でびノート(3) |
創作の怖い話 File.49 |
投稿者 でび一星人 様 |
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「…」 「…まあ、辛いなら何も話さなくてもいいよ。 …そうだねぇ。 ボウヤにもってこいのものが、 あるにはあるよ。 ちょっと待ってな」 そういうとおじさんは引き出しを開け、ボロボロのノートを一冊取り出した。 「ボウヤ、今、いくら持ってる?」 「えっ?」 「えっ?…じゃないよ。 お金だよ。 お か ね。 ここからはビジネスの話だ」 「えっ…あっ…」 オレはサイフをゴソゴソやった。 所持金は369円だった。 「…ふぅ… 369円か…。 本来なら、このノートはね。 90万円もする代物なんだよ」 「は、はぁ!? きゅ、90万円!!!? い、いりません!そんなもの!!! …そ、それに… ノートが破れたからって、代わりを買って済ますって… そういう事じゃないんです…」 「フフフ… まあまあ。 90万円は、定価だよ。 オジサンは、ボウヤからそんな大金を巻き上げようなんて思っちゃいないさ。 …とりあえず、100円でいいよ。」 「…えっ?100円?」 「あぁ。 100円だ。」 「そ、そんなんでいいんですか?」 オレはサイフから、50円玉1枚と10円玉4枚と5円玉1枚と1円玉4枚を取り出し、おじさんに渡した。 「オイコラボウヤ。 1円ちょろまかそうったってそうはいかないよ」 …ばれた… オレはシブシブ4円を回収し、5円玉を差し出した。 「あいよ! ありがとう。 とりあえず、手付け金の100円は頂くよ。 あとは、毎月100円づつの1万回払いだから」 「えっ…ええーーっ!? ろ、ローンですか!?」 「毎月100円くらい、良いじゃないか〜〜〜。 それに、ローンを組んだおかげで、ボウヤはおじさんとこれからも縁をもてるワケだよ? ありがたく思わなきゃ〜」 「は…はぁ…」 …出来ればこんな意味の解らないおじさんとは関わりあいたくないが… 「ま、とりあえず今日のところは帰りな。 …そのノートの説明書は、ちゃんと挟んであるから。 よ〜〜〜く読んでから使うんだよ!」 「…は、はぁ…」 オレはノートをカバンに入れ、店の出口に向った。 「…あっ、 そうそう」 後ろから、オレを見送るおじさんが声をかけてきた。 「ボウヤ、さっき、 【ノートが破れたからって、代わりを買って済ますって… そういう事じゃないんです…】 …って言ってたよね。 良い心だね。 そうなんだよ。 物っていうのは、同じように見えて、その一つ一つがそれぞれの心を持っているんだよ。 …その心を、忘れないようにね。」 「は、はぁ…」 オレはおじさんに頭を下げ、店を後にした。 おじさんが最後に褒めてくれたが、 別にオレはそんな風に深い意味で言ったんじゃない…。 …ただ単に、あのノートは母さんからもらった物だから… …他のノートとは違うって、 …そういう意味なだけだから…。 …なんだか、褒めてくれたおじさんに対して申し訳ないような、そんな気持ちになった。 ガチャッ。 「ただいまぁ〜」 家のドアを開ける。 部屋は真っ暗。 父さんは、今頃残業中だろう。 …そしてその残業が終わると夜のアルバイト…。 本当に父さんは頑張っていると思う。 オレはとりあえずシンクにたまっている洗い物を済まし、夕飯を作った。 今日はにくじゃがだ。 食材は、父さんがいつも帰りに買ってくる。 それらを適当に使って、オレが夕飯兼翌日の弁当のおかずを作るといったシステムだ。 一仕事を終え、フロに入り、 オレはベッドにゴロンと横になった。 「…ふぅ…。今日も疲れたな…」 目を閉じ、 そのまま眠ろうと思ったところで、さっき買ったノートの事を思い出した。 「…そういえば…あのノート、説明書が付いてるっておじさん言ってたな…」 オレは少し気になり、カバンを開け、ノートを取り出した。 …それにしても…超ボロボロのノートだ… ノートの表面にも、埃がこびりついている。 サッ サッ 埃を手で払う。 「…んっ?何か表紙に書いてあるぞ?」 オレは表紙に書かれている文字を読んでみた。 【でびノート】 表紙にはそう書かれていた。 こうして、オレとでびノートの物語が幕を開けた。 (其の弐) 「…なんだこれ…あのおじさんの落書きか?」 オレはなんだか無性に腹が立ってきた。 月100円といえども、金を払って買ったノート。 そのノートがこんだけ埃をかぶり、しかも表紙にわけのわからない【でびノート】とかって落書きされているのだ。 「…なんで…なんでオレはいつもこうなんだ…」 そう。 オレは騙されたのだ。 ひょっとしたら奥からヤ○ザ風のお方が出てきて10万ふんだくられるんじゃないかと怯えてしまったあの時のオレ。 そんなオレの弱さが、こんな一つの詐欺被害を生んだ。 世の中のあらゆる事件は、人間の弱さがきっかけで起こるのかもしれない。 ふとそう思った、中ニの夜…。 …いや、今はそんな中ニの夜とか思ってる場合じゃない。 とにかく、オレは騙されたのだ。 「…くそう…」 オレはもう寝ようと思い、布団に横になった。 チックタックチックタック… …眠れない。 …くそう。なんだか、騙されたイライラで気が逆立って眠れない。 オレはまたガバっと布団から這い出た。 そして、例の【でびノート】に目をやった。 【でびノート】の間から、チョロンと説明書らしき紙がはみ出ていた。 「…説明書か…」 …せっかく金を払ったんだ。 とりあえず、どうせ詐欺だろうが、説明書に目だけは通しておこうと思い、 オレはササっとノートからそれを抜き取った。 「…どれどれ…」 【 でびノート取り扱い説明書 一 でびノートは全60ページで構成された一冊のノートです。 ニ 一度記入された文字は、二度と消す事が出来ません。お気をつけ下さい。 三 使い方は、相手の名前を奇数ページの上部に記入した後、 見開きに記されている四項目に要望を書き込んで下さい。 翌日達成されます。 四 1日に使用出来るのは1回分のみです。 】 説明書の紙には、それだけが書かれていた。 …ハッキリ言って、よく意味が解らない…。 記入? 達成? 一回分? …なにやらややこしい事なのだろうか…。 考えてみても、頭の悪いオレには理解できなかったので、とりあえずノートを見てみる事にした。 そっとノートを拾い上げ、ページをめくる…。 ページを開けると、右下にページ数が書かれていた。 普通、ノートというのは表紙の裏側はページとしてカウントされないものだが、 このでびノートには、最初のページを開けた右下に【1】 その横の左のページの下に【2】と記入されていた。 →でびノート(4)へ ★→この怖い話を評価する |
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