悲劇の仮面(3)

創作の怖い話 File.42



投稿者 ストレンジカメレオン 様





今回は前回の話から数十年前の過去にさかのぼります。

〈またもや警察官が警察官を殺害した後、自殺!!なにがあった!?崩れる警察庁への信頼〉

「やはり、この仮面は持ち主を引きつけつてしまう力があるようですね、桑田さん、

あんなに仮面をつけるのは危ないと知っていた小林さんも

仮面の犠牲者になり世間じゃ犯人扱いされてしまっている…」

「これで当初二十人編成されたこの捜査組も残ったのは、私と君の二人になってしまったな…

仮面自体を壊しても、次の日には、形を元に戻してしまう、

しかも壊した本人はより残酷な死体になる……一体どうすれば良いんだ!?

鈴木君、この事件に解決方法などあるのか!?

こんだけの犠牲者を出して分かったことと言えば、仮面の恐ろしさだけじゃないか!」

はっきり言って私は仮面の事件をもう放棄したかった…

鈴木君はとても優秀で情に熱く素晴らしい人材であった。このまま捜査を続け、

仮面に関わることは今までの事例から見てそれは私たち二人の死につながるとそう確信していた。

鈴木君ならもっと多くの事件で活躍し貢献することが出来る、そんな人材を死なせたくはなかった。

なにより自分自身、死ぬのが怖かった…

「桑田さん、そんなにヤケにならないでください!分かったことは沢山あります。

今までの事件、ひとつひとつ考察していけば、解決の糸口が見つかるかもしれません!

とりあえずこれを見てもらえますか?」

・仮面をつけた者は周囲の人間を殺害した後、自殺

・仮面の呪いは本人が寝ている時間に症状があらわれるため本人の自覚症状はなし

・仮面の呪いがかかっている場合、本人が起きている間、仮面は全く見つからず、体内に寄生しているらしい

・仮面自体を壊しても次の日には、元に形を戻してしまう

・また仮面を壊した本人はその日、何者かに残酷なかたちで殺害される、

・仮面を放置したところで、誰かが必ず仮面をつけてしまう、どうやら仮面は持ち主を引きつけるらしい

「鈴木君!このことから分かることはどうしようもないってことだけだろ!!

もう止めよう…仮面に関わるのは……」

「桑田さん、僕が言いたいのは、そうじゃないです、この一連の事件から仮面は呪いというよりは、

悪霊みたいなものだと思います。実際に仮面に人格があり、

ただ人を殺す目的だけにこういった仮面の存在になってるんだと思うんです!」

「それで、なにか解決手段は見つかったのか!?」

「解決するかどうかは分かりません…ただ呪いとなっている悪霊を仮面から引き離して

封印することが出来るかもしれません!」

私は心底、鈴木を尊敬した。こんな非現実的な状況でも冷静に解決の糸口を探していく、

私は尊敬と同時に嫉妬さえ覚えるほどだった。

「一体どうやって!?」

「一人の犠牲が必要になりますが……仮面の呪いがあらわれた時を狙うんです!

その時、仮面の人格は呪われた人間の意識に入っていると思われます、

その時に仮面をはずすことが出来れば、仮面の人格は仮面自体に戻ることが出来ず、

その本人の中に封印されるという訳です。」

「仮面自体の人格が呪われた本人から自由に外に出て、仮面にもどる可能性もあるんじゃないか!?

実際、仮面を壊した時、呪いの人格は仮面の外に出て、壊した本人を殺害してるんじゃないか…」

「桑田さん、多分その可能性はとても低いですよ、もし自由に呪いの人格が外に出ることが出来たとするならば、

仮面の呪いといった面倒くさい人の殺し方はしないと思います、

多分、人格が外に出ること出来るのは仮面を壊した時だけの特例でしょう!」

すごい!たしかにその通りだ!そう感じた直後、ひとつの問題に気付いた…

(一体誰が犠牲になるんだ!?犠牲者は多分……………

人格を支配されたまま自分に戻ることは出来ないだろう…)

「そこで桑田さん、僕がその役を務めます!桑田さんにはぜひ、一番大事である、仮面をはずし、

僕を捕らえるという仕事をお願いしたいと思ってます!」

「何を言ってるんだ!そしたら鈴木君は…」

「分かってます、これは、半分意地でもあるんです、僕はこの仮面の事件、

今まで犠牲になった人達のためにも必ず自分の手で解決したいんです!

