復讐者

創作の怖い話 File.39



投稿者 ナタガキサユマ 様





会社のお昼休み。

私は会社の屋上でお弁当を食べていた。

すると……

『オ、マ、エ、ガ、ハ、ン、ニ、ン、カ?』

と言う声が後ろから聞こえた。

私は驚いて後ろを振り返った。

そこには………

鮎川「なんだぁ……佐々木さんか。脅かさないでくださいよ…」

佐々木「屋上でランチ?相変わらず好きね屋上が」

鮎川「室内だとエアコンが効き過ぎて寒くって……」

佐々木「ああわかるわかる」

そういって佐々木さんは私の横に座った。

佐々木「そういえば、鮎川さん、髪切ったの?イメチェン?」

鮎川「はい。夏なんで。眼鏡もかけてみました」

佐々木「似合ってる似合ってる。最初は誰かわかんなかったよ。

へええ、鮎川さんイメージ変わるね……ははーん、さては、前に言ってた気になる男性と会うんでしょ?」

……鋭い。

と、私は思った。

佐々木さんは私の会社の先輩で5才年上。

噂話が好きな女性だ。

かなりの耳年増である。

鮎川「別にそんなんじゃ……それより……佐々木さんがさっき言ってた『オマエガハンニンカ』ってなんですか?」

私は話題を変えるため、話を振った。

佐々木「えっ!?鮎川さん知らないの?」

佐々木さんはオーバーに驚く。

鮎川「知らないです。どういう意味なんですか?」

佐々木「今、この街で流行ってる都市伝説だよ」

鮎川「都市伝説?」

佐々木「そう……聞きたい?」

佐々木さんがそう言った。

私は別に聞きたくなかったんだけど、佐々木さんの『聞いてほしそうな顔』が目の前にあったので頷いた。

鮎川「…聞きたいです」

佐々木さんはその言葉を聞いて、ゆっくり話し出した。

佐々木「これはね………『沙織』という一人の女性のお話……………

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

ーーーー

由香里、メール【ごめん。もうすぐ着く】

親友の由香里からのメールを見て、沙織は携帯電話をバッグに入れた。

もうかれこれカフェで1時間は待っていた。

これが彼氏なら2時間くらい待てるけど、残念ながら沙織に彼氏はいないし、待ってるのは女友達。

けど、沙織は由香里を待つのは苦ではない。

由香里は沙織にとって、大切な友達。

親友の中の親友。

そりゃ、遅れて来た事に、ちょっとは怒りもするけど……

由香里「遅れてごめんなさい沙織。本当にごめん!!」

…………これだ。

この小動物みたいに小柄で、かわいい笑顔をされて謝われると、沙織は怒る事ができない。

沙織「もう……仕方ないなあ……」

由香里「ありがと!!だから沙織は好き」

沙織「はいはい」

と、こんな風に許してしまうのだ。

沙織「仕事は大丈夫だった?」

由香里「うん。なんとか」

沙織「休みは取れそう?」

由香里「多分大丈夫。もし取れなかったらズル休みする」

沙織「お、やる気が感じられますね由香里君」

由香里「当然だよ沙織君」

そういって沙織達は笑った。

沙織達がカフェで待ち合わせした理由。

それは3日後に沙織達は『海外旅行』に行くからである。

沙織「あー早く行きたい!!イタリア!!待ち遠しいよ」

由香里「そうだね。観光名所たくさくあるから」

沙織「私はいい男がいないか期待してるの!!……由香里は……彼氏ができたからいいけど……私はフリーだし」

由香里「ごめん」

沙織「なんで謝るのよ!(笑)なんか私が惨めになるから謝んないでってば」

沙織はそう言って笑った。

由香里には最近彼氏ができた。

今まで馬鹿な男どもに泣かされてきたから、今回こそいい彼氏だといいんだけど……、と沙織は思う。

沙織「で?いつ会わせてくれるの由香里の彼氏に」

由香里「ごめん。彼、あんまり人に会いたがらないみたいで……」

沙織「そうなの?彼は優しい?」

由香里「うん、大丈夫」

沙織「由香里がいいならいいよ。いい恋しろよ?」

