ヤリナオスノ?(3)

創作の怖い話 File.68



投稿者 でび一星人 様





「な、なんでここに?? 友達とかと別れをエンジョイしなくていいの??」

(エンジョイて・・・。)

「う、うん。 まあ。」

「ん?ど、どした? 顔が赤いけど、熱でもあるの?」

「い、いや。」

その後、ギコい空気のまま、一言二言会話をした後、

無言で4〜50分が過ぎた。

このままではラチが開かないと思い、私は高鳴る胸を押さえ、裕史君に気持ちを伝えようとしたんだ。

「・・裕史君、あのさ。 私たち、結局あんまり話す機会なかったよね〜。」

「・・え、あ、あ、うん。そうだねぇ・・。 家にも遊びにおいでって言ったのにね〜・・。」

またしばしの沈黙。

「・・あのさ、裕史君、 私さ・・・」

私が何か言いかけたときだった。

裕史君の友達が猛ダッシュでやってきた。

そしてコケタ後、裕史君を連れて、どこかに引っ張って走っていってしまった・・・。

そう。

そこで、終わったんだ。

私と裕史君は・・。

なのに、なぜ?

なぜ、私を訪ねて・・家に・・・?
・・・

・・・


ん?

良く見ると、走り去ったと思った裕史君と、その友達は、時間が止まったように動かない。

あ、あれ?

私は近づいてみた。

・ ・・止まっている・・・。

瞬きひとつしない・・・。

ズルリ・・・

その時、私の背後で何かが動く音がした。

何・・

私はゆっくり振り向いた。

背中を汗が滴り落ちた。

ズルリ・・・

ズルリ・・・

何かが近づいてくる。

ズルリ・・・

あれは、人間だろうか・・?

ゆっくり近づいてくる者の姿が、ハッキリと見えてきた。

目が赤く、髪の毛がまばらに生えた頭には無数の血管が浮き出ている。

何よりも、おかしいのは、

頭が 普通の  人の  五倍くらい に 膨れ  上がって いる 

ズルリ

ズルリ・・

体が動かない。

ソレは、私のスグ目の前まで近づいてきた。

・・・ソレの体は、水をかぶったようにビショビショだった。

大きく見開いた赤い目は、じっと私を見つめている。

そしてソレは、ゆっくりと私に問うてきた。

「アナタ ヤリナオスノ?」

ヤリナオス?

やり直す・・・?。

心のどこかで、私はやり直したいと思っているの?

「アナタ ヤリナオスノ?」

ソレは、私の顔のまん前まで近づいてくる。

「アナタ  ヤリナオスノ?」

そういって、ソレは私の顔くらいに大きく口を開け、私の顔を包み込んだ。

「はっ!」

そこで私は目が覚めた。

汗で体はびっしょりだ・・・。

「・・・いやな夢をみちゃった・・・。」

後味の悪い感覚と、夢でよかったという安堵感が交差した。

もう外は明るい。

七時には起きて準備をしないといけない。

私は壁にかけてる時計を見ようとした。

・・・はっとした。

時計の方に、夢で見たのと同じソレが居たからだ。

真っ赤な目・・。

血管が浮き上がり、五倍くらいに膨れ上がった頭

ソレがまた、大きな口を開けて近づいてくる・・・。

「ネェ? アナタ ヤリナオスノ?」

ズルリ・・ ズルリ・・・

ビショビショに濡れた足を引きずり、ソレはだんだんと近づいてくる。

(これは、夢?何!? 何なの??)

「アナタ ヤリナオス?ネェ? ソレトモ 死ヌ?」

もうパニックだった。

体は金縛りにあったように動かない。

それは止まる事なく近づいてくる。

・・・声を・・とにかく声をださないと・・・!

私は懇親の力を込めて、声をだそうとした。

・・・だめ、出ない・・。

「ネェ? ヤ リ ナ オ ス? ネェ? ソレトモ 死 ヌ ?」

ソレはまた、さっきの夢と同じように、更に大きく口を開けた。

もうだめだ・・・

と、思った時だった。

「いやああああ!」

声が出た。

ピピピピピピピピピピピピピピピ!

その瞬間、目覚まし時計の音が鳴り響いた。

私はベットから転げ落ちた。

「あ、あぅ・・。 」

そう。さっきのも夢だったのだ。

目覚ましを止め、時計を見る。

「ええええええ!八時!!!??」

私は、目覚ましを1時間セットし間違ったらしい。

・・・その後慌てて家を出たが、30分遅刻した・・・。

沙織ちゃんは、慌てて部屋を飛び出したから、気付いていなかったようです。

・・・部屋の床中が、ビショビショに濡れていた事に・・・。



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