呪苦

創作の怖い話 File.45



投稿者 ストレンジカメレオン 様





今 海岸沿いを車で走り、騒いでいる俺ら四人は大学生でみんな小学校からの仲間だ。

それぞれ大学は違うが、こうしてときどき集まって騒いで馬鹿をやっているが数少ない信頼できるメンツたちだ。

そして今 海岸沿いの旅館へと向かっている。一泊二日の旅行だ。

今おれの名を仮にAとする。

そして車を運転していて、俺らをいつも集めたり予定を組んだりしてくれるリーダー的存在のJ

マイペースで笑わせるのが上手いH

昔から素直でだれにでも優しいS

「最近 なんか面白い事件とかあった?」Jがみんなに聞く。

「ダルビッシュ結婚!!」すかさずHが答える。

「おいおい、お前ら自身のこと、聞いてんだよ!まったくHは!相変わらずだな!」

そんな感じに車内は笑いに包まれたまま旅館に到着。

俺から見て旅館の印象は古びていて、大丈夫かな…ここで、って感じだった。

「なんか風情があって、洗練されてない感じが良いね!」Sが言う。

「そうだな!俺らが馬鹿やるにはちょうどいいや!」

旅館を見てがっかり気味だった俺らのテンションはそんな一言でまた上がりはじめる。

だがこの旅館に決めてしまったことを一生後悔することになるのである。

荷物を部屋に置いたオレたちは早速、海へ向かった。

「めちゃ良いビーチじゃん!!人も少ないし!ここは穴場だな!」

オレら四人はこのビーチでこれでもかというほど騒ぎ、海を満喫して旅館へと戻った。

そして疲れ果てたオレたちは早めに眠りについた。

ふとオレは目を覚ました。

「ん…まだ暗いな…今 何時くらいだろ…?」

携帯をみると1時33分

「中途半端な時間に起きちまったな、トイレでも行くか」

部屋の中にトイレは無かったので共用トイレへと向かう。

暗い廊下を足場を確認しながら一歩一歩ゆっくり進む。

古びた廊下はギィ ギィと気味の悪い音をたてていた。

なんとかトイレにたどり着き、手探りで明かりのスイッチを探す。

「!!!!」

何かに今 はっきりとスイッチを探してる手を触られた感が…

「誰かいるんですか?」

「…………………」

返事は返ってこない…目をこらして周りを見ても誰かいる気配は感じない。

「気のせいか…それより明かり 明かり〜、あったこれだ!」

スイッチをつけると、ほのかに朱色の明かりがトイレを気味の悪いオレンジに染める…

「なんか気味悪いトイレだな〜 早めに部屋に戻ろう!」

オレは急いで用をたし、鏡の前で手を洗う…

!!……………霊感とか全くないオレだが後ろに確かに気配を感じる…

しかもかなり確信的なものだ!恐る恐る顔をあげ鏡をのぞく…

たしかにおれの後ろに人間らしきものが立っている…

「!!!!!!」

とっさに後ろを振り向く!だがだれもいない……

もう一度鏡をみる……

「ひっ…!!!!!!」

恐怖で声が声にならない…

鏡をのぞくと自分の姿が映ってなかったのだ……

半分を腰を抜かした状態で急いで部屋を戻ろうとするが………なに者かの気配はオレのあとをついてくる。

部屋へたどり着き

「おい!!みんな起きろ!!ここやばいって!!」

みんなは寝たまま全く起きる気配は無い。

「おいJ!!起きろって!H!! S!!」

体を揺さぶっても全く起きようとしない。

そうしてる間に何者かの気配はギィ ギィと鈍い音と共に近づいてくる。

どうしようもないオレは布団の中に身をひそめ息を殺した…

「ギィ ギィ…………」

(近づいてきた!!部屋に入ってくるな!!)

「ギィ ギィ………」音が止んだ…

一秒 二秒 三秒 四秒 五秒…………

(ふぅ助かったか…………)

次の瞬間…

「チャララララ〜〜〜」オレの携帯にメール着信が入る…

(やばい!!なんでこんなときに!!こんな時間にメールしてくんなよ!!)

しかし気配は部屋の前で消えたままである…

(もう大丈夫か…?)

一安心したオレはメールを確認する。

「なんだこのアドレス…誰からだ?」

内容は………………………

「隠れても無駄 呪 呪 呪 呪 呪 苦 苦 苦 苦 苦 苦」

……もう恐怖でオレの体は動かない………

布団の中で必死に息をひそめるだけだ!