由香里「沙織もね」

沙織「ほっとけ(笑)」

そう、カフェでお喋りしながら、沙織達は時間を過ごした。

その時、ふと沙織は由香里に気になる事を聞いた。

沙織「そういえば由香里、旅行の準備はした?」

由香里「……してない」

……はぁ……これだ………

沙織「もお……準備しときなよ。これだからO型は……あと3日しかないんだよ?」

由香里「早くない?まだ3日あるんだよ」

沙織「何言ってるの!旅行は旅行の準備が楽しいんじゃん。旅行の醍醐味は、旅行前の準備だよ!」

由香里「旅行しに行く意味ないね、それじゃ」

沙織「それを言っちゃー終しめーよー」

沙織の江戸っ子風のセリフに由香里は笑った。

笑った後、しばらくして由香里は、少し淋しそうな顔をして言った。

由香里「ありがとう…ね。いつも助けてもらって…」

由香里がそう言ったのは理由がある。

由香里は人見知りが激しく、他人との接触を嫌う。

そのため、孤立しがちなのだ。

昔から沙織は由香里の側にいた。

沙織なりに由香里を孤立させないよう、淋しくさせないよう由香里を盛り上げてきたつもり。

由香里は沙織の親友なのだ。

沙織「何言ってんの。いつでも助けてあげるから気にしないで。あっ……今は彼氏がいるから私は必要ないかな?」

由香里「そんなことない。沙織がいないと私は淋しいよ」

由香里がそう言った。

(あーあ、私が男だったらよかったのに……)、と沙織は思う。

沙織「暗い顔しないの。旅行が待ってるよー。楽しくいかなくちゃ」

由香里「……そうだね…ごめん」

沙織「旅行用のスーツケースは?準備した?」

由香里「……ごめん……まだ」

沙織「もぉ……じゃあ明日私が持ってるスーツケース、私が由香里のマンションに届けるから。準備しとくんだよ?」

由香里「ほんと沙織ってA型だよね。準備万端、というか、キチッとしてる」

沙織「由香里がオットリしすぎなの!」

時間もそろそろといったところで、沙織と由香里はカフェを出た。

由香里「あ、沙織。これマンションの鍵」

沙織「了解。ちゃんと準備するんだぞ」

由香里「…うん」

そう返事した由香里の顔は暗かった。

沙織「由香里?どうかした?」

由香里「……沙織……あのね………最近ね……家が怖いの……何か寒気がして……

誰かに見られてる気がして……ちょっと怖いんだ私……」

由香里がそう言った。

由香里は霊感が強い。

前も、『霊がついてるから』ってお払いしに行った事もある。

沙織は幽霊なんて信じない。

けど由香里は嘘はつかない。

だから沙織は由香里の事は100%信じていた。

沙織「大丈夫?今日、私の家に泊まる?」

由香里「うううん、大丈夫……多分私の勘違いだと思う。それに明日も仕事だし」

沙織「そう……けど何かあったらすぐ連絡するんだよ?」

由香里「うん、ありがとう」

由香里から鍵を受け取った後、沙織達は別れた。

次の日、沙織が起きると由香里から着信記録が残っていた。

沙織「あ……由香里からだ」

着信記録のあと、メールが来ていた。

由香里、メール【ゴキブリが出た……助けてーー(笑)】

………

沙織「くだらんことでイチイチ連絡すなーー!!」

などと、沙織は一人でツッコミをいれた。

沙織は起きると、昨日約束したスーツケースを届けるため、由香里のマンションに向かった。

沙織「……やっぱりいいとこ住んでるよね、あの子」

沙織はマンションを見上げた。

24階建てのマンション。

沙織はオートロックを鍵で開けて、スーツケースをガラガラ押しながら中に入る。

エレベーターで13階を押した。

由香里の部屋に到着して、沙織は鍵を開ける。

いつも通り綺麗な部屋が出迎えてくれた。

沙織「O型のくせに部屋は綺麗なんだよね、由香里は」

結構私は血液型で性格を判断する。

だが意外に当たってるので無視できない。

沙織は部屋に入る。

小さな雑貨。

ぬいぐるみ

香水の匂い。

好きなバンドのポスター。

