真っ赤な唇(2)

幽霊の怖い話 File.48



 ネットより転載





女にしがみ付いて固まっていると、不意にピピピッとタイマーが鳴った。

女は「イってないよね?延長する?」と言ってきたが、私は逃げるように服を着て店を後にした。

とにかく怖くて、恐ろしくて、一刻も早く人のいる所、明るい所に行きたかった。

私は待ち合わせ場所のミニストップへと急いだ。

どれくらい経ったのだろうか、友人二人が待ち合わせのミニストップに来たとき、

私は雑誌コーナーで全身に冷たい汗をかいて空ろな目をして座り込んでいたという。

声を掛けたり肩を揺すっても反応がなく、尋常ではない様子に友人は迎えの車を呼んで私を運んだ。

車中で私は大量に吐いたらしく、それを見た友人は夜食に食べた「蟹ラーメン」に当ったのだと思ったらしい。

逗留先の友人宅に運ばれベットに寝かされた時には、私の意識は少し回復していた。

バイクを取りに行くと言う友人にキーを渡すと、私は友人の言葉に従って眠りについた。

眠りについてどのくらい経ったのだろう?

私は顔を髪の毛でくすぐられるような感覚で目を覚ました。

目は覚めたけれども体は動かない。

何度か声を出して人を呼ぼうとしたが、声が出ない。

金縛りだ。

金縛りの経験は何度かあるので、少しずつ私は落ち着きを取り戻した。

眼球は動かせる様だったので、部屋の中に視線を走らせた。

その時だった。

突然目の前の空間に、先ほどの青白い女の顔が浮かんでいた。

鼻の頭が触れ合いそうな至近距離。

女は先ほどの店の前で見た白いキャミソールの女だった。

女の双眸は私の目を覗き込んでいた。

私は恐怖で発狂寸前だった。

目を閉じようとしても閉じられない。

恐怖に固まっていると、唇に不意に冷たい感覚を感じた。

女の唇が私の唇に重ねられている!

そして、冷たい舌が口内に侵入してくる感覚・・・

その冷たい舌に私の舌は舐られた。

口の中に鉄臭い血の匂いが広がった・・・

私は全身の骨が砕けてもいいと思って自分の体をベットから引きはがした。

友人が帰ってきて私を起こした時、私は鼻血を流しながらフローリングの床に横たわっていたそうだ。

夜が明け、朝日を浴びると、前夜の事が嘘のように私の体調は元に戻った。

念のために医者にも掛かったが特に問題はなく、

予定どおり同窓会とツーリングに参加して、私はまた忙しい日常へと戻って行った。

あの恐怖の体験から2・3ヶ月が経った頃、私は偶然以前付き合ってた元カノと食事をすることになった。

取り留めのない会話をしていると元カノが突然真剣な目つきで私に言った。

「**ちゃん(私ね)、あなた、物凄くイケナイ場所に行かなかった?」

私はどきっとして「えっ?」と答えた。

元カノは良く言えば「霊感の強い」女、所謂「電波」とか「不思議ちゃん」といった類の女だった。

おっとりとした美人で気立ても良く、正直未練もあったが、

彼女の「電波」、そしてそれ以上に、彼女の母親の電波の出力に耐えかねて別れることになった。

母娘揃って怪しげな宗教に嵌まり込んでおり、母親の方は拝み屋の真似事までしていた。

「早くお祓いした方がいいよ。お母さんに頼んであげようか?」

「いいよ。お前の家にはもう絶対に行かないよ。分ってるだろ?」

「そう言うと思った。代わりにこれを身に付けていて。絶対に手放しちゃダメだよ」

そう言うと、黒い石に何か文字のようなものが彫ってあるチョーカーを渡した。

元カノの言葉に従って、私はそのチョーカーを身に付けた。

数々の逸話から、元カノ母娘の力が「本物」なのは確かだったから。

やがて年が開け新年を迎えた。

年明けのあいさつ回りで、偶然に取引先の会社で私は中学時代の同級生と再会した。

何度か食事や遊びに行って、バレンタインデーに告白されて、私と同級生は付き合うことになった。

GW私と彼女は二人で温泉旅行に出掛けた。

私はプライベートでは基本的にバイクにしか乗らない人間で、車は家のボロイ営業車しかない。

温泉旅行は彼女の車に乗って、彼女の運転で行った。

彼女と部屋でエッチしたあと、私は一人で露天風呂に入りに行った。

脱衣所で服を脱ぎ、元カノに貰ったお守りのチョーカーを外してバスタオルの上に置いた。

夜遅い時間だったので露天風呂に入っていたのは私だけだった。

風呂から上がって脱衣所に行くと、籠の中のバスタオルの上に置いたはずのチョーカーがない。

籠の中や脱衣所の中を一通り探したが見つからず、フロントにも頼んだが結局見つからなかった。


真っ赤な唇(3)



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