おっかない合コン(1)

創作の怖い話 File.90



投稿者 でび一星人 様





「・・よしっと。」

私の名前は沙織。

今年で43歳になった。

でも、まだ結婚して二年目なのよ〜〜〜。

セミ新婚だわ。


今日は、旦那の裕史が休み前で、仕事から早く帰って来たので、

夕飯を食べた後、久々に二人でカラオケにでも行こうという事になった。

私たちは、夕飯のチンジャオロースを平らげ、それぞれ出かける準備をしていた。

そんな時だった。

テゥルルルルルル・・・

電話が鳴った。

「沙織〜〜電話だよ〜〜〜。」

裕史が私に言う。

私より電話に近いのに・・・。

私はカチンと来た。

こういうのは、腹に溜めない性格である。

「アンタのほうが近いでしょ!裕史が出なさいよ!!」


「いてててて・・お腹が・・・。」

裕史はわざとらしくうずくまる。

ムッカムカしながら私はドカドカと電話まで歩き、受話器を取った。


「もしもし!?」

声が荒げていたかもしれない。

「・・あ、沙織?」

「・・はい・・。そうですが。どなたでしょうか?」

「沙織ぃ!久しぶり!!覚えてるぅ?」

「・・はぁ・・えっと、すいません。 ドナタでしょうか・・。」

聞き覚えのある声だが、誰かまではわからなかった。

「ウチやん!!雉与やで!」

「え?雉与?」

雉与は大学の同級生だ。

同級生といっても、私は25歳から大学に行ったので、雉与は6つ年下になる。


「めっちゃ久しぶりやなぁ〜沙織〜。元気にしとった?」

「うんうん。元気元気。 それより、どないしたん?突然電話なんて。」

大学時代は、周りに合わせて関西弁を使っていたので、なんとなく関西弁が出る私。

「うんうん。突然なんやけどな、沙織、今、暇?」

「え・・う〜ん・・。 暇じゃないといえば・・・暇じゃないけど・・・。」

「何?その中途半端な答えは? まーええわ。 

今からさ、合コンすることなったんやけどな、沙織、今から来て!!」

「・・え?合コン?? いや、あのさ、私今からな・・・」

「ほな!天王寺で一時間後に!! 」


「・いや、ちょっとま・・」


ツー ツー ツー


・・・雉与・・・。 大学時代は、こんなに強引な子では無かった・・・。

君のその後の人生に、一体何があったというのだろう・・・。


受話器を納め、私はゆっくりと裕史に言った。

「・・・ごめん裕史・・・急用が・・・。」

「・・え?」



あぁ・・。ごめんなさい裕史・・。

私、合コンに行ってきます・・・。

「大学時代の友達がさ、久々に遊ぼうって。」

「あぁ。そうなんだ。 そっかそっか。 仕方ないね。 いっといでよ。」

優しく微笑む裕史。

私は少しの期待と、多くの罪悪感を胸に大阪環状線に乗り込んだ。


天王寺に着き、改札まで行くと、派手な格好をした雉与が手を振っていた。

「沙織〜〜こっちこっち〜〜〜。」


私は小駆け足で雉与の所まで行き、

「久しぶり〜〜〜。 待った?」

と聞いた。

「いいや。いいや。 全然。今来たところやで。」

雉与は右手を『グット』ってやって笑顔で言った。


「・・ところで、合コンっていうのは?何人でやるの?」

「あぁ。一応、3:3の予定やねんけど・・。っていうか、アンタ、関東弁になってるやん。何かあったん?」

「あ・・ごめんごめん。 今はこの喋り方なんだ。 そのほうが読んでる人も誰の会話か把握しやすいだろうしさ。」

「え?読んでる?」


「・・あ、いや、なんでもない。こっちの話^^:」

「ふ〜ん。 あ、それより、あと一人後輩が来るんやけど・・・遅いなぁ・・・。」

「職場の後輩? ・・っていうか、雉与えらい派手な格好だけど、何してるの仕事?」

「ウチ今な、掃除のおばちゃんやってるねん。」


・・・派手な格好関係ねぇ・・・。


「えらいすいませ〜〜〜ん おぐれぢまっだぁ〜〜。」

遠くから走ってくる女の子が居る。


「遅っそいぞお!」

雉与がその子にいじわるそうに笑って言っている。

きっと、合コンのメンバーの後輩の子だろう。

その後輩の子がゼェゼェ言いながらやってきて、私は驚いた。

「・・え?珍子??」

