悪の虜 |
創作の怖い話 File.33 |
投稿者 ストレンジカメレオン 様 |
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「オレは何てことをしてしまったんだ!!」 あるダーツバーの会員証を見ながら、オレは思った。 そのダーツバーでは人間が的にされ、的にされた人間は苦しみながら死んでいくというイベントがあった…… オレはそれに参加し、一人の人間を自分の手で殺してしまった…… イベントを終えた瞬間はゲームに勝った喜びと妙な快感で我を忘れていたが、 ふと我に返ると、とてつもない罪悪感や気持ち悪さに襲われた。 しかし参加したにも訳があった。 オレは昨日、初めてそのダーツバーへ行った。そこでIさんという人に出会った。 その人も初めてのそのダーツバーへ来たということだった。 オレたち二人は意気投合し、普通にダーツを楽しんだ。 だが例のイベントの時間がやってきた………好奇心旺盛なIさんは、 なにも知らずにイベントへ参加した………オレは周りの空気が尋常ではないことに気付き、 イベントには参加しなかった。 この時オレはIさんを止めれば良かったんだ……… そしてイベントが始まった…ゲーム内容を知ったIさんはダーツを人間に向けることが出来ず退場となった…… そしてオレは次に的にされるのはIさんになるということを知った。 Iさんを助ける手段としては、 オレがIさんの代わりにこのふざけたイベントに参加し勝たなければいけないということだった。 悩んだあげく、参加することに心を決めたんだ…… だがオレはゲームに勝つことは出来たが、ゲームの快感で我を忘れていたオレはIさんの事など完全に忘れ、 店にIさんを残したまま、オレは家に帰ってきてしまった…… 「Iさんは無事、解放されたんだろうか、」 Iさんの事が気になり出したオレは今日もあのダーツバーへ行くことに決めた。 営業時間は夜からであった… 時間になり、ダーツバーへ行く準備をし始める…… 心臓が細かく鼓動をうっている… ……そしてダーツバーへたどり着いた…… 相変わらず寂れた外観である……… 昨日はこれが地獄への入り口だと知らずに入ってしまったが、 今日はIさんが無事、解放されたかどうか確認出来たらすぐに帰ろう……… このゲームに取り憑かれたら、オレは人生を踏み外してしまう… オレはそう心に決め、店へと入っていった……… 「すいません!!昨日この店に来た者ですが聞きたいことがあって来ました!!」 薄暗い照明の奥から人の気配が近づいて来た… 店主である…… 相変わらず気味の悪いオーラを放っている………… 「ハハッ!昨日のチャンピオンじゃないか!!よく来たな!!どうした!?今日も参加か!?」 昨日とは打って変わって気さくに店主はオレに話しかけてきた。 「昨日Iさんは無事、解放されたんですか!?」 「いや………………………解放なんかしちゃいないさ……あんた、完全に忘れてたでしょ? お友達のこと、こっちも商売やってるんで、こっちの都合が良いようにさせてもらったわけだ!へへへへッ」 「じゃあ、今すぐ解放してくれ!!」 「その要求には答えられないな!ルール上、期限はその日まで決まってるんだよ! もしまだ友達の事を助けたいなら今日もイベントに参加するんだな!! 今日、最初の的になるのは、あんたの友達じゃなくて昨日のゲームの敗者だからな!ハハハ」 「くそ!!こんな店!!Iさん解放したらすぐ警察に通報して、お前ら全員、刑務所送りにしてやるからな!!」 「ハハハ!!出来るもんならやってみな!!オレは死神に魂を売ってるから、ただじゃ捕まらないよ! …………………………… それとあんたも共犯者ってこと忘れるなよ!!まあゲームを楽しんでいってくれよ!!」 ……………そうか、オレも実際、 ゲームに参加してるんだから共犯者だな……ハハ……なんでこんなことになっちまったんだ…… それと死神に魂売ってるってどういうことだ………? 確かによく考えるとこんな店、毎日のようにこんなイベントしていたらとっくに警察に押さえられるはず………… 偶然ばれずにここまでやって来れたのか…? そんなことをいろいろ考えているうちに刻々と時間は過ぎ、イベントの時間がやってきた… 「さあ!!ゲームの参加者は専用ダーツを貸し出すからここに並びな!!」 オレは列にならび、人殺しの凶器を受け取った… 「止めろ!!離せ!!オレは死にたくないんだ!!離しやがれ!!」 昨日の参加者の一人が上半身裸にされ、昨日と同じように台の上へと体格の良い男たちによって運ばれてきた… そしてまたも台に大の字に手足をくくりつけられる。 ゲームは始まった……… 昨日と同じ流れである、皆、掌に狙いを定めている… 的にされた人間は苦痛に満ちた声を出し、表情もこの世のものとは思えない恐ろしい顔をしている……… しかしおかしい…………………………………何かおかしい………………………… ………昨日とは違う。 昨日とは……………………違う…………… 昨日オレはこの状況に怯えて、苦しくもダーツを投げた……… なぜか今日は投げたくてたまらない!!! 悲痛な声!!表情!!これがオレの快感になる! またあの時の武者震いを起こしている。 断然昨日よりスマートにダーツを投げることが出来た。 そしてオレはまたもこのゲームを制した。 