結局この後、オレは一睡も出来ずに朝を迎える。

「ふぅ なんとか朝になってくれた…」

Jが目を覚ます。

「A!早起きだな!いつからそんな健康的になったんだよ!」

続いてH、Sも目を覚ます。

「おい!みんな聞いてくれよ!この旅館やばいよ!!昨日の夜によ〜…………………」

オレは昨日体験したことを詳しくみんなに話した。

「まじかよ!?夢見たんじゃない!?そのメールを見せてみそ!」

Hが言う。

オレはメールを見せようとする……がメールが見つからない…受信メールがなくなっているのだ…

「やっぱり夢だよ!A!安心しろよ!今こうしてみんな元気なんだから!疲れてんだな 今日は早めに帰ろう!」

Sの提案でオレたちは朝早くに地元に向かった。

「しかしAの話は夢のわりにリアルだったな!いつ怖い話するの上手くなったんだ?」

冗談気味にHが問いかける。

「だから、ほんと夢じゃないって」

「ってかJ!信号無視すんなよ!今 赤だっただろ!」

Sが言う。

「お!おい!!この車!ブレーキきかなくなってるぞ!!

エンジンもきれない!!!!!!」Jが叫ぶ!

「おい!J!冗談だろ!」

次の瞬間、正面の曲がり角から大型トラックが!!!!

「くっ!だめだ!よけきれな…………」

トラックとオレたちの車は勢いよくぶつかった……………

「ピッ ピッ ピッ ピッ」

機械音と消毒液の匂いでオレは目を覚ます。

「…ん…ここは…………病院?……」

体は動かない…顔を動かして辺りを見回す…

「そうだ……トラックとぶつかったんだ…………」

(はっ!J H Sは無事なのか!?)

「おい!J!!H!!!S!!!この部屋にいるのか!?」

………………………………返事はない。

コン コン。

誰かが部屋をノックをする。

「誰!?」

「Aさん、目覚ましましたか?入りますよ。」

医者が入ってきた。

「わたしが担当医のTです。気分は悪くないですか?」

「そんなことよりオレの友達三人いたでしょ!?無事なのか!?」

「……………………………お気の毒ですが三人とも即死でした…………

奇跡的にAさんだけ助かったんですよ、」

………………………………オレは呆然とした…あんなに旅行楽しんでたのに!!!

なんでこんなことにならなきゃいけないんだ!!

怒りと悲しみが爆発する。

「オレ ちょっと外行ってきます」

一人になりたかった。そう言って立ち上がろうとするが立つ感覚がつかめない。

「Aさん!!君は奇跡的に助かったが気の毒だが

君の下半身は切断するしかなかったから自分で立つことは出来ないんですよ!」

絶望の淵に落ちるオレ……自分で動くことさえ出来ないのか……………

「ハハハ……………なんだよ…この状況………」

涙がこみあげてくる。

「本当にお気の毒ですが今は治療に専念するしかないんですよ!!

今はゆっくり体を休めて自分の体を大切にしてください!」

そう言って医者は部屋を出て行った。

目をつぶろうとすると「チャラララ〜 チャラララ〜 チャラララ〜」

すぐ横の台の上でオレの携帯がなっている。

(あ!オレの携帯だ!誰からだ?)

必死に携帯へと手を伸ばし携帯をつかみ画面を見る…

「非通知だ!誰だ!?こんなときに!?」

「もしもしっ!!!」半分 怒りながらも電話に出る。

「誰だよ!?」

モザイクで使われるような低い声で返事が返ってくる…

「元気…………?」

「お前誰だよ!!!!オレの状況分かってんのかよ!!!」

今度は低い声で………………「まだまだこれからよ…………」

ツーツーツー、電話はここで切られた。

「なんだよ!!この電話!!気味悪いな!!!!………………………

まさか……………………」

オレはふと旅館で見たメールを思い出した。

ドンドンドンドン!!!いきなりすごい勢いで部屋をノックする音が聞こえる。

「だ、誰だ!!」

威嚇するようにドアに向かってオレは叫んだ!

「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!目覚ましたの!!??入るよ!!」

まだ中学生の妹が涙で顔をクシャクシャにして入ってきた。

お兄ちゃん!!良かった!!目覚ましたんだね!!」

「おう!下半身なくなちゃったけどな!ハハハ………それより親父とおふくろは!?」

「…………………………………お父さんね………フィッ………フィッ…………今日の朝ね……

フィッ…………お兄ちゃんと同じようにね………交通事故にあって…………」

涙声で妹は続けた……

「し………死んじゃって……………お母さんもね………フィッ……

それを追って 家で首つっちゃったの……………」

頭が真っ白になった………………………………………

なにも考えられなくなりそうだ……一体なんなんだ…

「だからお兄ちゃんは死んじゃだめだよ!

