おっかない合コン(3)

創作の怖い話 File.92



投稿者 でび一星人 様





テレッテレレ〜ン

テッテレレレ〜ン

テレレレレ〜〜ン

テッレレレ〜ン


裕史が作曲した、気持ちの悪い音が部屋に鳴り響いた。

携帯の着メロが鳴っている。

「・・う〜ん・・・。」


沙織が「友達から誘いの電話があった」と言って家を出てから三十分ほどが経っていただろうか?

裕史はジャージに着替え、横になったまま寝てしまったらしい。

ムックリと起き上がると、裕史は自分の携帯を手にとり、電話に出た。

「・・はぃ・・もしもし・・・?」

『おお!裕史か? 今暇??』

「・・あぁ・・。暇だけど・・・何?こんな夜に?」

『いやさ、ちょっと合コンやるんだけどさ、一人ドタキャンしちゃってさ、代わりに来ない?』

「えぇ・・。合コン?おれ、もう嫁さん居るんだぜ?」

『あっそ。わかった。 じゃあ他あたるわ。 おやすみ!』

「お、おいおいおいおい。ちょ、ちょっとまてまて。」

『なるべく早く来てくれな^^ 天王寺の、【尾仏屋】って居酒屋だから。』

「・・は、はい・・。なるべく早急に行かせていただきます・・・。」


裕史は着替えて、10分ほどで家を飛び出した。




トコロ変わって尾仏屋の一階。

沙織は合コンで怖い話合戦をしていた。

「じゃ、次はオラの番だな。」

珍子が自信満々に話始める。

「オラはな、けっこうその手の経験はあるんだ。 

今日は、オメえらの身の回りにも起こるがもしれねえ話をするな。 【後ろ】って話だ・・・。」

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オメエらは、妙に後ろが気になったりする事、無ぇか?

たとえばパソコンをいじってる時とか・・・。

後ろを振り向いても、もちろん誰も居ないし、何もない。

何も見えないわけだ。


 でも、そういうときは居る。

間違いなく居る。

ほぼ100%な。

今だって、居るのかもしれねぇ。

気になったりしないか?