相変わらず子どもっぽい部屋だ、と沙織は感じた。

次の瞬間、沙織は悪寒に震えた。

沙織「………」

何か嫌な感じがする……。

この部屋……嫌だ……。

……こわい。

沙織「霊感ないのに……私……」

沙織は呟いた。

沙織はスーツケースを置いて部屋を出た。

沙織「……ゴキブリのせいかな?」

沙織はわざとおどけるように言って、マンションをあとにした。

旅行前日の朝。

沙織は会社に出勤していた。

隠れながら、由香里とメールで明日の旅行の計画を組んでいた。

沙織、メール【じゃあ決まりね。明日は朝7時に出発。】

由香里、メール【了解ー。楽しみー!】

沙織は明日の旅行がきっと素敵な思い出になると信じていた。

なのに……

仕事が終わり、会社から家へと沙織は帰った。

家に帰った後、沙織はまだ細々とした準備をしていた。

すると携帯電話にメールが来た。

由香里、メール【ごめん沙織。今日仕事が遅くなりそう。そのまま沙織ん家に泊まっていい?】

由香里からのメールを見て沙織は返信する。

沙織、メール【いいよ。旅行前日だけどもう今日から旅行だね。夜更かし決定!】

由香里、メール【ごめんね。

それと、もうそのまま沙織ん家から空港に行くから私の家からスーツケース持って来てくれないかな?本当ごめん。】

沙織、メール【了解。準備は出来てる?】

由香里、メール【出来てる。】

由香里からメールをもらったので、沙織はスーツケースを取りにマンションに向かった。

マンションに着き、13階を押す。

エレベーター内が静かすぎてちょっと怖い。

由香里の部屋を開けて中に入る。

スーツケースが準備万端で置かれていた。

沙織「よし、じゃあ運ぶか」

しかし、次の瞬間、沙織はまた悪寒を感じた。

沙織「……なんなんだろう……この寒気……」

鳥肌がたつ。

夏なのに?。

……とにかく、早く運んでこの場所を離れる事にした。

部屋を出てエレベーターに乗る。

沙織「こりゃお払いしたほうがいいかも……」

沙織はエレベーター内で呟いた。

すると、

ゴトンッッ!!

とエレベーターが一瞬揺れた。

沙織「……も…勘弁してよ(涙)」

1階に無事に着くと猛ダッシュで車に向かう。

路駐していたミニバンの車のトランクを開けて、スーツケースを中に入れた。

急いで車を出して、沙織は家に帰った。

時刻は夜、10時過ぎ。

沙織にメールが届いた。

由香里、メール【仕事終わった。でも家に忘れ物したから取ってくるね!】

沙織「もお……ドジだなぁ由香里は。私に言えばスーツケースと一緒に取ってきたのに」

沙織はそう思い、台所へ向かう。

沙織「さて、相方のために晩御飯でも作ってやるか」

沙織は料理を始めた。

しばらくして着信音が鳴った。

相手は由香里だった。

沙織は電話に出た。

沙織「もう由香里。早く来なさいよ。晩御飯が待ってるよ」

由香里「………」

沙織「?……由香里……?どうしたの……」

由香里「………」

沙織「由香里?由香里ねえ、返事して?大丈夫?」

由香里「……………タスケテ………」

プツ

プ-…プ-…プ-…

沙織「由香里!?由香里!?」

電話は切れていた。

ただ事ではないと感じた沙織は由香里のマンションに向かう。

マンションに着いて、車を停めた。

車を降りて、急いでエレベーターに乗る。

13階を押した。

(由香里、由香里、無事でいて!!)

エレベーターを降り、由香里の部屋まで来た。

急いでドアを開けた。

沙織「……何……ここ……」

部屋は血だらけだった。

部屋中に血がついている。

沙織「うぇ!」

血の匂いと香水の匂いが混じり合い、嫌な臭いがする。

沙織は気持ち悪くなり吐きそうになった。

バスルームに向かう。

そこには血だらけの男性が倒れていた。

沙織「ッッッ!!!」

眼鏡を落とすほど沙織は驚く。

声にならない叫び声をあげる。

もう頭の中はパニックだった。

なに?なに?なに?何?何?何?

なんなのよ!!!!!

