行くよ

本当にあった怖い話 File.134



投稿者 四ノ宮那月 様





夏休みの夜、友達を集めてMさんのアパートで麻雀をした。

夜中の2時、麻雀が盛り上がっている最中、部屋の電話が鳴った。

「はい、もしもし」

ところが、妙な音が聞こえてガチャと切れた…。

「誰?」

「わかんない、なんかプツっプツって機械音みたいな音が聞こえてたけど…。電話の故障かな?…」

そして麻雀に興じる。

また電話…

「はい、もしもし……」

今度は無言電話。

そして切れる。

「なんか、おかしい間違え電話だな」

「けど、夜中の2時まわってんだぜ?!…」

しばらくして、また電話が鳴った。

「もしもし!お前誰だよ、悪戯もいい加減にしとけよ!」

怒鳴ったのがいけなかったのか、

「行くよ」

男の小さな声がして切れた。

「行くよ?…」

聞いたことのない男の声にちょっと怖くなった。

「どうした?」と友達が心配そうに聞いてくる。

「行くよって、男の声で…」

「なに、それ?」

すると、アパートの前の道を、誰かが歩いて来る音がする。

「きっと外れた、どっちかだろう」

ここにいるのは、いつもの麻雀仲間6人のうち4人。

つまり、残ったふたりのうちどちらかの悪戯だろうというわけだ。

友達が窓を開けた。

「誰だ、わかってるんだぞ」

外は暗闇、足音が消えている…。

「誰もいない…」

「今まで音してたじゃないか」

「絶対人の足音だ、窓のすぐ近くまで来てたがな…」

すると、

コンコン…

ドアのノック音。

ドキっとしてドアを見た…。

Mさんは、4人いたのが心強かった。

「大丈夫だ、誰かの悪戯だって」

と勢いよくドアを開けた。

誰もいない…

そこへ電話が鳴った。

「行くよ」

「何?…どういうことだ…」

麻雀どころではない。

また、前の道を誰かが歩いて来る。

誰もが音の正体を知りたがった。

「よし」

と4人いっせいに窓を開ける。

今度は、音は止む。気配も消える…。

明るい部屋の中ですら離れるのが怖い…

4人、いっせいに振り返ってドアまで駆け寄り、ドアを開ける。

誰もいない…

そこへまた電話が鳴った。

受話器を取るまで鳴る…

「行くよ」

そして切れる。

そしてまた、窓を開けるまで歩き続ける。

ドアを開けるまで続く。

ドアを開けると誰もいない……

夜が明けたというのにまだ続いている…

きっと、誰か友達が死んだに違いない、と、誰もが真剣に思った…。

4人とも電話を無視して、部屋の真ん中で車座になったまま動けなかった。

7時ごろになって、それはやっとおさまった。

そして、みんな安心した。

その瞬間…

うしろで麻雀の牌(はい)の転がる音がした。

怖くて誰も振り向けなかった。




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