なんと、雉与の後輩は珍子だった。

珍子は、私が心の療養に田舎に行ってたときに知り合った女の子だ。

女の【子】というのも、カナリまだ若い。

まだ二十代半ばといったところか。

そんな珍子が、我々オバサン合コンで大丈夫なのだろうか・・・。


珍子は私に気付くと、目をまん丸にして

「あれれぇ?沙織かぁ!!?」

と声をあげる。

「え?知り合い?あんたら?」
と雉与。

珍子は去年、田舎暮らしが嫌になりこっちに出てきたらしい。

私は珍子とのいきさつを雉与に話し、「へ〜〜。奇遇ってあるもんだね〜」的な会話をし、

合コンの開催居酒屋に向かった。


珍子は、その道中、「先輩。オラ、合コンって始めでなんだども、大丈夫だか?」

と不安そうに聞いている。

雉与は、

「大丈夫や。普通にしてたら。っていうかブチ切れんかったらな。」

ってアドバイスしてた。


居酒屋に着くと、雉与はなにやら店員に聞き、私たちは奥の席へと案内された。

奥の席には、40過ぎくらいの男の人と、50歳くらいの男の人が手を振っていた。

・・・この二人なら・・・。40過ぎのほうかな・・・。


まずは男の人が座ってる席の向かいに、私たち三人は座った。

「あれ〜。後一人は?」

雉与は40過ぎっぽい男の人に聞いた。

「ごめんごめん。 ちょっとさ、遅れるらしいんだわ。先に始めてよう!」

と、手を合わせる。

この人も、関西弁ではない。

ふと隣を見ると、珍子がえらい緊張しているのが伺えた。

ガチガチで無口だ。

中心人物である雉与が、

「じゃぁ、とりあえず自己紹介から始めようか。 私は雉与。33歳。真ん中に座ってる沙織とは同い年。」

そういうと、雉与は私にウインクした。

・・・同い年という設定でいけということか・・・。 しかし雉与よ・・・。

あんたは4つサバ読みで済むが、私は10コだぞ・・・。


「・・次、沙織、自己紹介やで!」

雉与がふってくる。

「あ、あぁ。 こんばんは。はじめまして。 沙織って言います。 」

といって一礼した。

「へぇ〜。33には見えないなぁ。 もっと若く見えるよ。」

40歳くらいの男がお世辞だかしらないけど嬉しいことを言う。


「は、はじめまずで。珍子でず。 オラ、25歳でず。」

珍子はガチガチだ。

「はははwwwおもしろいやんwww」

50歳くらいの男が珍子を見て、【不慣れな大阪弁】で言った。


少しの間の後、40過ぎくらいの男が口を開き、

「じゃ、次、男性人だな。 おれは泳吉。 一週間くらい出張で大阪に来てて、

昨日居酒屋で雉与さんと会って、この会を開こうという事にまりました。 

年は43でっす。 でも心は二十歳です。 よろしっきゅう!」


・・・雉与・・そういう流れだったのか・・・。


そして最後に、50歳くらいの男が口を開く。

「www真一ですwww年は秘密ってことにしといてくださいなwww あ、 しといてなwwwやなww大阪はw」


なにやら、やたらと【w】が多い。

なんかイラっとする。

それに大阪弁を何か勘違いしているのがまた一段とイラっとする。


「そして、あと一人は遅れてくるんだ。ごめんね!皆!」

泳吉君は申し訳なさそうに言った。


そしてとりあえず、女性陣の真ん中に座ってた私が、男性人の泳吉君と席を代わり、

合コンの伝道、【男女アベコベポジション】を結成し、乾杯とともに会が始まった。

・・・しかし、あんまり盛り上がらない。

数もそろってないからだろうか。

そんな時、真一さんが口を開いた。

「ねぇww皆wこれだけ集まってるんだからさww 怖い話でもやらないww?」

盛り上がるための合コンで

怖い話だと!

なんてKYなやつだ!!


「へ〜〜それ、おもしろそうやなぁ!」

「うんうん。オラ、怖い話なら得意だど。」


・・・意外にも、女性人受けてるじゃないか・・・。時代はそうなのか・・・。


「じゃ、まずはウチから話すわな。」

雉与が身を乗り出しながら言った。

「題は、【赤い手袋】・・・。」



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