部屋に電子音が鳴り響いた。

慌ててる沙織にメールが届いていた。

由香里、メール【連れ去られた。助けて】

沙織「由香里!?」

沙織は急いでメールを返した。

沙織、メール【どこにいるの?無事?】

由香里、メール【高宮通りを走ってる】

そのメールを見て沙織は少し冷静になる。

由香里は無事だ。

でも危険な状況ではある。

犯人と闘わなくてはならない。

沙織はキッチンに向かい、包丁を持った。

沙織「由香里待ってて。必ず助けるから」

沙織は落ち着くと、警察と救急車を呼んだ。

沙織はマンションをあとにした。

沙織は車を走らせていた。

ちょくちょくメールを送り、由香里からの返事を待った。

由香里、メール【山林橋を渡って右に曲がった】

沙織「山林橋を右ね」

由香里、メール【十字路を真っ直ぐ行って次の信号を左】

沙織「信号を左ね」

由香里、メール【暗いよ、狭いよ、怖い、怖い、助けて、助けて、もうすぐ近くにいるから、沙織助けて】

沙織「由香里!大丈夫。大丈夫だから!!私が必ず助けるから。絶対に!!」

沙織は無我夢中だった。

沙織にとって由香里は友達であり、親友であり、妹のような存在。

由香里のためなら自分は死んでも構わない。

それほどまでに大切な存在だった。

車を走らせて1時間。

由香里のメールの通りに沙織は走らせた。

由香里、メール【私はここにいる】

沙織「由香里がいるのは……ここなの?」

沙織の目の前にあるのは

N県警本部。

警察署だった。

沙織は車を降りて警察署内に向かう。

包丁を持ったまま。

警察官「君!!何してるんだ!!」

沙織「由香里が……由香里がここにいるの……由香里?どこ?由香里!!」

包丁をもって沙織は叫んだ。

警察官達が沙織を取り囲む。

一瞬にして沙織は取り押さえられた。

沙織「はなせーー!!由香里ーー!!由香里を私は助けるんだ!!邪魔するな!!」

8月19日

沙織は逮捕された。

沙織は警察の取り調べを受けていた。

取り押さえられたせいで、ショートカットの髪はボサボサ、眼鏡は割れ、洋服もかなり汚れていた。

取り調べ室には刑事が三人。

一人の刑事Aは優しい。

もう一人の刑事Bは恐い。

もう一人の刑事Cはただ黙っていた。

優しい刑事Aは「ゆっくりでいいから話を聞かせてくれるかい?」

、と沙織に言う。

沙織はとにかく事情を話す。

すると今度は恐い刑事Bが怒鳴りだす。

刑事B「ふざけるなよ!!話があわねーだろが!!」

刑事A「まあまあ、この子は悪くないんだから」

そうやって三文芝居をやっていた。

刑事達のやり方を沙織は知っていた。

臆病な奴は刑事Bにビビって罪を認める。

意気がってる奴は刑事Aの優しさに釣られて罪を認める。

しかし沙織は決して罪を認めなかった。

沙織「由香里から電話があったんです。助けてって……

だから私は由香里の家に向かいました。家には血がいっぱいで……」

刑事B「だからいい加減にしろよ!!」

刑事A「まあまあ、落ち着いて」

この繰り返しだった。

沙織はとにかく由香里が心配だった。

沙織「あの……由香里は……由香里はここにいますか?」

沙織がそう言うと、今まで黙っていた刑事Cが話し出した。

刑事C「ええ、いますよ」

沙織「よかった……由香里はここにいたんですね」

刑事C「……今は混乱してるだろうから言わないつもりでしたが……仕方ないですね。

……『はい』か『いいえ』だけでいいので答えてください。質問します。

……警察と救急車をマンションに呼んだのは貴女ですね?」

沙織「……はい」

刑事C「マンションの13階の由香里さんの部屋に男性が倒れていた…」

沙織「……はい」

刑事C「沙織さん。貴女は、由香里さんの『助けて』という電話を聞いて、マンションに向かったんですよね?」

沙織「……はい」

刑事C「由香里さんと最後に会ったのは2日前ですね?」

沙織「……はい」

刑事C「……なるほど……わかりました……」

わかったと言ったわりには刑事Cは目を細めた。

沙織「…………あの………由香里はここにいるんでしょ?……私、会いたいんです」

刑事C「…それは無理ですね。鑑識に回すので」

沙織「……鑑識に回す?……どういう意味ですか?……由香里はここにいるって」

刑事C「ええ、いますよ」

沙織「ふざけないでください!!」

刑事C「ふざけてなどいないですよ。由香里さんはずっといました。貴女とね」

沙織「……私と?……どういう……意味……」

刑事C「……貴女が車に積んでいたスーツケースの中から……

由香里さんが発見されました。…………………バラバラの状態で……」

バラバラの……………状態……?

沙織「……え……あ…………う……」

刑事C「詳しく話しましょう」

刑事C「沙織さん。貴女が最後に由香里さんに会った次の日、

貴女は由香里さんの部屋にスーツケースを運んでますね。これはマンションの防犯カメラに映ってます」

(……持って行った)

刑事C「そして今日、防犯カメラには、由香里さんの部屋からスーツケースを持って、

慌てて出ていく貴女が映ってるんです。この期間、由香里さんの部屋を出入りしたのは、貴女だけ」

(そう……悪寒がして……慌ててスーツケース持って出て行った)

刑事C「その時にはもう、スーツケースの中にはバラバラになった由香里がいた。……貴女が運んだんでしょ?」

(私が………運んだ?……由香里の……バラバラの……死体を……?

ずっと車に積んで……由香里を捜してた……の?)

