言っても黙ったままだし肩触ったらぬめぬめで…」

副店長「とりあえず落ち着け、俺君、とりあえず着替えて就業スキャンしてきてから話そう?」

頭の中は混乱していたが、とりあえず、かなり入念に手を洗い、

その後ロッカーに戻り着替えを終えてタイムカードをスキャンした俺と森山は、副店長と3人で喫煙ルームで一服しながら、事の全てを副店長に説明した。

俺「信じなれないかもしれないですけど、本当なんですよ。本当にいたんですよ、その不気味なお客さんが。」

森山「俺も見ました。最初見回り行った時はカゴ持ってたんですけど、何も買わずに帰ったと思ったら今度はカゴは持たずに鮮魚コーナー前に。」

どうせからかわれるだろう、見間違いだろうと言われるだろう、いや、そうであってほしいと思っていたが、

副店長は思いのほかあっさり納得していた。何か事情を知っているような表情だった。

副店長はタバコをふかしながら、

「そっか…。やっぱり俺君も森山君も見てしまったか…。実は、この話をした人たちは、みんなそれでやめてしまったんだよ。」

従業員がやけに少ないのはこういうことだったのかとこの時納得できた。

副店長「人手不足で二人に辞められちゃ困るからあまりこういう話はしたくないんだけど、

数年前にある店長がいてね、私もその店長と一緒に仕事してたんだけど…」

俺と森山はその話を聞いて、言葉が出なかった。

長くなるので副店長の話を要約すると、

・俺がそのスーパーでバイトで入る5年前、今とは違うその当時の店長がいた。

・その店長はかなり有能だったらしく、着任してから売り上げが悪いこのスーパーの業績を少しずつだが回復させ、

おかげで、立地が悪いのにも関わらず客足も伸び始めた。

・しかし、ある時を境に何故か業績が急に悪化。店長もいろいろ対策を立てたが客足も売り上げも伸びず、担当部門のチーフ達から文句を言われ、本部からも全部店長の責任で、このままだと降格、もしくは最悪クビだと言われる。

・それ以降店長は全力で業績回復に努めるが、一向に良くならず、そればかりか閉店の危機に陥る。

しかし、他のスーパーはこの辺りには全くないので店長は絶対に閉店させまいと頑張ってきたが、

本部からの圧力や度重なるパワハラ、そのストレスのせいか髪が真っ白くなり痩せこけ、副店長はかなり心配していた。

・そして3年前の丁度この日、店長は店長室で首を吊っていた。遺書などはなし。つまりこの日は命日である。

・はっきりではないが、俺と森山が見たこの世のものでないものと、この事件の事とは関係があると副店長は言う。

・俺と森山以前にも、同じ様な体験した従業員が多数いて、副店長がその話をすると高確率で辞めたいとか実際にすぐ辞める人はたくさんいた。

・従業員がいないのはそのせいで、客足が少ないのもその店長の呪いだかなんだかと思っている。

・今の店長はこのこと(自殺した店長のことや、俺達がみたこの世の者ではないもの)は知らない。

・副店長も実際に、命日にその店長らしき幽霊を何度か見た。

・店長の首吊り自殺の事件は、何故か公に公表にされず、病死等にすり替えられたらしい。

以上、長くなったがこれが副店長が言っていたことだ。

(本当はもっと色々な情報を聞いたが、長くて書ききれないのと蛇足部分なので割愛)

副店長「無理には言わないけど、やっぱこのまま続けて欲しいんだ。」

俺と森山はしばらく黙り込んだまま、

俺「二つ返事でいいですか?