ゲームが終わるころ、犠牲者の体は穴だらけになり、傷口から血が垂れ落ち、 顔にも穴を開けられ、無残な形で死んでいた…… オレはもはや、このゲームに取り憑かれてしまったようだ………… こんな姿を見せられてもなんとも思わない… むしろまたこのゲームをしたいという気持ちが強まっていく。 「おい!!店主!!今日はもうイベントやらないのか!?」 「あれ!?ゲームしたいんですか?困りましたね〜、 イベントは1日1回で前の日の敗者が的にされるって決まってますからね〜、 …………………………………そうだ!!!今日は特別、一人だけ的にされるストックがいるんでした!……… …………………そう、あなたのお友達。」 「………Iさん……………か」 「そうです!!今日特別二回目のイベントを行うか行わないかは、あなた次第ですよ!あなたチャンピオンですから。」 「……………………………………………………………イベント…………………… ……………………………………………………………………………の……………… ………準備をしてくれ!!」 「二言はないな!!今日は特別、二回のメインイベントだ!!」 イベントのための部屋がまた盛り上がり始めた。 「助けて……助けて……何も知らなかったんだ……本当に何も……家に帰らしてくれよ!!」 Iさんが台の上に運ばれてきた… 「なんで!!なんでオレが的にされなきゃいけないんだ!!ちょっと冗談だろ!!離してくれよ!!離せっての!」 Iさんの抵抗も空しく、いつものようにIさんの体は大の字に台にくくりつけられていく…………… ふとオレはIさんと視線がぶつかる… 「Aさん!!Aさん!!僕です!!た、助けてください!!僕はまだ死にたくない!お願いです!助けてください!」 この時、オレはすでに殺人鬼と化していた…… こういった言葉に情けの気持ちが生まれるどころか、心臓が高鳴り、軽い興奮状態になった… そしてオレはただIさんを見つめ笑ってみせるだけであった。 それを見たIさんは、まさに悪魔を見つけたような目でオレを見ていた………… 実際悪魔であったのだろう。 Iさんも人間ダーツの犠牲者となりこの世には帰らぬ人となった………… すべてのイベントが終わり店を出て行こうとしたオレに店主が近づき話しかけてきた。 「あんたもこっち側の顔になっちまったな!!もしあんた死神に魂を売るようなことがあったら、 あんたも本物の悪魔になるからな!その時点で人間じゃなくなる。 姿は人間のままだけどな!オレみたいに!ハハハハハハ」 「ハハハ」 オレは笑い返した。 (冗談言うなよ!それに死神に魂なんか売らなくても、すでに悪魔ですよ…………。) 次の日から、オレは仕事を辞め、この店に通い詰めた。 一ヶ月後………………… 「金がない!金が!!!金がなくちゃ店に行けない!!」 オレは今まで、貯めていたお金をすべて使ってしまった… 「明日から、金がなきゃ店に行けない…………金…金…金…金…金ーーーーーー!!!!!」 オレはこの日、奇妙な夢を見る。 オレはなにやら契約書のようなものを学校の教室みたいな場所で書いている… 魂の契約書………… 教壇に立っていた黒装束の男がしゃべり始めた。 「ここにいる方は、何かを強く欲していますね。そしてとてつもない欲望に満ちてるはずです。 あなた方は選びぬかれた欲望の持ち主です。もしその欲望を満たしたいのなら契約してほしい!魂の契約を!! あなた方の魂ゆずっていただいた分、あなた方はなに不自由なく自分の欲望を満たすことが出来ます! 望むのであれば契約書に机に置いてあるカッターで右手の親指を切り、血の印鑑を…」 朝目覚めると、右手の親指に痛みを感じる……… 右手の親指から、血が垂れていた、とてもきれいな切り口から…… この日、金欲しさの衝動から、オレはひったくりを繰り返した。 一回も失敗することなく…… 「ははは!これが血の契約の力か!!」 調子に乗ったオレは、気付けばサバイバルナイフを片手に、小規模宝石店で強盗を繰り返した。 それでも警察に捕まることなどなく、全て順調に成功した。 オレは犯罪を繰り返した。そのうち仲間もでき、犯罪の規模も大きくなっていった…… 強盗、強盗殺人、薬物にも手を出した。 オレは死神に力をもらい、本物の悪魔になっていた… 今は鏡に映った顔が、人間かどうかも分からなく見える… もはや衝動的な欲望が体を動かしているだけであった。 あの日まで…………………………………………………………………………… その日、いつものように強盗をして、外の車で仲間と合流したオレは、いつものように荒い無茶な運転をしていた。 何もかも、失敗することなくここまで来たオレは自信に満ちていた。 オレはなにをやっても上手くいく!! 選ばれた人間なんだ!!と…………… そんなふうに余裕で運転していたオレは、ある違和感に気付いた……… 助手席にしか仲間は座っていないはず…… しかし後部座席に明らかに気配を感じる…… オレは後ろを振り向いた、 そこには、夢で見た黒装束の男が座っていた……………… 後ろを振り向いたまま、呆然とオレは男を見ていた……………… この男から目を離してはいけない、そんな衝動に駆られた。 次の瞬間 「前!!!トラック!!!!!ブレーキをかけろ!!!!」 助手席の仲間が叫ぶ… ★→この怖い話を評価する |
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