 
 オラもよく後ろが気なるんだげどな。

今は振り向かないようにしでるんだ。

 というのも、

昔、好奇心で振り向いで、怖い目にあった。

 部屋で一人、机に座って本を読んでた時だ。

なんだか後ろが気になった。

無性に。

ゆっくりと振り向いた。

・・・何もない。

たまにある事だったんだが、気にせずまた本を読んでた。

・・・でも、その日はいつもより、やたらと気配を感じるんだ・・。

あんまり気分のいいもんじゃぁない。

 オラ、何かすこし腹立ってきてな。

姿も見せないのに、後ろに居られる事に。


後ろの何かに気付かれないようにパっと、振り向いたんだわ。




・ ・・居たね。ハッキリと見えた。

女の人だ。

妙に顔が赤い女の人。

隠れるタイミングが遅れたんだろう。

棚の上に置いてある人形に、スーっと吸い込まれるように消えてった。

オラ、固まっちまってな。

ああいうの、本当に居るんだって・・・。

 でも、それで終わりじゃなかったんだ。

今までは気配だけだったのに、吐息の音が聞こえるようになったんだ

『はぁ・・はぁ・・  はぁ・・ はぁ・・』

ってな。

もちろん、振り向いても誰も居ない。

もう、急に振り向こうなんて思いもしながったよ。

何か居たら、怖いがらな。


そのうち、ソレは喋るようになった。

「・・ェ・・タ・・・ノ・・・」


始めは聞き取れなかったが、だんだんと声は大きくナッデいって、

どうやら「見えたの?」って言ってるようだった。


日が経つにつれ、ソレの行動はエスカレートし、

一週間くらい前には肩に手を置いて、オラに喋りかけてくるようになっちまったんだ。

さすがにオラ、怖さに耐えられなくなってな、

その女を最初に見た時に、吸い込まれていった人形を、お寺で見てもらう事にしたんだ。

その人形って、昔修学旅行で買ったゴク普通の木彫りのお土産だったんだけどな。

よく見ると、人形の裏に、文字が書いてあった。

ぜんぜん読めない、何か記号みたいな文字。


お寺のお坊さんにそれを見せると、驚いたような顔で、オラにこう言ったんだ。

「・・どこでこれを・・・?」

オラ、修学旅行で買っただけだからさ、そのまま伝えたら、

「・・そうですか・・・。 これはこちらで預かります。」

って言って、なにやらお払いみたいな感じで御経を唱えてくれて、家に帰ったんだ。


その日からは、後ろの気配も不思議なくらい何も感じなくなった。


怖いのが無くぐなって、冷静な頭になってきて、今度は逆に、

【あの女の人】の正体が気になるようになってきたんだ。

オラ、お寺に行って、あの住職さんに聞いてみる事にしたんだ。

あの人形の正体を。


 お坊さんは、やつれた顔で寺から出てきた。

そしてオラを客間みたいなところに入れてくれて、お茶を出してくれた。

そして、まず

「申し訳ないことをした・・。」

って、オラに謝るんだ。

「え?何であやまるんだ?何があったんだ?」

って、オラ聞いたよ。

そしたら、お坊さん

「あの霊を・・成仏させてしまいました・・・。」

って言うんだ。

「・・良いことじゃないのか?」

って、おら聞いた。

するとお坊さん、

「・・・勘違いをしてしまい・・・。 あれは、あなたの守護霊様です・・・。」

って言ったんだ。

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「・・・だから、オラは今守護霊様が居ない状態で、これはものすごく危ない事なんだと。

守護霊様も守護霊様で、気付かれないようにしてるから、もし気づかれたと思ったら、

気になって、みえてるのかどうかを試したりすることがあるみたいだ。

だから、オメェらも、後ろが気になってもあんまり気にしないほうがいいぞ?

気付かないフリをしとけな。」


「・・で、大丈夫なの?珍子?」

沙織は珍子を心配そうに見ながら言った。

「・・たしかに、ツキ みたいなのは格段に落ちたな・・・。 

これからの生活態度を改めて、善行を行えばまた、

守護霊様は憑いてくれるらしいんだけども、オラ、めんどくさいのは無理だ。」


「・・そ、そう・・ハハ・・ハハハハ・・・。」

沙織は愛想笑をした。


「さ〜てw 次はおれの番だねwww」

真一君が言った。

泳吉君は端っこで黙ってお湯割りを飲んでいる。

怖い話が苦手らしかった。

怖くて何も言えなくなったモードに完璧に入ってるっぽい。


そんな泳吉にまったく気付く事なく、真一は話を始めた。

「じゃあ、いくよ。 今日は、おれの弟が経験した話www

 弟が、公園のベンチに座ってたらさ、 つり目のおばあさんがきて、  

ケッケッケって笑って、 なんと! 目から光線を出してきたんだ。  

弟は、(これはヤバイ)って本能で思って、 かわしたんだ。 

そしてもういっかい見たら、おばあさんがこんどは口から光線を・・・」



・・・何だ・・・この話は・・・


なんというか・・・


【 現 実 離 れ し す ぎ て 、 ま っ た く 怖 く な い 】



沙織は気づいた。

こいつは、悪気は無いんだって。

ただ、本当にものすごく空気が読めないだけなんだなって。




しばらくして、話は結末に近づいたみたいだ・・。


「・・・で、最後は弟が言ったわけ。  おいおばあさん!おとといきな!  

そしたらおばあさん、一昨日もきたじゃないって・・・去っていったんだ・・・。

 あんまりこわくなかったかな? おっしまいっ!!」




・・・


女性陣三人の目は、漫画のように点になっていた。


自信まんまんに、仕事を成し終えた感じで胸を張っている真一。

こんな話でも怖かったらしく、グビグビ焼酎を飲んでいる泳吉。

女性陣三人の意思は、このとき統一されていた。




 こ の 男 性 陣 、 ダ メ だ !