足が無くてもあたしがお兄ちゃんのこと守るから!!一緒に頑張って生きてこ!」

「お…おぅ 絶対オレ死んだりしないから!!だからってオレにそんなに気 遣わなくていいからな!

オレこんな体になっちゃったから迷惑かけることが多くなるだろうし……」

「お兄ちゃんこそ、あたしに気を遣わないで!あたし頑張るから!!」

妹の優しさだけが救いだ!おれはこんな体だが命がけで妹だけは守らなきゃ!!

オレは心に誓った。

「じゃあ お兄ちゃん!あたしは今日は家に帰るね!また明日も来るから!ゆっくり体休めてね!」

妹の無理につくった笑顔は痛々しいものであった。

そして出来るだけオレは早く元気にならねばと目をつぶって眠ろうとした。

「チャラララ〜 チャラララ〜 チャラララ〜」

携帯がなる。携帯に手を伸ばし画面をみる。

非通知だ…………………………

嫌な予感が頭をよぎる。恐る恐る電話に出る。

「も、もしもし…」

「…………元気?」

さっきの低いモザイク声だった。

「お前!!いい加減にしろよ!!!!こんなことして一体なに考えてるんだ!!!!!」

オレは怒鳴り声をあげた。

「………まだまだこれからだよ……………」

ツーツーツー

またここで電話が切れた。

一体何なんだ………オレが何をしたっていうんだ…………

ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンン!!!!!

「Aさん!!!Aさん!!!!妹さんが!!!妹さんが!!!」

ひきつった顔で医者が部屋へと入ってきた。

「妹がどうしたんだよ!!???」

「妹さんが今、大型トラックに巻き込まれて病院に運ばれましたが、

病院に着いた時にはもう……………………」

オレは唯一の救いも失ってしまった…………

涙も枯れ果てた…

これからオレはどうやって生きてけって言うんだ!!

「本当にお気の毒ですが今は治療に専念するしかありません……

Aさんのことは私達医者が責任をもって治療していきますので………どうか体を休めてください…」

そう言って医者は部屋を出て行った。

もうオレにはなにも無い…………なんで…………なんで…………………こんなことに……………

「チャラララ〜チャラララ〜チャラララ〜」

(奴だ!!!!)

おれはこれ以上無い怒りで電話にでる。

「おい!!お前!!何がしたいんだ!!オレの全てを奪いやがって!!」

「………………元気?」

「てめぇ!!自分がなにしたか分かってんのか!!?元気なわけないだろ!!」

「…………まだまだこれからだよ…………」

「まだまだこれからって!どうせ最後はオレのこと殺すんだろ!!?こっちはもう死ぬ覚悟出来てんだよ!!

お前に殺されるくらいだったら自分で死んでやる!!!」

そう言って電話を切った。

そしてオレは腕に刺さってる点滴の針を抜き、自分の手首の脈を何度も刺した…

……………何度も何度も…………激しい痛みを感じながら……………

おびただしいほどの血がオレの体から流れでて、意識が遠退いてく…

……………………………………………………(これですべて終わりだ……はは…)

「おい!!A!!A!!」

「ん……誰?」

「A!!!起きろよ!!」

はっ!オレは死んだはずじゃ!?

目を開けてみる。

「おいA!!起きろって!!もう昼になるぞ!」

Jがオレの顔をのぞいて言っていた。

「J!!!!生きてたのか!?」

「Aがなんかおかしいこと言ってるぞ!ハハハ!H!S!」

Jが旅館の部屋で帰る準備をしている二人に呼びかける。

「夢だったのか……いや良かった……みんなに会いたかったよ!!!」

「何 気持ちわるいこと言ってんだよ!早く起きて帰る準備手伝えよ!!」

「はいは〜い!!喜んで!!」

「確かに今日のAは気味わるいな…ハハハ」Sが苦笑いをする。

帰りの車の中、オレはみんなに悪夢の内容を詳しく話した。

「おいA、夢のわりにリアルだな!いつから怖い話するの上手くなったんだよ!」

Hが冗談まじりでオレに問いかける。

「まあな、ハハハ」

「おいJ!!今赤信号無視しただろ!!危ないだろ」Sが言う。

「おい!!この車ブレーキがきかないぞ!!!!!!」

Jの叫ぶ声がオレの頭に響き、オレは絶望的状況を悟った。



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