だから!!僕にはこうするしかないんです!!」

鈴木には婚約者がいた…しかし、彼女もまた仮面の事件の犠牲になっていたのだ…

その時、鈴木の表情は今までに見たことのない顔だった…

戦国時代の武将たちはこういう表情で戦へと向かったのだろう、

「分かった…私がその役目を引き受けよう!!必ず成功させるからな!」

「ありがとうございます!」

鈴木は今まで耐えてた感情が溢れたのか涙を流し、礼を言った…

しかし礼を言わなければいけなかったのは私のほうであったのだろう…

「じゃ桑田さん、あとは頼みましたよ!全ては、桑田さんに懸かっているんですから!」

そう言って、鈴木は自ら、仮面をつけた。

その瞬間、仮面は鈴木の体内に吸い込まれるかのように消えていった…

「鈴木君……すまない…ありがとう…」

「桑田さんは謝る必要ないじゃないですか、それよりしっかりお願いしますよ!」

そしてその夜、鈴木の家を選び抜かれた警察官たちが包囲した。

そして私と数人の警察官は鈴木の部屋の前で、息を殺し、時間を待っていた…

「ガタッ!!」

部屋から物音がした。

「バタン!!」

私はドアをすぐに開けた、

そこにはたしかに鈴木が立っていた…仮面をつけて…

「す、鈴木を取り押さえるんだ!!」

周りの警官が一斉に鈴木を取り押さえた。

「よし、そのまま押さえとけ!!今から仮面をはずす!」

「桑田さん!!早く!凄い力でふりほどかれそうです!!」

私は震える手に力を込め、仮面に手を伸ばした。

そして鈴木から仮面をはずした…

「返せ……返せ……………私の仮面を………返せぇぇっっ!!!!!!」

鈴木の中にはたしかに鈴木でない人格がいた……

その形相はというとまさに鬼であった。

こんな表情は普通の人間ではつくることは出来ない。

まるで悪い夢を見てるのではないかと、そこに居合わせた者は皆、そう思ったであろう。

鈴木はこの後、収容所へ運ばれた。

結局、やはり鈴木本人の人格が鈴木の体に戻ることはなかった…

呪いの人格が鈴木の体を支配し続けていた…

「仮面を!!仮面を!!私の仮面!返せ!!」

と牢屋の中で暴れ続けた。

一方、仮面は完全に呪いがなくなり単なる仮面となっていた。

そして仮面はある神社に預けられ、保管されることになった。

それから一週間後、鈴木が牢屋の中で意識を失ったとのことで緊急入院することになった。

厳重な警備の中、病院へと運ばれたが、鈴木の姿をこれ以後見ることはなかった……

そう鈴木は病院から姿を消したのだった。

その後、鈴木を捜索するも誰も鈴木を見たという者はいなかった…

それ以後、奇怪な殺人事件はなくなり、仮面もその姿を見せることは無くなった。

鈴木という、かけがえのない警官一名を代償に……

また多くの犠牲者と共に……

結局、仮面の事件捜査班の中で生き残ったのは私だけだった…

私はこの事件の犠牲となった警官の分までと、がむしゃらに仕事に取り組んだ。

そうしなければ、自分は自分を許すことは出来なかったのだろう…

もう二度とこのような悲劇を繰り返したくなかった。

気がつけば、私は年を重ね、警視総監という立場になっていた。

そんな日を繰り返していたある日のことである…

〈殺人現場に仮面をつけた不審者の目撃情報〉

私は、あの仮面の呪いで警官同士が殺し合った悲惨な事件を思い出した。

(まさかあの時の仮面のわけないよな…)

私は仮面というキーワードを聞き、平静を保つことは出来なかった。

私はすぐに仮面が見つかり次第、回収を命じ、その写真を警視庁まで送ることを指示した。

そして浪人生の自殺と共に仮面は見つかった。そして写真が送られてきた…

私は封筒を開け、写真を見た…

私の頭の中は一瞬にして真っ白になった…

(忘れもしない…この仮面…この気味の悪さ……)

写真を見るだけで吐き気がしてくる…

またこの仮面を深く捜査すれば多くの犠牲が出てしまう…

冷静さを失った私はすぐに仮面捜査の打ち切りを命じた。

捜査の打ち切りをしたところで犠牲を減らすということは出来ないと知りつつも……

案の定、その署では警官が殺される事件が起きた…

(やはり私の指示は間違っていた……結局、犠牲を出してしまっている…)

私はずっと迷っていた……

またあの時のように仮面の呪いを誰かを犠牲にして、封印するべきなのか……

封印したとしてもまた今回のように復活してしまう可能性もある……

そんな時、一人の警官が警視庁を訪ねてきた。

その警官は、仮面捜査をして、何故今回の事件に打ち切りを出したかを聞きに来たという。

私は彼をすぐに私の場所へと呼んだ。

「〇〇署の稲葉です!失礼します!」



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