「お!」

その時、端っこで小さくなってた泳吉が窓の外を見た。

「おお!来た来た! アイツだよ!三人目の男。角田 三郎って名前なんだ。なかなかイケメンだろ^^」

泳吉君はその三人目の男に向かって手を振る。


「え?どこどこ?」

沙織は誰の事かさっぱりわからなかったので周りに聞いた。

雉与は沙織に、

「ほら。アレやん。 こっちに向かってくるの、一人しかおらんやん。」

・・・道はそれほどの人混みでは無いようだ。

でも、沙織にはこちらに向かってくる人なんて見えなかった。

「・・ごめん。私まったく解らないわ。 どこだ・・。」



ブルルルルルル


ブルルルルルル

その時、机に置いていた泳吉の携帯電話のバイブ音が鳴った。

携帯のディスプレイには【角田 三郎 実家】という文字。

「・・ん。 アイツの実家からじゃん。何だろ?」

泳吉は不思議そうな顔をしながら携帯に出た。

「・・はい。もしもし。 あ、お母さんですか。 はい。 いえ、まだ会ってないんですよね〜。 ・・・え・・・?」

最初は笑顔だった泳吉君の顔がひきつった。

そして、受話器ごしに、

「・・三郎君・・亡くなったって・・・? 」


その会話を聞いていた皆の顔も引きつった。

雉与は、震える声で、ゆっくりと窓の外を指差した。


「・・ねぇ・・こっちに向かってくる人・・・。」

真一も、珍子も気づいた。



 こちらに向かってくる三郎の体はズタズタになっていた。

右腕は半分ちぎれ、膝はおかしな方向に曲がっていた。

その三郎が、笑顔で手を振りながらこちらに向かってきているのだ。

ゆっくり・・

ゆっくりと・・・


「ひいいいいいいいいい!」

皆は叫び声を上げて一斉に店から飛び出し逃げ出した。

「ちょ、ちょっと・・・。」

沙織は意味がわからなかった。

沙織は霊感0なので何も見えないからだ。

「もしかして・・・私ハメラレたのかしら・・・。」

沙織の目の前には、大量の飲食伝票が残されていた・・・。

同じ頃、裕史は店の前に着き、電話をかけた。

「もしもし?ごめん。今着いたんだけど。 店の前・・・え?何!?? 

もう解散したって? お、おい! 待てよ鯛夫!!!」

ツー ツー ツー

大学の同級生の鯛夫は電話を切ったらしい・・・。

「ここまで足を運んで・・・本当の無駄足だぜチクショウ・・・。」

裕史はその場に呆然と立ち尽くした。

そしてゆっくりと、店を見ると、団体席に一人で座り、うつむく女の人が視界に入った。

なぜだか自分と同じ寂しさをその子から感じ、店に入ってその子の隣に座った。


「一人?」

裕史は普段こんなに軽く話しかける人間じゃないのだが、なぜか声をかけてしまった。

女の子はゆっくりと顔をあげる。

「あ、裕史。」

沙織だった。

「ゲ 沙織!」

「【ゲ】 って何よ!【ゲ】って!」

「い、いや、ごめんごめん。 それより、どうしたの? 同級生と会ってたんじゃないの?」

「え、う、うん。 そ、そうよ。 皆帰っちゃった。」

「そうなんだ。 ふ〜ん。 」

「う、うん。 それより、裕史はなんでこんなところに?」

「え?あ、はは。 いやいや、 ちょっとさ、暇だから一人でブラブラしてんだよ。」

「ふ〜ん。」

・・・

・・・


手持ちがそんなに無く、とても6人分の会計が払えない二人は電話をするフリをして店を出た。

そしてダッシュでその場を立ち去り、浮いたお金で久しぶりに二人仲良くホテルに泊まった。



 それから10月10日後、

二人の間に玉のような双子のベイビーが生まれた。



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