古着屋の仮面

創作の怖い話 File.37



投稿者 ストレンジカメレオン 様





大学受験を控えて、浪人中のオレは、ストレスと不安を抱えた日々を送っていた 。

息抜きに週二回のバイトをして、そのお金で服や参考書を買っていた。

ある日の予備校帰り、オレはよく通ってた古着屋に立ち寄った。

(おっ!!このジャケット!なかなか良いな!サイズも合いそうだし買っちゃおうかな!)

オレは悩んだ結果、ジャケットを買うことに決めた。

ジャケットをレジまで持っていって会計を済まそうとするとレジの奥にひとつ気を引くものが飾ってあった。

「店員さん、その奥にある仮面って売り物じゃないんですか?」

オレがそう尋ねると…………………

「これね、前の店長が大事にしてた物らしいんだ、

なんか気味悪いけどオーラあるだろ?だから一応飾ってるんだよ。」

「えっ!じゃ前の店長さんは、その仮面大事にしてたのに置いていっちゃったんですか?」

「いや……前の店長は自殺したんだよ………その時、そばに置いてあったのが、

この仮面なんだ…だから相当大事にしてたんじゃないかな、もし君がこの仮面欲しいなら譲ってあげるよ!

オレは君がここの常連客だって知ってるしね!」

「そうなんですか………え!!良いんですか!?

こういうの部屋に飾りたいと思ってたんですよ!」

オッケイ!じゃこのジャケットと一緒に袋に入れておくよ!」

「どうもありがとうございます!!オレもこれ大切にします!」

インパクトのある飾り物が欲しいと思ってたオレは得をしたな、と思いつつ店を出た。

その帰り道にオレは好きなアーティストが新しいアルバムを出したのを思い出し、CDショップに立ち寄った。

「このアルバム欲しいんだよなぁ!!今日リリースされるの忘れてたよ、

ジャケット買っちゃったからお金無いしなぁ、残念だが今日は我慢しなきゃな…」

アルバムが欲しい気持ちを抑えながら、とぼとぼと店を出て、オレは家へと帰った。

部屋に着いたオレは早速ジャケットを着てみる。

(やっぱりこれ良いな!買って正解だ!CD買えなかったのは残念だったけど!…

…………………………………………………………………………あとこの仮面……

………やっぱインパクトあるなぁ…)

仮面見ていると、そのまま部屋に飾りつけようと思ってたが、急につけてみたくなる衝動にかられた…

気づけばこの奇妙な仮面、悪く言えば気味の悪い仮面に手を伸ばしていた…………

(おっ!すごいフィット感だ!サイズ、オレの顔にぴったしだ!ちょっとどんなもんか鏡で見てみよう。)

そう思ってオレは洗面所の鏡の前に立った。

(あれっ…………………………?)

そこに映っていたのは、仮面などつけてない自分の姿であった…

(おかしいな……確かに仮面をつけてきたはずだったのに…部屋に置いてきたかな …?)

部屋にもどってみても、仮面はどこにも無かった…

(せっかく古着屋のお兄さんにもらったのにもうなくしちゃったよ……おかしいな

……たしかにさっきまであったのに……………)

オレはすぐに探すのを諦めて、今日一日の復習を始めた。

(そろそろ寝る時間かな、最後に英単語だけチェックして今日は寝よう)

翌朝………

朝、目覚めると、あるものが部屋に置いてあった。

(これは!!オレが欲しかったアルバムだ!なんでここにあるんだ!

昨日はお金が無かったから買わなかったのに…………)

不思議に思いつつも、深くは考えずオレはそのCDを早速聞きながら、予備校へ行くための支度をした。

支度を終え、予備校へ行き、全ての授業を終えると、携帯に一通のメールが来ていた。

高校の時の友達からだった。

〈久しぶり!!一緒にご飯食べに行こうぜ!〉

そんなに仲が良かったわけではないが、時々コイツからはメールが高校を卒業してからも届いていた。

だが大学に受かったコイツからのメールは冷やかしのメールが多く、あんまり好きにはなれなかった。

けれど普段あまり友達と話す機会もなく、勉強のストレスが溜まっていたオレは一緒に行くことにした。

「久しぶり!!勉強の調子はどうだ?今度も落ちたらシャレになんないからな!ハハハ!」

相変わらず人の気持ちを考えない発言だ。

「まあ、ぼちぼちかな…確かにそりゃシャレにならんよな…」

「そんな暗くなるなよ!大学は楽しいぞ!!オレなんか毎日が楽しくて楽しくて!!