森山「俺は一応このまま続けようと思っています。」

と返事した。

副店長「話長くなってすまんな、とりあえず今日はもう帰りなさい。」

俺と森山「はい、お疲れ様でした。」

俺と森山は喫煙室を出て、帰ろうとするが、帰りは売場を経て客専用の出入り口からじゃないと帰れない。

正直、怖くてかなり嫌だったが、仕方ないので、なるべく周りを見ないように小走りで出口まで向かった。

幸い、俺も森山も出口を出るまであの幽霊を見ることは無く店を出ることが出来た。そう、出口を出るまでは…。

俺「なぁ森山、本当にそれでいいのか?俺はやっぱり辞めるわ、店長や副店長には悪いけど。正直すげえ怖いし…。」

森山「・・・」

俺「おい聞いてんのか?二人で辞め…」

森山「・・・あ・・・・あれ・・・」

森山はそう言って目の前の店を指を指した。森山が見たのはすぐ想像出来たため、

俺は店の中を振り返らずに急いで森山の手を引っ張り一目散に走った。

少し落ち着いた後、

俺「明日もシフト入ってんだろ?じゃ、じゃあまた明日な…」

森山「はい、また明日…。」

森山はか細い声でそう答え、それぞれ帰路に着いた。俺は今の出来事のせいで、一人で歩いて帰るのが怖く、

仕方なく親に迎えに来てもらった。何しろド田舎で電車もほとんど走ってなく、

街灯もない中で3kmも歩きで帰るのはたまったもんじゃない。

今思えば、逆方向とはいえ森山もきっと同じく怖いおもいしてるから乗せてやれば良かったと少し後悔している。

しばらくは、親に迎えに来てもらうことにした。

当然、その夜は眠れず、翌日は寝不足のままなんとか大学の授業を終え、昨日の件でかなり抵抗はあったがバイトに向かった。

しかし、同じ時間帯のはずなのに森山の姿は無かった。

予想はしてたが、無断欠勤で、携帯は繋がらず、家の電話にも出ないらしい。

バイトが終わった後、心配なため森山に電話をかけるが、「おかけになった番号は…」と聞こえるだけ。

その後も電話をかけるが同じ繰り返しになり、メールも届いてないらしく、現在まで音信不通になっている。

後で分かったことだが、森山はその2週間後くらい(ここら辺は曖昧)に店に来て、店長に無断欠勤を謝罪し、そのまま辞める意思を伝えたらしい。森山は俺や他のレジのパートやバイトには何も言わなかったが。

その日、俺は念のため、店長達に懇願して、レジを離れて警備室で昨日の防犯ビデオを見せてもらった。

だが、映像にはあのスーツの男の姿はどの角度にも映っておらず、映っていたのは何もないのに慌てふためく滑稽な自分の姿だけだった。

店長「俺君、少し疲れてんじゃない?目の下の隈すごいよ?倒れられても困るから、まぁ今日は早く帰って寝なさい。あ、レジの人達には俺から言っとくから。」

俺「いえ、大丈夫なんでレジ戻ります。それと、後でまた俺から森山に連絡出来るか確認してきます。仕事戻るんで失礼します。」

副店長と違って店長はなにも知らないから仕方がないが、きっと変な奴だとか、幻覚見てるとかに思われてるだろう。

しかし、それよりも、あの男がいたという証拠を掴めなかった悔しさの方が大きかった。

結局、俺はその3ヶ月後にそのスーパーを辞め、それ以来一度もその近くを通ることはなかった。

俺も森山も、副店長がかつて言った通り、長くはもたなかったというのか。

現在、大学を卒業した俺は、上京してとある派遣会社に勤めており、あれからは怖い体験をすることはなかった。

森山にあの後何があって、今どこで何をしているか、あのスーパーはどうなったのか、

まだ営業中ならあの時の店長や副店長はまだいるのか、そして、俺たちが見たあの幽霊は、自殺した店長の怨念、無念なのか、

それとも無関係なただの地縛霊なのか…。今でも俺には全く分からずにいる。

ただはっきりと覚えてるのは、俺があの中年男の肩を触った時の、

気持ち悪いぬめぬめとした感触は間違いではいこと、そしてはっきりわかることは、その男がこの世の者ではないということだけだ。




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