沙織「……違う……私じゃない。だってメールも…電話だって今日、由香里から『タスケテ』って……」

刑事C「由香里さんが死んだのは、もう2日以上前です」

「!!!??」

(2日前?)

(カフェで別れた後、由香里は死んだの?)

(由香里が言ってた。)

(『誰かに見られてる気がする』って……)

(もし……)

(もしそれが、幽霊じゃなく、人間で、由香里の家に潜んでいたら?)

(由香里を殺して……)

(………バラバラにした。)

(次の日、私がスーツケースを届ける。)

(その時、犯人はまだ……)

(由香里の部屋の中にいた……)

(あの寒気は……)

(悪寒は……)

(幽霊じゃなく……)

(生きた人間の狂気だったの?)

(犯人はバラバラの由香里をスーツケースに詰めた……)

(私がスーツケースを取りに来た時も、犯人は息を潜めて……私を窺ってたの?)

(そして私はずっと……)

(バラバラになった由香里を積んで、由香里を捜してたの?)

(私が最近、由香里としていたメールは……)

(由香里のふりをした犯人……)

(犯人からのメール……)

(由香里の携帯電話で私にメールしてたんだ……)

(私は………犯人に嵌められたんだ……)

(ずっと………ずっと由香里は私のそばにいたんだ)

(バラバラの状態で………)

沙織「………由香里の家で倒れていた男はどこにいますか?」

刑事C「そんな奴はいなかった。少なくともマンションの防犯カメラには映ってない。貴女が最後」

沙織「……それは最近でしょ……

もっと前の映像と新しい映像を見れば由香里の部屋に入ったまま出てこない男がいるはず。

そいつが犯人だ!!」

刑事C「そこまでする必要性はない。犯人は目の前にいるんだから」

沙織「私じゃない!!由香里を返せ!!」

沙織は叫んだ。

沙織の目から涙が零れる。

由香里からの『タスケテ』の電話。

聞き間違うはずない。

あれは由香里の声だった。

いつも小動物みたいにして、笑顔がかわいい、私の親友。

由香里から来たメール。

【暗いよ、狭いよ、怖いよ、助けて、沙織、助けて……】



スーツケースに入れられてた、由香里からの必死のSOS。

なんで私は気付いてやれなかったの?

なんで……

なんで…………

なんで!!!

許さない……

許さない許さない………

許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!!!!!!

私は絶対に犯人を許さない………

コロシテヤル。

佐々木「……ってお話」

佐々木さんが言い終わると私は口を開けていた。

鮎川「すごいですね……その都市伝説」

佐々木「でしょ。それで人々に『オマエガハンニンカ?』って聞いていくの。答えを間違えたら死亡」

鮎川「そう言えば、その捕まった沙織って人はどうなったんです?」

佐々木「獄中で自殺したらしいよ?まあ噂だし、都市伝説だから」

鮎川「ちょっと怖い……。昼間っからそんな話を……」

佐々木「鮎川さんも気をつけてね。殺されないように」

鮎川「やめてください。気持ち悪い」

佐々木「じゃあ仕事に戻ろっか」

鮎川「はい」

私と佐々木さんは仕事に戻った。

佐々木「それじゃお疲れ様」

鮎川「お疲れ様でした」

私は挨拶をして別れた。

それにしても……

『オマエガハンニンカ?』

か……

なんて答えたら大丈夫なんだろ?

考えてなかった……

佐々木さんに聞いとけばよかったな。

それより、今日は気になる男性とデートなのだ。

いつもと違う私を見たら驚くかな?

イメチェン成功してたらいいけど……

待ち合わせ場所には、先に気になる男性が来ていた。

………私を見て驚いてる。

そりゃそうよね?

懐かしいでしょ?

昔みたいに髪をショートにして、眼鏡をかけて……

貴方があの時、部屋から覗いていた人物が、目の前にいるのだから。

あの時、部屋で嗅いだ香水の匂いが男からする。

……あの子はね、こんな悪趣味な香水はつけないの。

この香水の匂いと、血の臭いで嫌な臭いがするのよ?

知ってた?

知らないなら貴方の血で試してみる?

あ、でもルールは守らないとね。

都市伝説になってるみたいだし。

貴方がちゃんと『答え』たら、生かしておいてあげる。

『オマエガハンニンカ?』

って何千回聞いてきただろ?

もう飽きちゃったな。

そうだ。

一回くらい別のセリフ言ってもいいよね?

隠れシナリオみたいで嬉しいでしょ?

『答えられるなら答えてみろよ?いいな?』

私はそう思い、男に言った。

鮎川 沙織

「……牢屋に入る?それとも、スーツケースに入る?……どっちがいい?」



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