新しい彼女も出来たんだ!ちょっと写メあるから見てくれよ!」

こんな感じにずっとコイツの自慢話だけで時間は過ぎていった。

「あー楽しかった!オレ明日大学、一限から授業だからそろそろ帰るな!まあお前も頑張れや!」

奴の自慢話を聞くだけで終わってしまった。

(なんなんだよ!!アイツは!!結局自慢しに来ただけじゃないか!!人の気持ちも知らないで!

もうアイツとは会うもんか!!まったく今日も行かなければ良かったよ!)

家に帰り部屋に着くと、疲れたオレはベッドに倒れ込んで、そのまま寝てしまった。

次の朝、

(あー……昨日は復習もしないで寝ちゃったよ…)

ふとテレビをつけ、朝のニュースを見ると、信じられない事件が起きていた………

昨日、会ったばかりの友達が何者かに殺害されたのであった……

目撃者によると、殺害現場の近くで気味の悪い仮面をつけた男がうろついていたという………

(気味の悪い仮面!?)

オレは古着屋でもらったがすぐにどこかに消えてしまったあの仮面を思い出した。

(まさか………ね……)

仮面というキーワードに動揺を隠しながら、朝の支度を始めた。

だがオレの中では、殺された奴に対していい気味だ、という気持ちもあったのも事実だった……

(今日は予備校の後にバイトだから、バイトの準備もしなきゃな!)

コンビニのバイトをしていたオレはいつもより早く授業を終えると、バイト先へと向かった。

この日、オレはバイトの仲間とくだらないことでケンカを始めてしまった…

昨日のこともあり、ストレスの溜まっていたオレは、

働かずに奥でマンガばかり読んでいるバイト仲間に対し、

「マンガばかり読んでないで、少しは手伝えよ!!」

と注意すると、

「うるせぇな!!この落ちこぼれが!」

こんなことからケンカに発展し、嫌な気持ちのまま、オレは家に帰った…

(なんでアイツはあんな言い方しか出来ないんだ!!もう本当にストレス溜まるよ!!

もう寝よう!思い出すだけで頭が痛くなる!)

次の朝……………

昨日ケンカしたバイト仲間が殺害されたというニュースがあった…………

そして防犯カメラでの映像が流れ、犯人の姿が映し出された…

コンビニに仮面をつけた男が入ってきた……

(この仮面は!!古着屋でもらった仮面だ!!)

嫌な予感が頭をよぎる……

オレは映像を見て、あることに気づき背筋が凍りついた…………

仮面の男の服装は、今のオレの格好とまったく同じものであったのだ……………

………

(まさか!!オレなのか!?この仮面の男は!?)

不安と恐怖に包まれ、オレはこの日、勉強に集中することが出来ずにいた………

……

(こんなんじゃ勉強出来ない……集中も出来ない……なんでこんなことに……あの仮面のせいだ

………………そうだ!すべてあの仮面のせいだ!!

あんな呪われた仮面を古着屋の店員がよこしたからだ!)

古着屋のあの店員に対し憎しみの気持ちがオレの中で溢れだしてきた………

(あいつが!!あんな気味の悪い仮面をよこすからだ!

あんなことさえなければオレは、こんなことにならなかったはずだ!!)

ふとオレはここで我に返った……

(やばい!!こんな衝動的な気持ちを起こしてしまったら仮面の呪いで、

あの店員も殺してしまうかもしれない!!早く忘れて何も考えずに寝よう!!)

翌朝…………

恐る恐るオレはテレビをつけた……

「昨日の夜、古着屋の店員のTさんが何者かに刃物で刺され殺害されるという事件がありました。

なお、目撃者の証言によるとまたしても仮面をつけた男が近くをうろついていたとの情報がありました。

警察は以前に起きた二つの事件と今回の事件が同一犯によるものだということで捜査をすすめ、

犯人の行方を追っています。」

(まただ…………………

オレが思ったことを寝てる間に仮面のもう一人のオレが実行している…………………

このままだと仮面のオレはオレが寝てる間にたくさんの犯罪を犯し続けてしまう………)

オレは出来るだけ、何も考えないことにした。

何も考えなければ、仮面のオレは犯罪を犯すことはないだろう。

しかし、そんなことは続くはずはなく、オレはまた、憎しみはじめてしまった…

………………

そう…………………………………………………………………………………………

……………………………仮面のオレを…………………………………………………

…………………………

次の日の朝、

オレの死体の隣には気味の悪い仮面が落ちていたという…………………………




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